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All Chapters of 黒猫のイレイラ: Chapter 31 - Chapter 40

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【第30話】貴方だけを想い咲く花(カイル・談)

「ふぅ……」 温かなお湯に入ると、ジワァと熱が染みて体が冷えていた事に初めて気が付いた。ずっと横になっていたせいか少し体が固い気もする。手でゆっくりマッサージをしながらそれらをほぐし、一息つく。 ——すると考えるのは、やはりイレイラの事だ。「……イレイラは大丈夫かな、悪い事したかな……」 神殿内を案内した時。 何かに刺激されて、イレイラが前世の記憶を取り戻しはしないだろうかという期待を少ししていた。記憶があろうがなかろうが、もう既に今の彼女をも愛している事に変わりはないのだが、もし過去世を思い出してくれるなら、嬉しいというのが本音だった。 初めて逢った時から、一緒に過ごした九年という歳月。それらを共に思い出し、語らう事が出来たら幸せだなと思ったのだ。 この神殿内には多くの思い出に溢れている。一緒に行った事の無い場所の方が少ない。特に結婚式を挙げた“祈りの部屋”では、此処なら何か思い出すんじゃないかと期待したのだが、『綺麗な場所ですね』と感嘆の息を洩らすだけで少しガッカリした。 それなのにまさか、昔一度だけ、一悶着があった玄関ホールの方でそれらしい反応を見せ、その場で倒れたうえに、昏睡状態になってしまうとは思いもしなかった。 幸せな思い出よりも、辛い思い出に反応された事に対して複雑な気分にもなった。語り合いたいのは幸せな記憶の方なのに……。 ズルズルと体が滑り、湯船の中に沈む。口元まで隠れた辺りで流石に力を入れて止まり、そのまま薬草の溶けたお湯の表面を見つめた。周囲をうっすらと、鏡のように周囲を写す様を見ているとどうしたって色々考えてしまう。 ……早く、イレイラに逢いたい。 無事をこの目で確かめたい。 触れたい。 撫で回したい。 んで、あわよくばキスとか……もっとその先の事も、早くしたい。 もう大人だって知った晩に見た夢みたいな事を、すぐにでもしたい。もう我慢出来ない。そうだ、僕はもう十分我慢した! ——そう思った瞬間、体に違和感を感じた。 その事に慌て、ガバッとお湯から顔を上げて下を見る。案の定、下腹部の剛直が激しく存在を誇示していた。「いや、あの……起きてすぐコレは……」 今までの長過ぎる歳月を処女神のように清くすごしてきたのに、イレイラに逢ってからのコレの自己主張には、自身の事なのに呆れてしまう。彼女を“伴侶”として娶っ
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【第31話】貴方だけを想い咲く花(桜塚イレイラ・談)

 セナさんに話を聞いてもらったおかげで随分と気持ちの落ち着いた私は、周囲を見る余裕が出てきたので、当初の予定通りに景色を楽しむ事にした。 青い空の下。広い庭園が美しい姿を広げている。それらは全て丁寧に手入れされていて、花々はとても瑞々しい。定番の薔薇だけでなく、百合や鈴蘭など、見知った姿の花がかなり多い事に少し嬉しい。どれも、私の好きな花ばかりだ。 温室や植木で作られた迷路っぽい雰囲気の場所も少し離れた場所に見え、興味を引く。今度案内してもらおうかな?——と、私が考えていた時だ。「……——イレイラァ!」 遠くから声が聞こえ、私は即座に立ち上がり、声のする方に顔を向けた。予想通りの姿にパッァと気持ちが明るくなる。(——カイルだ!)「カイル!もう大丈夫なの?」 やっと目覚めたカイルの姿に安堵し、嬉しい気持ちで胸の中が一杯になる。 いつものラフな格好ではない、司祭のような服に身を包んだカイルが、私の傍まで駆け寄って来た。嬉しさを前面に惜しみなく溢れさせながら、大きな体でギューッと私を抱き締める。そんな彼の温かな体温がとても気持ちい。「イレイラッ!あぁ、イレイラ、良かった!元気になって、本当にっ」「カイルも元気になったんですね。本当に良かったです」 広い背に腕を回し、彼の抱擁に応える。その反応にカイルは喜んでくれたのか、抱き締めてくる力が強くなり、正直少し苦しい。「——カイル様がいらっしゃいましたので、私はこれで失礼させて頂いてもよろしいですか?」 セナさんが立ち上がり、カイルに許可を求めた。「あぁ、頼むよ。……二人で居たい」「了解致しました。では、私も久方ぶりの妻に逢って来る事にしましょう」 『妻』というワードに私は驚いた。神官である事から、私は勝手にセナさん達は皆独身者だと思っていたからだ。「セナさん、ご結婚されていたんですか?」「はい。六年前に先立たれたので書類の上では単身者ですが、彼女の事は常に“私の妻”だと思っております」微笑み、そう教えてくれる。(そうか、セナさんも、繰り返し愛している人がいるのか) 先程の言葉は、転生の先輩だからこそのアドバイスだったのだと改めてわかった。「イレイラ様は、妻のエレーナにはもう会いましたよね?」 名前を聞き、庭に行く事を勧めてくれた神官の少女の姿が頭に浮かぶ。「はい、あの小さな神官
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【最終話】貴方だけを想い咲く花(桜塚イレイラ・談)

