骨肉腫の確定診断から、六ヶ月。「すぐに入院しなければ、助かりません」という医師のその言葉が、頭から離れない。けれど、僕の手元にはもう一文もない。最後の望みを繋いで、母に電話をかけた。それが、百回目にして、母からの拒絶だった。だから、僕は骨肉腫の診断書を握りしめ、一人、火葬場へと足を運んだのだった。「失礼します……火葬の手続きを、事前に……予約したいのですが」職員の目が、わずかに揺れた。「ご家族の方はいらっしゃいますか?何か……思い詰めたことでも?」俯く僕に、彼はそれ以上は問い詰めなかった。代わりに、傍らの椅子に座るよう促すと、落ち着いた声で両親へと電話をかけた。三十分後、タイヤでコンクリートが軋む音が静寂を破った。顔を上げれば、怒気を漲らせた両親と、養子の弟が立っている。逃げようとした僕を、両親はすぐに捉えた。検視官である父は、入るなり、いきなり僕を平手打ちした。「海鳴と張り合うために、死んだふりまでするつもりか?」その瞬間、思い出した。今日、父は弟の一条海鳴(いちじょう うみなり)の成績が上がったことを褒め、遊園地に連れて行くために休みを取っていたのだ。僕はただ、死んだ後に遺体を誰にも引き取られたくなくて、火葬だけは済ませておきたかっただけなのに、またもや「嫉妬」と決めつけられた。弁解したかった。けれど、何を言っても信じてもらえないのは分かりきっている。僕は黙って言葉を飲み込んだ。僕が沈黙すると、病院の院長である母は僕の手から診断書を奪い取り、ためらいもなくビリビリと引き裂いた。「私の名義を勝手に使って診断書を偽造するなんて……いい加減にしなさい!」彼女は中身を一目見ることすらしなかった。最初から僕が嘘をついていると、決めつけていた。もしこれがただのわがままなら、どんなによかったかと、僕はそう欲していたが、本当に死にかけているのだ。弟はまた泣きながら両親にしがみついた。「お兄さんのせいじゃないよ……僕、もう遊園地なんて行かないから、何もいらないから……お父さんとお母さんを怒らせないで……」腹立たしさで、僕は弟を睨みつけた。殴り倒したいほどだった。だが、手を上げれば両親の怒りは倍になって返ってくる。今の身体では、とても耐えられない。それでも、死が迫る今となっては、もうこれ以上彼に媚び
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