飛行機事故の時、夫の田村純一(たむら じゅんいち)は彼の幼馴染の大野翠(おおの みどり)と指をからめあっていた。来世こそ夫婦になろう、と。そう誓い合って、二人は一緒に死のうとしていた。飛行機は雪山に墜落して、私と翠は同じ場所に投げ出された。でも彼女は、私を殴って気絶させると、私の体から肉をえぐり取った。私の肉を食べて、翠は雪山で生き延びた。そして私の死体を隠して、顔もぐちゃぐちゃにしたんだ。その後、純一と翠は恋人になった。そして翠は、私の息子・田村樹(たむら いつき)の継母になり、私の両親にも実の娘同然に扱われ、私の全てを奪っていった。一年後、私の遺体が発見された。それを解剖したのは、なんと夫の純一だった。でも彼は、それが私だとは最後まで気づかなかった。私の遺体が見つかった時、そのあまりのひどさに、救助隊員たちは何人もトラウマになってしまったそうだ。顔中が切り傷だらけで、元の顔なんて分からない。骨がのぞいているところもあった。夫の純一が現場に来たとき、周りの人たちはまた吐き始めた。「田村さん、遺体は洞窟で見つかりました。事故の犠牲者じゃないかもしれません。誰かに殺されたハイカーみたいです」純一の部下である山下健二(やました けんじ)の話では、遺体が見つかった場所は飛行ルートから外れているとのことだった。普通ならあんな場所まで飛ばされるはずはない。自分で歩いた可能性もあるが、遺体の痕跡はどれも、私が誰かに殺されたことを示していた。今日をもって、あの飛行機事故から丸一年が経った。純一は遺体の前で眉をひそめ、体をぶるぶると震わせていた。「田村さん、ここは私たちに任せてください。田村さんもあの事故に遭われたんですから……これはあんまりにも酷いですよ」「平気だ」純一は無理に自分を落ち着かせた。プロとして、情に流される姿を見せたくなかった。しかし、そばにいた健二はぽつりと言った。「まだ28人も見つかってないんですよね。奥さんも、行方不明のままですし……」「しっ」純一は、私のことを話すのを許さなかった。私は純一のそばに漂いながら、彼が遺体を調べていくのをじっと見ていた。私の服は、とっくに純一の幼馴染である翠にはぎ取られていたので、お腹にぽっかりとあいた二つの穴が、ひどく目立っていた。「二か所、明らかにお肉がえ
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