 当然の様に、私はカイルに横抱きにされて庭園内を移動していった。 神殿内から最も見易いメインとなる場所からは移動し、普段は目立たぬ裏手の方へ向かっていく。花は少なくなり、代わりに背の低い植木が多く植えられていた。それらは綺麗に刈り込まれていて、丸い形をしたものやハートの形まであって、これでその木に薔薇があれば、絵本で見た不思議の国のアリスの庭の様だなと少し思った。「何か興味深いものでもあった?」「あ、はい。随分、見知った植物が多いな、と」「あぁそれはね、多分イレイラが知ってる植物で間違いないよ」「そう、なんですか?」 何故だろう?不思議に思い、私はカイルに答えを求めて視線をやった。「神々はこの世界を創る前、色々な異世界を旅して回っていたそうなんだ。そしてそれらで見付けた『好きなもの』を詰め込んで作ったのが『この世界』らしい。だからね、イレイラが好きだったものや懐かしいものも……きっと沢山此処にもあるよ」 そう教えてくれたカイルの顔に陰りが見えて、まるで『——だから、何処へも行かないで』と言われた様な気がした。 周囲の木々も少なくなり、芝生ばかりの空間が見えてくる。数本の大きな木が芝生の所々に植えてあり、直射日光を避けながらゆっくり昼寝が出来そうなスペースを作っていた。「此処だよ」 カイルが足を止め、私をその場に降ろす。そしてすぐに、陽当たり的に一番昼寝に適しているであろう場所に私の目が釘付けになった。「——此処は……お墓、ですか?」 木洩れ陽を受けて、白い小さなお墓がそこにはあった。周囲には赤い花が咲き誇り、周辺の緑の中で一際存在感を放っている。そして此処に咲いて花は、全て——彼岸花だった。「もしかして私の、お墓ですか?」 言っていて不思議な気分になる。でも、不快感や違和感は無かった。「うん、一ヶ月くらい前かな……此処を作ったのは」(い、一ヶ月?) この世界と私の世界では、随分時間に誤差があるのか……。今もし戻ったら、いったい何年経過してしまっているんだろう?今更戻る気など無いが、少しだけ、心配にはなってしまった。「神殿内で、高齢の為療養していた“|黒猫のイレイラ《君》”が居なくなったと大騒ぎになったんだ。もうすっかり衰弱していたから、話を聞いた時はホント驚いたよ。こんな時に、仕事なんか行かなければ良かったと心底後悔もした」 
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【エピローグ】第1話 夫婦の営みとその暴走(カイル・談)

