広大な海に囲まれた小さな島に一つの村があった。 とても貧しい村だが、人々の笑顔は絶えない。 この村には国籍が異なる者達が多く集まっており、偽名を使う者が多いが互いに助け合い、人との絆を大切にしている人々だった。 それもそのはず。 この島にいる人々は都会での暮らしに疲れたり、人に裏切られて傷ついたりと、何かしらの理由で心が傷つき疲れ果てた先に行き着いた場所だからだ。 そんな人達だからこそ絆を一番大切にしていた。 そして村から少し離れた丘の上に一つの家があった。 家からは幼い男女の子供の楽しそうな声が響き渡る。 そしてその二人を叱る女性の声も同時に響き渡った。 家のドアが開き、勢いよく二人の子供が飛び出してくる。 「かつにぃ~待って~」 「美子《みこ》!あの上まで競争だ!!」 「あ!コラ!二人とも待ちなさい!!まだお片付けが終わっていないわよ!!」 兄妹は女の言葉を無視して、すでに丘の上へと走り出していた。 女は腰に手を当て、眉間に皺を寄せながら丘の上へと走っている二人の後ろ姿を見送る。 「まったくもぉ~!」 女は溜め息をつきながら、家の中を見渡す。 お昼ご飯を食べ終えたばかりで、机の上にはたくさんの汚れた食器が並んでいる。 そして子供達が座っていた椅子が無造作に倒れていた。 女は腰まである茶色い髪を無造作に後ろで一本に纏め、青い瞳にやる気を宿し、部屋の中の片付けをし始めた。 ちょうど片付けが終わった頃に呼び鈴が鳴った。 呼び鈴に気がつき母親が扉を開けると、恰幅の良い女性がいた。 その女性の腕にはたくさんの果物が入った籠がぶら下がっている。 「ルルおばさん!今日もありがとう!」 「い~ってことよ!あんたには助けられてばかりだからね!」 「そうだ!おばさん!ちょっと待っててね!」 女はルルに待つように伝えて家の中へと急いで入っていき、暫くすると走って戻ってきた。 女は少し息を切らせながら、手の中にある小さな袋をルルに手渡す。 「ルルおばさん!今日はいいのが手に入ったの!おじさんに飲ませてあげて!」 「いつもありがとうね…」 ルルは目がしらに涙を少し溜め、女に礼を言う。 ルルのパートナーは体が弱く、一日をベッドの上で過ごしていた。 しかし女のこの薬茶を飲み始める
Last Updated : 2025-11-18 Read more