子どもの頃からずっと牛乳を飲んで育ったせいで、私は同年代の誰よりも体つきが早く大人びていた。18歳のとき、シスコンの兄・佐波恭平(さば きょうへい)が「誰かに体を騙し取られたら困る」と言い、親友の神代明彦(かしろ あきひこ)に私の面倒を見るよう頼んだ。ところが、初めて会ったそのとき、明彦は私の胸元の豊かなふくらみから目を離すことなく、何度も何度も私を弄んだ。それ以来、昼間は明彦が私の上司で、夜は私が彼のパーソナルアシスタントとなった。丸四年間の秘密の関係で、私は彼の好みに仕上げられていった。四年後、明彦の元婚約者が帰国し、彼は私のそばから離れて慌ただしく空港へ迎えに行った。私は恥ずかしさを噛みしめながらも、必死に空港まで追いかけた。つい一時間前まで、明彦が噛み跡だらけの手で私の口を塞いでいたのに。今、私の目の前で、彼は別の女・末藤清子(すえふじ きよこ)の髪を優しく撫でながら言い放った。「佐波百香(さば ももか)、四年前、お前が酔った俺のベッドに勝手に入り込んだんだろ。お前は今のようにわがままを言うなんて、本当にくだらないんだ」清子を見る彼のまなざしはあまりに優しく、私を見る嘲るような視線も普段より一層真剣だ。私ももう馬鹿らしく思い、俯きながら兄の恭平にメッセージを送った。【崎尾家に、私が縁談を引き受けるって伝えて】そして顔を上げて、笑顔で彼に返事をした。「……そう。じゃあ、さよなら」……恭平からの電話はすぐにかかってきた。スマホ越しに、彼は私が長年想い続けてきた謎の男への未練をようやく断ち切れたことを喜んでいる。けれど私を長い間、恋愛関係で苦しめてきた相手が、彼の一番の親友である明彦だとは知らない。通話を終え、私は前もって用意していた退職届を手に取り、人事部へ向かった。だが、手続きの最後の段階で止められた。「佐波さん、一週間以内に退職されたい場合は、社長のサインが必要です」また明彦。最後に去るその瞬間でさえ、私は彼を避けることができない。スマホを握りしめ、人気のない廊下の端で、私は慣れ親しんだ番号を押した。コール音が長く続き、もう誰も出ないと思ったその瞬間、電話がつながった。聞こえてきたのは、聞き覚えのない女の声だ。「もしもし?明彦に用事なの?彼は今お風
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