彼の落ち着き払った様子をぼんやり見つめ、私はふっと笑った。「達也、これが本当のあなたでしょう」自己中心で、偽善的で、偏執的。手段を選ばない。彼の目がどこか悲しげになった。「馨ちゃん、君が追い詰めたんだ。どうして俺と普通に過ごしてくれないんだ?俺は、あんなに君を愛してるのに」飛雄が歩み寄り、気まずそうに言った。「ごめん、馨さん。チャットのあれ……全部俺が勝手に言ったことです。達也さんの心には馨さんしかいません。春奈さんが一方的に想ってるだけです。今回も春奈さんが会社で自殺騒ぎを起こして、達也さんは仕方なく見に行っただけです。ずっとオフィスにいて、みんなが見てました。絶対に馨さんに後ろめたいことはしていません!」私はもう追及する気もなかった。一度だろうが百回だろうが、何が違うというのか。結局、全部腐りきっていた。私は腹をかばうように立ち上がる。「ちゃんと考えて離婚したいと思ったら連絡して。それ以外のことには興味ないわ」達也が私を引き留めた。「病院が嫌なら家に戻ろう。俺がついてる、君が見張ってていい。馨ちゃん、もう気を散らしたりしない」私は彼の手を払いのけた。「いいわ。警官の方が警察寮を紹介してくれたの。しばらくはそっちに泊まる。達也、あなたが誰といようがもう関係ない。警察寮の警備はすごく厳しいわ。来て私を困らせないで」ついに彼は堪え切れず声を荒らげる。「江本馨!いつまで意地を張るつもりだ!」彼の力は強く、私は歯を食いしばって耐えた。女性警官が彼の手を引き剥がす。「彼女が出血してるのが見えないの!」彼はうろたえたように言った。「馨ちゃん……ごめん、そんなつもりじゃ……」そんなつもりじゃないからこそ、余計に痛い。彼は一度たりとも、本当に私を心に置いたことがなかった。愛しているのは、自分だけだ。……警察の寮は安全性がとても高い。さらにあの女性警官が警備員に特別に話してくれて、達也は一度も入ってこられなかった。この家は、本当に借りて正解だった。
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