All Chapters of 【完結】レンとレンの恋物語: Chapter 11 - Chapter 20

42 Chapters

011 決断

  恋〈レン〉は一人、あの神社に来ていた。 夜の神社。 怖がりの恋にとって、月明かりだけが頼りのこの場所は最悪とも言える。 しかし今の恋に限っては、その心配は無用だった。 何しろ自分はこの世界の影なんだ。誰からも認識されない存在なんだ。 どちらかと言えば、自分の方が怖がられる立場。 そう思うと、不思議と怖く感じなかった。 それより恋には今、考えることがあった。悩むべき事案があった。  どうして蓮司〈れんじ〉さんと花恋〈かれん〉さんは別れてしまったのか。 未来の私たちに、一体何があったのか。 作家になる夢を捨て、私と別れた蓮司さん。 穏やかだけど、どこか陰りのある笑顔。 最初に見た時、あの笑顔にときめいた。 しかし一緒にいる中で、段々と違和感を感じるようになっていた。 蓮司さんの笑顔。あれは何もかも諦めたような、世捨て人にでもなったような空虚な感じがする。 その理由に自分が関わっていることは間違いない。  この時間に来たのは、私たちの幸せな姿が見たかったからだ。 未来を見たい。その一点では、確かに目的を果たせた。 でもこのままじゃ帰れない。帰りたくない。 別れたことにきっかけはない。蓮司さんはそう言った。 でも、そんな筈はない。 いくらイベント慣れだと否定されても、それだけで納得出来る訳もない。 蓮司さんは今も、赤澤花恋〈あかざわ・かれん〉のことを好きだと言った。 この世界の私だってその筈だ。だって私なんだから。 こんな現実を見せられた今でも、私は蓮〈れん〉くんのことが好きだ。 どんなに否定されたとしても、この想いだけは本物なんだ。 だから確かめたい。 そう思った恋は、少し頭を冷やしたい、しばらく一人になりたいです、そう言って蓮司と帰らず、この神社に来たのだった。  * * *
last updateLast Updated : 2025-11-30
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012 蓮くん召喚

 「了解!」 ミウが元気よく答えた。「え? いいの?」 無理を承知で言った願い。どうやって説得しようかと思っていた恋〈レン〉は、あっさり承諾したミウに思わずそう言った。「うん、いいよ」「私、それは駄目だって言われると思ってた。でもこの世界の蓮司〈れんじ〉さんたちを見て、私だけじゃどうにも出来ない、蓮〈れん〉くんの助けが必要だって思って」「分かってるよ」「でもね、私が今からしようとしてることは、この世界に思いきり干渉することなんだよ? それも私一人じゃなく、蓮くんも巻き込んで。 自分で言っておいて何なんだけど、ほんとにいいの?」「僕の中で、ここまでは想定内だったから。勿論、必要以上に干渉するのは看過出来ない。僕たちは世界の理〈ことわり〉を守る為に存在してるんだからね」「だったら」「でも恋ちゃん、もう分かってるんじゃないのかな。どうして僕がこの時間を選んだのかを」「……」「君が今から成そうとしてること。それは干渉に当たらないと僕が認めてあげる。こういう言い方は駄目なんだけど、僕は君のこと、本当に気に入っちゃったから」「ミウ……」「本当のことを言うとね、特定の人間に肩入れするのは御法度なんだ。だからね、恋ちゃん。僕に出来るのはここまでだ。後は恋ちゃんの頑張りにかかってる。 これは未来への干渉じゃない。君がこれからの人生をどう歩むのか、誰と歩みたいのかを決める戦いなんだ。だから応援してる。君が頑張る姿、見守ってる」「ありがとう、ミウ」「じゃあ蓮くんを連れて来るから、ちょっと待っててね」 そう言うとミウは、恋の部屋にいた時と同じように目を瞑り、動きを止めた。 恋がいる本来の時間のミウとリンクしているのだった。 「……」 恋が拳を握り締め、固唾を飲んで見守る。 そしてしばらくすると
last updateLast Updated : 2025-12-01
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013 同じ過去≠同じ未来

