それに、長年本国で我が物顔に振る舞い、望むものは何でも手に入れてきた蓮だ。事情を知らない誠を除いて、誰が彼にこれほどの屈辱を与えられるだろうか。案の定、蓮はすぐには帰国せず、D国に留まって私と長い根比べをすることを選んだ。ある晩、誠が「私の新しい上司」という名目で、せめてものもてなしにと私たちを食事に誘った時だった。蓮は私たちが親しげにしているのが我慢ならず、レストランで大暴れし、仲裁に入ったウェイターにまで暴力を振るった。一ノ瀬家の権力もさすがに国外までは及ばない。蓮は自分の行為に対する代償を支払うことになった。結果、彼は懲役三ヶ月の実刑判決を受けた。三ヶ月後、私は面会に行った。ガラス越しに、蓮は悔しそうに私に問いただした。「なんであいつなんだ?俺は反省して謝ったし、こんな最果ての地までお前を迎えに来たんだぞ。どうして許してくれないんだ?」「誠は……私がどうして許さないのかなんて、聞いてこないよ。彼はあなたみたいに、私を傷つけたりしないから」蓮は私を見て、何かを悟ったようだった。出所の日、誠が迎えに付き添ってくれた。外に出てきた蓮が最初に目にしたのは、私が誠と手を繋いでいる姿だった。わざとそうしたのだ。実は彼には感謝している。彼があんな騒ぎを起こしてくれなければ、私と誠がこんなに早く結ばれることはなかったかもしれない。今、私には心から愛すべき人がいる。当然、それを一番に蓮に知らせてやりたかった。これで彼も諦めるだろうと思っていた。けれど、私たちが結婚することを知った蓮は、なんと私を問い詰めるために私のアパートへ車を走らせたらしい。不運だったのは、蓮が外国の道路事情に疎かったことだ。彼は来る途中で不注意から交通事故を起こし、病院へ担ぎ込まれた。病室の前で、看護師が言った。「佐伯様、中に入られますか?患者様がずっとお名前を呼んでいらっしゃいます」私は薬指のダイヤの指輪に触れ、誠を見てから、看護師に首を横に振った。死んでいないとわかればそれでいい。それ以外のことは私には関係ない。手術はまだ終わっておらず、蓮はまだ危険な状態を脱していないようだった。彼の生死に対して、自分がどんな反応をすべきなのか、ふとわからなくなった。蓮は苦しんでいるだろうか?もし自分の命
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