玄清は一方的に電話を切った。怒りのせいなのか、呆れて声も出なかったのかは分からない。里沙はふと何かを思い出し、ベッドサイドのテーブルに目を向けた。実はあそこから、一つだけこっそりと「盗んで」きたものがあるのだ。一枚の写真だった。二人がまだ大学生だった頃に撮ったもので、空はどこまでも青く、芝生は青々と茂り、二人は底抜けに明るく笑っていた。いつか自分が死んだら、この写真の自分の顔だけを切り抜いて、墓石に貼ってもらおう。それが、アタシの人生で一番幸せだった時間だから。翌朝、悦子から再び電話があり、「今日は未来の花嫁のショッピングに付き合いなさい」と命令された。里沙が指定された場所でしばらく待っていると、一台の高級車が目の前に停まった。てっきり悦子が現れるのかと思いきや、車から降りてきたのは玄清の母親の百合子だった。彼女は里沙の姿を見るなり、眉をひそめた。明らかに彼女も、里沙がここへ来ることを知らされていなかったようだ。「悦子さんに言われて来たの?」「今は、悦子お嬢様のプライベートアシスタントをやらせてもらってます」「あなた、まさか何か企んでいるんじゃ……」「アタシがアシスタントにならなければ、玄清との結婚を破棄すると悦子お嬢様に脅されたんです。アタシは何の企みもありませんが、悦子お嬢様の方には確実に何か腹に一物あるでしょうね」里沙は他人の責任を被る義理などないため、もし百合子が介入してくれて、少しでも早く悦子から解放されるなら大歓迎だった。その言葉を聞いて、百合子は深いため息をついた。「……悦子さんは本当に……」彼女はさらに不満を口にしようとしたが、里沙の顔をチラリと見て、言葉を飲み込んだ。里沙はそのまま外で待ち、百合子は近くのカフェへ入っていった。それからさらに三十分ほど待たされて、ようやく悦子が眠たそうな顔で現れた。彼女は里沙を一瞥しただけで、そのままカフェの中へ入っていった。里沙が彼女の後をついていくと、百合子がカフェの中から笑顔で出迎えた。「悦子さん。ずいぶんお疲れのようね、昨日はよく眠れなかったの?」彼女の笑顔はとても温和で、三十分も待たされた不機嫌さなど微塵も感じさせなかった。「お義母様、ごめんなさい。二度寝してしまって、遅くなりました」悦子はそう言ってあくびをした。「
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