 あれから僕達は神殿に戻り、明日からの一週間で休暇をもらえるという吉報をセナから聞いた。神殿内にしかまだ僕の回復の件は通達されていなかったのを良い事に、セナが予定を調整してくれたのだ。 各神殿の最高司祭という立場にあり、尚且つ、神の子として祀られる存在でもある神子は、定期的な神事以外の仕事は本来多くはない。人間の司祭や神官達が宗教的な面のほとんどをやってくれるから、『まだ休養中だ』と言えば、割と簡単に時間は作れる場合もある。 一週間後には『快気祝いだ!』と無駄に騒がれる事を思うと今から面倒で仕方がないが、その始まりが少し先になった事には素直に感謝した。今はものすごく、イレイラを抱き締めたくてしょうがなかったから。 子供だと思っていたら大人だったし、思いの外すぐに心が通じ合ったのだ。ならば体も通じあわせても良いはずだ。(だって、僕達は夫婦なのだから!) 首元にリボンがある白いブラウスに黒いスカート姿と動きやすい服を着ていたイレイラを、僕は抱き上げたまま二人の部屋に急いだ。 彼女の墓の前で感じた切ない気持ちなど、申し訳ないが微塵も残っていない。これからへの希望と夢に心は満ち溢れ、色々と滾っているのが自分でもわかる。 チラッと彼女の様子を伺ってみても、抵抗する素振りはない。僕の心境を察していないから警戒していないといった感じでもなく、心なしかソワソワしているみたいだった。(——きっとこれは、抱いちゃっても大丈夫って事だ!) 部屋の前に到着し、すぐさま中に入る。イレイラの部屋側にある風呂場は準備が済んでいると事前にエレーナから聞いていた僕は、急いでそちらに向かった。ドアを魔法で開けて、真っ直ぐ浴槽を目指す。「——え?待って!ちょっ」 声を上げる彼女の声を無視し、僕は彼女と共に広い浴槽の中へ飛び込んだ。服がお湯に浸かり、体に張り付く。そんな事は構わずに速攻で僕はイレイラの体に背後から抱きついた。「ひゃぁぁぁっ!」 勢い余ってしまい、大きな水飛沫が立つ。そのせいで互いの頭まで濡れてしまった。「んなっ、何でこんな!」「急いでたから!」 早く洗って、早く一つになりたい。気持ちが先走ってしまって時間が惜しい。「だからって、服のままお風呂に飛び込むとか……」 イレイラが呆れた声をこぼす。でも、イヤそうではないのをいい事に、僕はお湯で張り付く服の上か
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【エピローグ】第2話 夫婦の営みとその暴走(カイル・談)

 風呂場でお湯をたっぷり吸って重くなった服を脱ぎ捨て、互いの体にバスタオルを巻いて寝室まで彼女を運んだ。脱いだり拭いたりの作業を『自分で出来る』と、悲鳴をあげて彼女が拒否しようとするのを無視してお世話させてもらった。(これで、イレイラが夫婦の営みに対し持ちそうな不安要素は無いはずだ!) 横抱きしているイレイラの体を、そっと夫婦のベッドにおろす。長い黒髪が白いシーツの上で散る様子は二度目でもうっとりしてしまう。本当にとても綺麗だ。この姿を永遠に見つめていたのに、一握りで散らしてしまいたい衝動にも駆られ、相反する想いに心臓が鼓動を早める。 イレイラが窓の外を見て不安げな顔をしたので、天蓋を閉めてあげたら、少し安堵した顔を見せてくれた。昼夜問わず、場所も厭わずに抱きたい僕とは違い、真昼間から営みに入る事にイレイラは抵抗があるのかもしれない。 僕もベッドに上がり、最後の一箇所も閉めて完全に個室状態にすると、厚手の布地のおかげで薄暗い空間になった。だけど見え難いままではつまらないので、淡い小さな光を数個手から出し、空中に浮かべて彼女の様子が見える様にする。「綺麗ですね」と言ってくれたので良かった。これでその光を使って僕が何を見ようが、文句は言わせない。「君の方がとっても綺麗だよ。嬉しいな、やっと……君に触れられる」その事が嬉しくて嬉しくて、堪らない。僕はイレイラの頰に触れ、その柔らかな白い肌をそっと撫でた。「……え?」「ん?」「い、いえ!そう、ですね!うんっ」 少し驚いた顔をイレイラがし、顔を逸らした。一体どうしたんだろうか?「どうかしたの?何か気になる事でもあった?」 僕の問いに対し、くっと一瞬イレイラが喉を詰まらせた。まるで言い難い何かを腹に抱えているみたいだ。「……これからの事を思うと、その……恥ずかしくて」 ちょっと何かを誤魔化された気がしたが、『恥ずかしい』には納得出来る。「恥ずかしい?——そうか……あ、じゃあいい事思い付いた」「どうしたんですか?」 ベッドの上で横になったままのイレイラが、不安げな瞳を僕に向ける。それに対し、僕はニッと笑ってから魔法を発動させた。——次の瞬間、イレイラの体を包んでいたバスタオルをマーメードラインの白いウエディングドレスに変え、頭には長いベールをかぶせてみる。「これだったら恥ずかしくない?バスタ
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【エピローグ】第3話 夫婦の営みとその暴走(桜塚イレイラ・談)

