All Chapters of あざとい女に夫も息子も夢中!兄たちが出動!: Chapter 761 - Chapter 763

763 Chapters

第761話

健吾が突然、杏奈の手を掴んだ。「杏奈」この声は……杏奈は彼を見下ろし、その眼差しにいつもと違う何かを感じ取った。健吾は乾いて色を失った唇の端を、かすかに吊り上げた。声はまだ少ししゃがれていたけど、その中に確かな喜びが感じられる。「全部、思い出したんだ」杏奈は、その場で固まってしまった。そして、大きな驚きはすぐに喜びの涙に変わり、瞳いっぱいにあふれ出す。彼女はそっと腰をかがめ、健吾の胸に顔をうずめた。何も言わず、ただ静かに涙を流す。その姿に、健吾の心は締め付けられるようだった。彼は手を伸ばし、優しく杏奈の髪を撫でた。「泣かないで、俺は……」彼の呼吸は少し荒く、まだ体調は万全ではないようだ。何か言いたそうだったけど、体のせいでそれも苦しそうだった。それに気づいた杏奈は、慌てて起き上がると、再び健吾に酸素マスクをつけた。「もういいから、話さないで。全部わかったから。元気になってから、ゆっくり話そう」彼女は目を真っ赤にしていたけど、その声はとても優しかった。彼女の心の中では、健吾が元気でいること以上に大切なものはなかった。健吾が目を覚ましてくれたことが、何よりも嬉しかったのだ。酸素マスクを着けた健吾は、目に見えて落ち着きを取り戻していった。彼は杏奈の手を掴むと、指をしっかりと絡め合わせた。もう二度と、彼女を一人にはしない。……睦月の家の問題は、片付くのにしばらく時間がかかった。彼女は時間を作って、宏介と一緒に杏奈と健吾の病室を訪れた。杏奈は、家の問題はもう大丈夫なのかと彼女に尋ねた。睦月は頷くと、可愛らしくラッピングされたお菓子のプチギフトを杏奈に差し出した。メッセージカードには「Just Married」の文字が添えられている。杏奈は驚いて、睦月を見た。睦月は宏介の手を握って言った。「私と宏介、結婚したの。昨日、婚姻届を出したんだよ」「そんなに早く?」睦月は頷いた。実は、彼女の母親は多くのものを犠牲にして、有力な親戚たちが決めた縁談を避けようとしていた。だけど、それでも逃れることはできなかったらしい。そこで、宏介が先に睦月にプロポーズしたのだ。二人の間にはもともと気持ちがあったし、宏介は睦月の家の事情を恐れるような人ではなかったか
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第762話

健吾と杏奈は、ようやく帰国した。家に着くとすぐに、香織と茂が出迎えてくれた。健吾は笑って二人を見た。「お母さん、お父さん、会いたかったか?」聞き慣れた呼び方、聞き慣れた口調。それを聞いた香織は、たちまち涙をこぼした。茂の目にも、じんわりと涙がにじんでいた。健吾は香織のそばへ行き、そっと肩を叩いた。「ほら、俺はピンピンして帰ってきたよ。この1ヶ月、杏奈が世話してくれたおかげなんだ。で、お母さんから大事な『義理の娘』に、何かお礼のプレゼントとか用意してるんだよな?」香織は涙を拭うと、健吾をちらっと睨んだ。「言われなくたって分かってるわよ。大事な『娘』なんだから、準備しないわけないでしょ?」「娘ってなんだよ。俺たちの関係がなんだかややこしく聞こえるんだよ」「このバカ息子!」健吾は杏奈を抱きしめる。そのやりとりに杏奈は思わず笑ってしまった。香織の腕に抱かれたのぞみも、きゃっきゃっと笑い声をあげた。小さな手をばたつかせている。健吾は香織の手から娘を受け取った。彼が本当の意味で自分の娘を抱くのは、これが初めてだった。だから、少し複雑な気持ちだった。なぜなら、彼はもともと子供が欲しいとは思っていなかったからだ。まさか記憶を失っている間に、子供がこんなに大きくなっているなんて思ってもみなかった。杏奈が一人で子供を産んだ時のことを思うと、胸が締め付けられる。彼女はどれほど怖くて心細かっただろうか。そう考えると、彼の視線は娘の顔から離れ、杏奈へと向けられた。健吾の視線に気づいた杏奈は、少し不思議そうにした。「どうしたの?」健吾は突然子供を香織に返し、杏奈の手を引いて階段を上がっていった。「どこ行くの?」杏奈は健吾に引かれるまま、二階へ上がっていった。息子の突然の行動に、香織もぽかんとしていた。でも、茂はとても落ち着いていた。彼はおもちゃで孫娘をあやしている。「心配いらないよ。健吾はただ、慰めてほしいだけなんだろう」健吾は杏奈を寝室へ連れて行った。ドアが閉まった途端、杏奈は不意に熱い腕の中に引き寄せられた。そして、熱く激しいキスが降ってきた。杏奈は、健吾の突然の激しいキスを、顔を仰向けにしながら受け止めるしかなかった。彼女は手で彼の胸を押していた。キ
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第763話

「じゃあ、これからの人生、どうやって私に埋め合わせしてくれるか、ちゃんと考えといてよね」健吾は頷いた。「約束するよ」……1ヶ月後。京市では、巨大財閥同士の政略結婚がトップニュースになっていた。橋本グループの社長と鈴木家の令嬢の結婚式が、とりおこなわれようとしていた。京市で一番大きな会場は、とても豪華に飾り付けられていた。各界の名士たちが集まって、二人の結婚を祝福した。杏奈が控え室でメイクの合間に一息ついていると、友人たちがやってきて、杏奈にこっそり耳打ちした。「ねえ、杏奈。あなたのお兄さん、今日好きな人を連れてきてるわよ。でも、お兄さんと来たんじゃなくて、あなたからの招待状で来てくれたんだって」杏奈は不思議そうな顔をした。「私、個別に招待状なんて送ってないよ。それに、お兄さんが好きな人が誰かなんて、全然知らないんだけど」友人たちは顔を見合わせて、杏奈にことの経緯をすべて話した。話を聞いて杏奈は初めて、これが空と健吾が仕組んだことだと知った。M国へ行く少し前、健吾は空とある約束を交わしていたのだ。もし健吾が無事にM国から帰ってこなかったら、空が鈴木家と一緒に杏奈と子供の面倒を見る、というものだった。そして、もし健吾が無事に帰ってきたら、今度は健吾が空の願いを一つ叶える、という約束だった。杏奈と健吾の結婚が決まったとき、空はその願い事の権利を使った。彼が想いを寄せている人に、個別に招待状を送ってほしい、というものだった。そのとき健吾は、少し呆れたように空を見て言ったらしい。「お義兄さん、悪いけど、そのアプローチの方法、ちょっと古くないのか?」空は珍しく健吾に言い返さず、逆に素直にアドバイスを求めたそうだ。健吾は、とても得意そうな顔をした。「ひたすら、しつこく押すことだよ」それを聞いた空は、健吾に尋ねたことを心底後悔したそうだ。話を聞いて、杏奈は少しむっとした。「もう、健吾ったら!こんな大事なこと、私に黙ってたなんて!」友人がそばにいたメイクさんの手からベールを受け取って、杏奈につけてあげた。「彼も忙しくて忘れちゃったのよ。それにしても、あんたたちの結婚式、本当にすごいわよね。京市だけじゃなくて、ほとんど国中の人が知ってるんじゃない?こんなに豪華で盛大にして。健吾さ
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