 「……」「……」 話題を振れない二人が同じ空間にいると、こんな微妙な空気になるのか。そう蓮司〈れんじ〉は思った。 それが自分相手だと尚更だ。 テーブルを挟んでうつむく二人。 間が持たなくなると、互いに頭を掻く。 こんな癖まで同じなんだな。 いや、自分なんだから当然か。 違っているのは髪形と年齢、それだけだ。 ――何も変わってないんだな、僕は。 蓮司は少し哀し気な笑みを浮かべた。  * * * だが、いつまでもこうしている訳にはいかない。 目の前の彼もまた、恋〈レン〉ちゃんと同じく未来の自分たちを見に来たのだ。 少し残念な未来を。 でもせめて、未来に少しでもいい、希望を持ってもらいたい。 それが自分に出来る、年長者としての責務だ。 蓮司は小さく息を吐き、落ち着いた口調で話し出した。「君は……恋ちゃんと付き合い出したばかりの僕、そういうことでいいのかな」「あ、はい。それで合ってると思います」「恋ちゃんのことが、好きで好きでたまらない」「そ……そうです……」 耳まで赤くしてうつむく蓮に、蓮司は少し懐かしさを感じた。 今の自分は彼と比べて、世の理〈ことわり〉を多く知っている。 この10年で、彼の知らない経験をたくさんしてきた。人とも多く関わってきた。 彼に比べると、自分は10年分視野を広く持っていると言っていい。  * * * 人生というものを、自分は高層マンションに例えてきた。 生まれてから毎年、一階ずつ上に登っていく。 若い頃はよく、大人のことを臆病だと思っていた。 辛いことや理不尽な出来事に背を向けて、笑みを浮かべて自分を誤魔化し、流され
last updateLast Updated : 2025-12-02
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014 器

 「小説をやめたっていうのは、本当なんですか」 少し間を置いて、蓮が気になっているもう一つの未来について尋ねた。 声が少し震えていた。「やっぱり気になるよね」 蓮司〈れんじ〉の表情が少し曇る。 恋〈レン〉に話した時とは、明らかに雰囲気が違っていた。 それは彼が言うように、過去の自分にまで強がらなくてもいい、そんな思いがあったからなのかもしれない。「本当だよ。作家になる夢は諦めた」「……そうですか」 蓮がうつむき、小さく息を吐いた。「僕は……この未来を知ってしまった僕は、どうすればいいんでしょうか」「それも含めて君の人生だよ、蓮くん」「……」「君は今、普通ならありえないイベントに参加してる。ここでの経験は、間違いなく君の財産になる。そういう意味では蓮くん、自分の未来を知ってしまった君が、それを踏まえた上でどう行動するのか。その選択もまた、君の人生なんだよ」「そう……ですね」「理由は聞かないのかな」「少しだけ……本当に少しだけですが、分かる気がします」「聞かせてもらってもいいかな」「……僕には才能がないと思います」「だね」「この二年間、これだけに費やしてきたと言っていいと思います。自分の時間も、情熱も……おかげで少しはましな物を書けるようになりました。恋なんか、恥ずかしくなるくらい褒めてくれて」「そうだったね」「でもこれじゃ駄目だ、ずっとそう思ってました。僕が創作を始めたきっかけは、自分に感動を与えてくれるものに出会えたからなんです。こんな感動を、自分が創った物で人に感じてもらいたい、そう思ったからです。 でもいざ始めると、自分の創作者としての器が、情けないぐらい小さいことが分かりました。この器は多分
last updateLast Updated : 2025-12-03
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015 髪型

 「悪い冗談かと思ってたんだけど、本当だったんだね」 そう言って微笑んだ花恋〈かれん〉が、ティーカップをテーブルに置いた。「初めまして、でいいのかな。10年後の世界にようこそ、恋〈レン〉ちゃん」 蓮司〈れんじ〉と会った時とはまた違う、変な緊張感を感じながら、恋はうなずき紅茶を口にした。  * * * この世界の花恋も、一人暮らしをしていた。 ミウから住所を聞き訪れた場所。そこは恋の実家から徒歩5分ほどの場所にある、二階建てのハイツだった。 花恋と会って最初に驚いたこと。 それは、腰の辺りまである髪がばっさりと切られていたことだった。 肩に少しかかる程度になっているその姿に、恋は様々な思いを巡らせていた。「髪」「え?」「さっきから髪ばっか見てるよね、恋ちゃん」「あ、いえ……ごめんなさい」 頭の中を覗き込まれたような気がして、恋が思わずそう口にした。「まあ、仕方ないかな。恋ちゃんの頃の私って、自分の髪を気に入ってたし」「蓮〈れん〉くんも……ですよね」「うん。確かに蓮司も、褒めてくれてたね」「はい」「だから切ったの」「……」「私たちが別れてるって、もう知ってるんだよね」「はい……蓮司さんから聞きました」「色々あったんだ、私たちも。恋ちゃんの頃から10年、10年だからね」「そう……ですね」「あいつと正式に別れて、もう3年になるし」「正式にって、どういうことですか」「大学卒業の頃には、連絡を取り合うこともほとんどなくなってた。たまにご飯を食べに行って、近況報告をして。そんな状態が3年ぐらい続いてたんだ。そしてある時、私の方から言ったんだ。『私たちの関係、これって続ける意
last updateLast Updated : 2025-12-04
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016 恋と花恋