 貞操の危機が再び訪れた! しかも、今回こそ絶対に回避出来ない。そもそも抵抗する気になれない自分がいる。彼の言葉の内容から察するに、前回の出来事をカイルは覚えていないみたいなのでその事にだけ少し安堵した。が、追求を誤魔化そうと言葉を濁したら、白いウエディングドレスを着せられるという意味不明な流れに至ってしまった。(何故⁈) ——と、大声で叫びたい。 最初の頃。彼の角に対してコスプレ男子疑惑をかけていたが、もしかしてカイルはコスプレさせたい系男子なのか?そして、それがちょっと楽しいかも?とか思ってる私! 超えてはいけない一線が目の前にある気がする。段々と、自分達に対して先行きが不安になってきた。「えっと、もしかして……このまま、す……するんですか?」 正直答えはわかっている。わかってはいるが、恥ずかしくて、照れ臭くて、でもちょっと嬉しいせいで顔が赤いまま私は訊いた。 そんな私の言葉を聞いた途端、カイルの瞳に異変が起きた。 瞳から白い部分がほぼ無くなり、黒目部分の面積が大きく広がったのだ。周囲を漂う蛍みたいな光がその瞳の側を通ると瞳孔が横に細くなり、『羊のような瞳だ』と思った。前には無かった異変だ。 その直後。彼は勢いよく私に覆いかぶさり、頭にかかるベールをバッと乱暴に捲りあげた。頰を両の手で押さえつける様に包み、カイルが軽く舌を出したまま私に顔を近づけて唇を激しく貪る。丁寧なものではなく、もう錯乱しているに近い動きで、私は驚きが隠せなかった。「っんー⁈」 声をあげ、彼の肩を激しく叩く。ビクともしなかったが、少しだけ動きが緩み、口付けが優しいものになった。 時々離れては熱い吐息を二人で零す。重なる度に舌を絡め、歯茎をなぞり、唇を啄むと、飲み込みきれない唾液が口の端から滴り落ちて私の首を伝った。「——はぁ…… 」 甘い色をもった声が互いからもれ、カイルの唇が離れると、その唇が私の耳を甘噛みしだした。舌まで使って愛撫され、手は首や鎖骨を撫でて私の体から情欲を引き摺り出す。「あぁぁっ!」 そこかしこに感じる快楽により嬌声があがった。羞恥に思考が染まり、声を堪えようと自らの指を噛む。「ダメだよ、噛むなら僕を噛んで」 そう言い、カイルの指が口の中へと入ってきて、その指に唾液を絡めて口内までも撫でられる。「ぅ……っ」 噛む訳になどいかない。
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【エピローグ】第4話 夫婦の営みとその暴走(桜塚イレイラ・談)

「まだ、いけるかな……」 二本だった指を、カイルが更に増やそうとして少しだけ指先が入った時、痛みのせいでシーツを掴む手に力が入った。「ひぅっ!ぃたぁぁっ!」 初めてが故の痛みが、残念な事に快楽よりも勝ってしまった。「……これ、物理的に無理だね。続けたらある程度はほぐせるけど、奥行きも全然足りないし」 淡々と分析するように言われ、頭の中が少し冷静になる。「……む、無理?」(あれ?もしかしてもうこれ以上先には進めないって事?……ココで、終わり?) そう思うと、下腹部の奥が得られぬ快楽を欲すように、ギュッとなった。ホッとしたような、残念な様な複雑な心境になる。「んー……。今からココを僕仕様にするけど、恨まないでね?大丈夫、人体の構造はわかっているから」 場違いな笑みを浮かべ、カイルは左手を私の下腹部に当て、魔法を発動し始めた。お腹の中が熱く、少しだけ違和感を感じるが、幸い痛くは無い。「——な、何?今の……」「ん?あぁ、ちょっと作り変えただけだから気にしないで。これで全部挿入るから、気持ち良くしてあげられるよ。もう他のは挿れられないけど、そんな事は絶対にさせないから困らないだろ?」 天使みたいな顔でスゴイ事言われた。  貞操帯機能付きみたいな事、なのか⁈「コレで、僕の指もちゃんと入るから、もっとほぐしてあげるね。ほら……」 言葉と同時に指を更に増やされた。先程の様な痛みはないが、散った筈の快楽が全身を一気に駆け抜ける。「ぅ……くっ……」「ね?」(『ね?』って、可愛く言われてもっ!) グチュグチュと水音をたてながらカイルの長い指が膣内を撫で上げる。広がる事で鈍い痛みを少しだけ感じなくもないが、それもすぐに快楽の中へ身を潜めた。「ふふふっ」と笑いながら、カイルが私の片脚を持ち上げて陰部に顔を近づけてきた。漂う光がフワリと彼の目元に近づき、容赦なく恥部を照らす。恥ずかしさに身をよじっても、当然逃げられる訳もなく。難無く彼は私の肉芽を舌で転がし始めた。膣内との刺激が強く、またもあっさりと陥落してしまいそうだ。(——私ばかり、なんでこんな) 目の前が白く霞み、最果てがもう目前といった時、くぷんっと小さな音をたてながらカイルが私の膣内から指を引き抜いた。蜜で濡れて蕩ける指で軽く陰裂と肉芽を撫で、そしてその指を私に見せ付けるかの如く舐め上げ
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【エピローグ】最終話 夫婦の営みとその暴走(桜塚イレイラ・談)

