九歳の時、私は結城柊也(ゆうき とうや)を庇って爆発の衝撃波を受け、それ以来、補聴器が手放せない体になった。彼はひどく罪悪感を抱いた。自ら私との婚約を申し出ると、目を赤くして誓った。「夏帆、俺が一生お前の面倒を見る」けれど、十八歳になったあの日。学園一の美人に課された「試練」とやらをクリアするため、彼はクラスメイトたちの前で、私の補聴器を乱暴に引き抜くと、嫌悪を込めた声で言い放った。「足手まといさん。とっくにうんざりしてるんだよ、お前には」「マジで九歳の時、お前が助からなければよかった。そのまま死んじまえばよかったんだ」私は、耳が完治したことを示す診断書を握りしめたまま、何も言わなかった。家に帰ると、私は黙って大学の志望校を変更し、両親を連れて彼の実家へ婚約破棄を申し出た。柊也。あなたと私、もう二度と会う必要はない。……「篠原夏帆(しのはら かほ)、マジで九歳の時、お前が助からなければよかった。そのまま死んじまえばよかったんだ」柊也がその言葉を口にした瞬間、個室内の空気が一気に沸騰した。「ヤベェ、やっぱ柊也はすげえや!」「今度、夏帆の耳が治ったらさ、本人の耳元で直接言ってやれよ。そしたらこいつ泣くかな?あのオドオドしたぶりっ子みてえな顔、マジでウケる」「聞かれたって別にどうってことねえだろ。障害者なんか誰もいらねえし、柊也が慈悲で可愛がってやってるだけじゃん?」私はその場で凍りついた。バッグの中の完治診断書を固く握りしめ、どうすればいいか分からなかった。大学受験が終わった後、両親は私を遠方の病院へ連れて行ってくれた。そこで耳は完治し、もう補聴器は必要なくなったのだ。今日は、私の誕生日パーティー。今日こそ、柊也を驚かせようと思っていた。耳が治ったこと、もう彼の手足まといじゃなくなることを伝えたかった。それなのに。心を込めて準備したサプライズは、私に血塗られた真実を突きつけた。柊也の言葉は鋭い刃となって、私の心臓に突き刺さる。胸が締め付けられ、呼吸すらままならない。爪が手のひらに食い込み、じりじりと痛む。私は唇をきつく噛みしめ、柊也を見上げた。なぜ、と問いたかった。だが彼は私に気づいていないようだった。手の中の白い補聴器を弄びながら、ふざけ
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