 「それで? こっちにはいつまでいるのかな」 緊張の解けた様子の恋〈レン〉に向かい、紅茶を入れ直した花恋〈かれん〉が聞いた。「特にいつまで、とかは決めてません。ミウが言うには、例え一年いたとしても、戻るのは出発した時間らしいので。お邪魔でなければ、しばらくいようと思ってます」「そっかぁ。私もね、10年前、高校2年の自分と会ってる訳じゃない? こんなこと二度とないだろうし、ゆっくりしていってほしいなって思ってたんだ」「仕事とかは大丈夫なんですか?」「うん。何でか知らないんだけど、急に有給を消化するように言われてね。しばらく休みなんだ」「あ、それって蓮司〈れんじ〉さんと同じです」「と言うことは、これもミウちゃんの仕業なんだね。でもまあ、最近ゆっくり出来てなかったし、丁度よかったよ」「それならよかったです。それでその……折角なので、色々と聞いておきたいことが」「いいよ、何でも聞いて。と言うか、恋ちゃんが何を聞きたいのか、大体分かるけどね」「ですよね」「先に私からもいいかな」「はい、何でしょう」「恋ちゃんは、いつの時の恋ちゃんなのかな」「あははっ、蓮司さんと同じこと、やっぱり聞くんですね」「まあ、ね。その方が色々やりやすそうだし」「蓮司さんには詳しく言ってないんですけど、私にだったらいいですよね」「そうそう。自分相手になんだから、気にせず言って言って」「実は私……今日蓮〈れん〉くんと、初めてキスしたんです」「……」「……花恋さん?」「きゃー! きゃー!」「え? え? 花恋さん?」「蓮くんと初めてキスした私、来ちゃったよー!」 両手を頬に当て、恥ずかしそうに身をよじらせる。 その姿を見て、今日の私、多分こんな感じだったんだろうなと恋が思った。
last updateLast Updated : 2025-12-05
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017 激しい感情

 「難しい問題だよね、本当」 紅茶を入れ終わると、花恋〈かれん〉はウイスキーを数滴落とした。「私、お酒飲めるようになってるんだ」「え? ああ、これね。まあ、付き合い程度には飲めるようになったよ」「やっぱり10年って長いんだな。蓮司〈れんじ〉さんもビール飲んでたし、それだけでも大人って感じがします」「こんなの、全然大人じゃないよ。大人の振りをしてるだけ。中身は全然成長してないんだから」 そう言って紅茶を口にする。「さっきの話。恋〈レン〉ちゃんが私たちのことで、色々動きたいってやつ」「はい」「いいと思うよ」「いいんですか?」「昔の私なら、きっとそうするって思った。まあ、お節介がすぎるとも思うけど……でも自分のことだからね。恋ちゃんのしたいようにしてみるのも、ありだと思う」「ありがとうございます」「結果は覆らないけどね」「……」 そうつぶやいた花恋の言葉に、恋の心が少し痛んだ。 でも構わない。 私はきっと、その為に来たんだ。 何もせずに戻ったら、後で必ず後悔する。 そしてそれは、私と蓮〈れん〉くんの未来を決定付けることにもなってしまう。 それは嫌だ。 私は蓮くんと、これから先も一緒にいたい。 だから私は動く。そして変えてやるんだ、この未来を。 「私たちの心が離れていった理由。あいつが言うように、小さなすれ違いが重なっていったってのもあると思う。でも私にとって、それは大した問題じゃなかった」「何かあるんですね」「多分、蓮司の方にもね」「……」 やはり蓮司さんにも、何か隠してることがあるんだ。恋が小さくうなずいた。「私にとって一番の理由。それはね、あいつが夢を捨てたことなんだ」「え&helli
last updateLast Updated : 2025-12-06
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018 本音