 ——子供みたいにキラキラと瞳を輝かせながら、カイルがウエディングドレスを高らかに掲げて魅入っている。どう見てもそれは、私が六日前に着ていた物だ。 初めての『夫婦の営み』が『着衣プレイ』に始まり、まさかそのまま『監禁プレイ』にまで発展するとは夢にも思わなかった。 『もう無理!』と訴える私に回復魔法なんか使いやがって、寝るか、ヤルか、食事を取るかの連続で、散々行為に及ぶとか。『魔法なんか消えて無くなれ』と……少し思ってしまった。 いくら願いが叶ったからとはいえ、休暇の全てを費やし、長年溜めに溜めた性欲の全てを一個人にぶつけるのは流石にやり過ぎだ。せめてもっと分散して頂きたい。——ので、近日中にお説教タイムを設けるつもりだが……彼はとても幸せそうにしているので、今は、許してあげよう。(私はなんていい妻なんだ、うん)「いつまでそんな物見てるんです?もう捨てましょ、酷い有様ですよね?」 胸元は割かれ、破瓜の血で染まるそれはもうホラー映画の衣装みたいだ。互いの汗や愛液だけじゃなく、大量の白濁液まで染み込んでいるんだろうなと思うと、焼却炉が欲しくなる。「捨てないよ?記念品だ」 うっとりとした顔でそう言うと、カイルがドレスに抱きついた。んー……これは説得をしても無意味なやつだ。なので、せめて洗濯くらいはさせようとだけ心に決めた。 その後。 久しぶりに会ったセナさんから今後の事を少し教えてもらった。これから先は連日に及ぶ謁見のスケジュールがびっしりと入り、快気祝いのお祭りが国内中で開催されるのだとか。『そこまでするのか』と驚いたが、平穏過ぎて、なにぶんイベント事に飢えているからと聞かされると『ならば仕方ないのか』とも思う。 それが落ち着いたら、今度は私達の結婚式を盛大に挙げる事になっているらしい。本人達の意見は完全無視で、もう決定事項なのだとか。前回の時点で、『妻は猫だから、騒がしいのが嫌いなんだ』とカイルが拒否したせいで盛大に祝えなかった事を国王達が悔いているらしく、今回は流石に回避出来なかったらしい。 一息つけるのは、いつになる事か……気が重いが、一つずつ二人でこなしていこうと思う。 夫婦寄り添って、仲良く。 今回はどのくらい一緒に居られるのかという不安も感じぬ程、仲睦まじく。【エピローグ・完結】
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【番外編①】第1話 来訪者・ライジャ

