恋〈レン〉は一人、あの神社に来ていた。 夜の神社。 怖がりの恋にとって、月明かりだけが頼りのこの場所は最悪とも言える。 しかし今の恋に限っては、その心配は無用だった。 何しろ自分はこの世界の影なんだ。誰からも認識されない存在なんだ。 どちらかと言えば、自分の方が怖がられる立場。 そう思うと、不思議と怖く感じなかった。 それより恋には今、考えることがあった。悩むべき事案があった。 どうして蓮司〈れんじ〉さんと花恋〈かれん〉さんは別れてしまったのか。 未来の私たちに、一体何があったのか。 作家になる夢を捨て、私と別れた蓮司さん。 穏やかだけど、どこか陰りのある笑顔。 最初に見た時、あの笑顔にときめいた。 しかし一緒にいる中で、段々と違和感を感じるようになっていた。 蓮司さんの笑顔。あれは何もかも諦めたような、世捨て人にでもなったような空虚な感じがする。 その理由に自分が関わっていることは間違いない。 この時間に来たのは、私たちの幸せな姿が見たかったからだ。 未来を見たい。その一点では、確かに目的を果たせた。 でもこのままじゃ帰れない。帰りたくない。 別れたことにきっかけはない。蓮司さんはそう言った。 でも、そんな筈はない。 いくらイベント慣れだと否定されても、それだけで納得出来る訳もない。 蓮司さんは今も、赤澤花恋〈あかざわ・かれん〉のことを好きだと言った。 この世界の私だってその筈だ。だって私なんだから。 こんな現実を見せられた今でも、私は蓮〈れん〉くんのことが好きだ。 どんなに否定されたとしても、この想いだけは本物なんだ。 だから確かめたい。 そう思った恋は、少し頭を冷やしたい、しばらく一人になりたいです、そう言って蓮司と帰らず、この神社に来たのだった。 * * *
Last Updated : 2025-11-30 Read more