 「ごめん、ちょっと熱くなっちゃったね」 少し声を落として花恋〈かれん〉が言った。「あいつは私の為、そう言って夢を諦めた。私はショックだった。蓮司〈れんじ〉が私をそんな風に使うだなんて、思ってもみなかったから。 でも私はその時、そうなんだ、としか言えなかった」「どうしてですか? どうして自分の気持ち、ちゃんと伝えなかったんですか」「どうしてだろうね。私にも分からない。でもね、それでも蓮司のこと、やっぱり好きだった。ずっとこの人といたい、そう思ってた。 大好きなあいつが唯一の夢を諦めた。そのことに私が口を挟んだら、二人の関係にひびが入るかもしれない……そんな風に思ったからかもしれない。私にとって、蓮司はそれくらい大切な人だったから。その筈なのに…… その時の感情が、いつまで経っても消えなかった。何かある度に思い出して……蓮司に対して、やるせない気持ちが積もっていった。 だからね、自分から連絡を取らないようになっていったの。顔を合わせば何か言ってしまいそうで。それにあいつね、作家になることを諦めてから、変な笑い方をするようになったんだ」 恋〈レン〉の脳裏に、全てを諦めきったような蓮司の笑顔が浮かんだ。「そんな顔見たくなかった。私を見て優しく微笑んでる。でもね、笑顔を向けられる度に、『お前のせいで夢を諦めたんだ』って責められてるような気がしたんだ」「……」「それからはまあ、あいつの言った通りかな。連絡を取り合うことが少なくなっていって、いつの間にか自然消滅」  * * * 花恋の言葉に、恋は心をえぐられるような感覚を覚えた。 花恋の言っていることも分かる。夢を諦める口実に使われた、そのことに憤る気持ちも理解出来る。 でも、それでも。 恋には納得出来なかった。 今、自分の中に怒りの感情はない。 寂しくて哀しくて、ショックでいっぱいだった。
last updateLast Updated : 2025-12-07
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019 寂しくて

 「蓮司〈れんじ〉、自分からは指一本触れようとしなかった」「……」「あいつはいつも、私と距離を取っていた。一緒に歩いていても、部屋で二人きりになっても」「どうしてそんな」「私に聞かれてもね、分かる訳もない。次に会った時にでも聞いておいてよ」 そう言って寂しげな笑みを浮かべる。「でも花恋〈かれん〉さん、さっき言いましたよね。何度もキスしたって」「うん。でもそれは、いつも私からだった」「……」「手を握るのだって、抱き締めるのだってそう、いつも私からだった。もっと蓮司に近付きたい、温もりを感じたい。私を求めて欲しい、触れて欲しい。そう思ってた。 でもあいつは、自分から触れようとはしなかった。いつも距離を取って、ニコニコしながら私の話を聞いていた。 私がキスしたら、照れくさそうにしてたよ。そしていつも言ってくれた。『大好きだ』って」「でも、蓮司さんからは何も」「なかったね。キスを拒むことはなかったよ。私が言ったら抱き締めてもくれた。でもそれだけ。自分からは決して触れようとしなかった」「……」「そんなことがずっと続いてた。初めの頃はね、これが蓮司なのかな、でもまあ、こんな関係もありかなって思ってた。何より私は、そんな蓮司も好きなんだから。 でもね、流石にそんな状態、何年も続いたら駄目でしょ」「それは……」「あいつが私にしてくれたのは、初めてのキスだけ。ひょっとしたらあいつ、私に興味ないのかなって思ったりもした」「……」「あいつに抱き締められたい、愛されたい。そんな風に思う私って、ひょっとしておかしいのかな。そう思って泣いたこともあった。 だから私は、あいつが求めてくれるのを待った。いくら小心物のあいつでも、いつかは求めてくれる筈、そう思って待った。自分からキスするのもやめた。抱き締めたり手を握
last updateLast Updated : 2025-12-08
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020 同窓会

 「メールですか?」「え? ああ、うん……ちょっとね」「……」  その様子、覚えがあった。 何か後ろめたいことがある時。 人に踏み込んでもらいたくない時の、自分の反応だ。 自分が相手だと本当、分かりやすいと思った。 いつもならきっと、「そうですか」と言って終わらせていただろう。 でも恋〈レン〉は感じていた。 このメールはきっと、私たちに関係がある。 だから聞いた。心の中で「ごめんなさい」そう思いながら。 「誰からですか?」「いやいや恋ちゃん、顔が怖いから」「そのメール、私にも関係あることですよね。花恋〈かれん〉さんを見てたら分かります」「参ったな……このタイミングでメールが来るって、精霊ちゃんの仕業かなって思っちゃうよ」「じゃあやっぱり」「いいよ。見せてあげる」「……」  メールの相手を見て、恋は驚いた。 大橋雅史〈おおはし・まさし〉。 クラスメイトの名前だった。 「どうして大橋くんと」「一か月ぐらい前に、同窓会があったんだ」「同窓会……」「卒業してもうすぐ10年になるし、久しぶりに会わないかって大橋くんが号令をかけたの。ほら、彼って確か、クラス委員やってたじゃない? 人気者だった彼が発起人、参加する人も多かった。ほとんど来たんじゃないかな」「蓮司〈れんじ〉さんは」「あいつは来なかった。まあ、聞くまでもなかったけどね」「……そうなんですね」「今の恋ちゃんにはピンとこないと思うけど、懐かしかったよ。いいクラスだったな、あの頃は楽しかったなって、ちょっと感傷的にも
last updateLast Updated : 2025-12-09
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