 一週間の休暇……という名の監禁生活が終わった翌日。 第一の来訪者として、神子のライジャが来たとの知らせをカイルは受けた。深紫の髪と瞳を持ち、蛇のような眼と舌をした神子・ライサの双子の兄だ。 正直カイルはライジャに会いたくはなかった。昔から得意な相手ではないし、仲が良かった時期もない。彼の妹・ライサとは過去に一悶着あったから、余計に。 それでも正式に来訪者として来た者を追い返すことも出来ず、カイルは深いため息をついた。「面倒くさい……。会いたくない。好きじゃないんだ、話が通じないし」 廊下を歩きながらカイルがひたすら文句を垂れる。それを、水色の質素なドレスに身を包んだイレイラが、隣に付き添い宥めた。「そう言わずに。快気祝いとして来てくれたんでしょう?」「絶対に違う。『快気祝いだ』と言えば、追い返せないからってだけだよ。何を言われる事か……」 カイルは不快感を隠す事なくぼやき、前髪を搔き上げる。ライジャの待つ玄関ホールはもう目前だが、彼の足取りは今尚重かった。「そもそも、あそこに君を連れて行きたくはないんだ。なのにイレイラにも会いたいだなんて。謁見の間ででも待っていてくれたらいいのに」 覗き見たカイルの端正な顔には、眉間にシワがよっている。本当に嫌そうな顔だ。それを見てイレイラが苦笑する。カイルの反応は仕方がない事なのだが、心配し過ぎだとイレイラは思った。「私はもう平気ですよ。それに、すぐ帰るから玄関ホールで待つと言っていたそうだし、渡りに船なんじゃ?」「まぁ……そうなんだけど。……キツイと思ったら言ってね?すぐに誰かに迎えに来させるから」 今から少し前。 イレイラは玄関ホールで倒れ、昏睡状態になった。その事で酷く動揺したカイルが、のちに目覚めたイレイラと交代するように寝込むという流れがあった為、カイルが過剰に心配してしまうのは仕方のないことかとイレイラも思う。でも、いつまでも引き摺られては玄関ホールに入れない生活を送る事になるので、それはそれでちょっと変だろう。なのでイレイラは、なんとかカイルの機嫌を持ち直させる事が出来ないかと考えた。「何かあっても、カイルが守ってくれるでしょう?」 少し体を前に倒し、イレイラがカイルの顔を下から覗き見る。笑顔を浮かべて問うた姿に、カイルは当然破顔した。プルプル震え、高揚していく様が有り有りとわかる。
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【番外編①】第2話 来訪者・ライジャ

「——は!よくまぁ二人してぬけぬけと、僕に顔を晒せたもんだな!」 カイル達の顔を見るなり、ライジャの第一声がこれだった。 派手好きな中世貴族の様に豪奢な衣装を身に纏い、緩くカールされた深紫色の長髪を優雅に揺らしながらライジャがカイルを指差し、大声で叫んだ。蛇の様な瞳はつり上がり、怒りに燃えている。「会いに来たのは、ライジャの方だろ」 当然のツッコミを、カイルは呆れながら返した。「そうだったな!」(あれ?案外素直な子なのかな?) 偉そうな態度でアッサリ認めたライジャに対し、イレイラは少し首を傾げて思った。「まぁいい。——そんな事よりも、一体これはどういうことなんだ⁈お前は何故そんな者と結婚した!前の体が死んだと思ったら、即また生まれ変わりを呼び戻してイチャイチャしやがって!お前はライサにあんな事をしたくせに!どうしてあの子を受け入れなかったんだ!」 肩を震わせ、憎々しげな顔をライジャは前面に晒す。「お前……ずっと『ライサの気持ちに応えたら殺す』って連呼していたのに、何を言ってるんだ?それに、そもそも僕は最初からライサを何とも思ってない。受け入れる訳が無いよね?」 息を吐き、カイルは面倒くさいと思いながらも返事をする。無視する方が、より面倒な事態になるだろうと予測しての返答だ。「当然だ!あんなに可愛くて美しくて可憐な妹が、お前に釣り合うものかっ。でも、そんなあの子を拒否するのは、もっと許せない!」(あ、間違いなくこの神子、ライサのお兄さんや) 矛盾し過ぎな言葉でイレイラは納得した。こんなんじゃカイルが会うのを渋っていたのも当然だと、額に手を当てながら思う。「あの子は、お前を愛していたんだぞ?毎日神殿まで訪れては顔を覗き見し、ありとあらゆる贈り物を捧げ、手紙を送り続け、日記だって欠かさず何時間も書いていた!あんなに毎日生き生きとしていたのに……今のライサといったら、もう……」(え、待って。それってストーカーじゃない?) くっと泣きそうな声を零し、ライジャが俯く。カイルは心底、『このくだらない話はいつまで続くのか』と言いたげな顔のまま黙っている。「それなのに、それなのになぁ!最近のライサといったら、刺繍を始めたり乗馬をしたり、貴族達の茶会にまで参加するようになったんだ……」「それは、大変だな。大丈夫なのか?」(いや、待って。カイルのそ
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