All Chapters of 転生したら推しの軍人様が「筋肉信者」になっていたんですが!? ~そして私は筋肉聖女~: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話 スライム大逆転!友情のぷるぷる革命!!

 広場へ戻ってみると、想像以上の地獄絵図が広がっていた。「……な、なんですかこれ」 聖バーベル教会の筋肉軍が、ことごとくスライムに絡め取られて地面に転がっている。筋肉とぷるぷるの融合は思った以上にむさ苦しい。『ぷるっ! ぷるっ!』 「よーし、こっちに全部集めてくれ。まとめて縛っておくぞー!!」 そして、転がっている筋肉軍を、村人たちがずるずる引き摺りながら一か所に集めていた。スライムたちはお利口にその手伝いをしている。「た、大佐。どういうことでしょうか」「ふむ。どうやら、大事には至らなかったようだな……」 私と大佐があぜんとして佇んでいると、村の子供たちが気づいて声をかけてくれた。「あっ、筋肉大佐とお姉ちゃん!! 無事だったんだね。こっちは大変だったんだよ!」「みんな! 怪我は無さそうですね。良かった! あの、何が起こったんですか?」「それがね、急にあの変な人たちが、空から降って来て……」「空から降って来たんですか?? 筋肉が!?」「この村を筋トレの聖地にする、って襲い掛かってきたの!!」「本当に何しに来たんですか、あの人たち!?」「折角の炊き出しも滅茶苦茶になってしまって、もう駄目かと思った時……、あのスライムたちが森から飛び出してきて助けてくれたのよ!」「「……!!」」 子供たちの説明に、私と大佐はおもわず互いに顔を見合わせた。「最初は怖かったの。スライムって、いつも畑の野菜をとっていくし、危ないから近づいちゃ駄目って言われていたし……。でも、みんなを守りに来てくれたんだって、すぐに分かった! だって、スライムはあの変な人たちにしか攻撃しなかったもの」「よく見ると、可愛いし!」 「筋肉に何度も潰されても、立ち向かってくれたんだよ!」 「私もスクワットを無理やりさせられていたけど、助けて貰ったの!」 口々に話す子供たちは、きらきらとした表情をしていた。スライムたちが奮闘したであろう光景を想像して、私は胸が熱くなる。(頑張ったのね……、スライムちゃんたち!)「お父さんたちも、最初はスライムなんて信用できないって言っていたんだ。でも、一緒に戦う内に、だんだん仲良くなっていったの!」「それで、みんなで協力して、変な人たちをやっつけたの!!」「ぼくも頑張ったんだよ!」 「私もマッスルポーズで応戦したよ!!」 改めて
last updateLast Updated : 2025-11-28
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第12話 まぶしすぎて眠れない! 不眠症の危機です!

 村での炊き出しも無事に終わり、私は軍の拠点に戻って眠り支度をしていた。「うぅん、今日はいろいろあって疲れたなぁ。早く寝よう……」 基本的に新入りは二人部屋になるのだが、私は部屋数の関係でありがたいことに一人部屋を与えられている。 もうすぐ消灯時間だ。今日はよく働いたから、きっとぐっすり眠れるだろう。 私がふかふかのお布団に潜り込み気持ちよく目を閉じた、次の瞬間。 ドサァン! 大きな物音が響く。「ひゃっ!? な、なに!?」 天井から落ちてきたのは一冊の本だった。表紙には金色の文字がキラキラと輝いている。 ――『超絶☆美少年写真集(第二弾)』「ま、また来た!!」 落下の衝撃で開いた本により、部屋は真昼のように明るく照らされる。 慌てて拾い上げて閉じるが、第一弾の写真集より明らかに光が強力になっており、その状態でも光がもれてくる。「ううっ。これじゃあ眩しくて眠れないよぉ……」 疲れた身体を引きずりながら、私はこの本の扱いに一晩中悩まされることになったのだった。 そして、翌朝。「……」 眠い。結局、光と本の存在そのものが気になり過ぎて、全然眠れなかった。 集会場までやってくると、寝不足で目の下にクマを作った私に気が付いたらしく、大佐が眉をひそめる。「コハル、顔色が悪いな。昨晩は眠れなかったのか?」「じ、実は」 私は恐る恐る、美少年写真集(第二弾)を取り出した。「ビルドさんが、また……」「なんだこれは」「ひぃっ! 見ない方が!」 パラリ、と大佐が開いた瞬間、部屋がサーチライトのように輝き、窓の外でニワトリが「二度目の夜明けか!?」と勘違いして鳴き始めた。「……なるほど。これは確かに安眠の敵だな」 大佐が顔をしかめて本を閉じる。こんなときこそ筋肉流の解決策を伝授して欲しかったが、特にそういったこともなかった。 流石に打つ手なしなのかもしれない。 そうして眠り目をこすりながら何とか任務をこなして、また就寝時間がやってくる。「よし、昨日のは片付けたし……きっと、今日は大丈夫!」 私は祈るような思いでそう呟き、布団に潜り込む。正直、本当に眠い。この眠気ならば、多少の光があったって今夜は眠れる気がする。 そう、私は、美少年の光害には屈しないのよ! 睡眠不足の妙なテンションで脳内が盛り上がった、次の瞬間。 ヒュッ……
last updateLast Updated : 2025-11-29
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第13話 めざせ最高傑作! 筋肉写真集を作ります!!

 美少年ホログラムから守ってもらうという名目で、私はカイル大佐の部屋で眠ることになってしまった。 その結果、部屋に一つしかないベッドを私が占領し、上司である大佐が床で寝袋に包まっているというカオスな状況となっている。(うぅ、緊張して眠れない……) 寝る場所を決める際、私が寝袋で寝ますと土下座する勢いで主張したのだが、大佐は頑として自分が床で寝ると言って譲らなかった。 睡眠不足の部下にベッドを譲らないわけにはいかないし、そもそも自分は寝袋での休息も慣れている、と言うのである。(確かに、今日は美少年ホログラムも、私の所に来ないけれど……) そう、大佐の筋肉に恐れをなしたのか、いつも就寝時になるとひょこひょこやってくるホログラム達が今日は近づいてこない。 しかし、である。耳に届くのは、規則正しい呼吸音と時折の咳払い。私は室内の大佐の気配を感じるたび、布団の中でごろごろ転がってしまう。(これは、意識するなという方が無理では!? でも、大佐は私と同じ部屋で寝てもなんともなさそう……) ――なんて、私は何をちょっぴりがっかりしているんだろう。いや、違う、そうじゃない。今一番解決するべきは、私の睡眠不足である。 ともあれ、今夜は珍しく眩しくないのだ! 何とか眠ろうと必死に目をつぶっていると、小さな声が聞こえてきた。「……だ」(……?) 耳を澄ましてみれば、どうやら大佐の寝言らしい。「……腕立て伏せは、形を変えると効く場所も変わる。手を広げれば胸筋、手を狭めれば上腕三頭筋、足を高くすれば上胸筋に効果的だ……」(待って、これは本当に寝言なの!?)「すうすう……」(寝てる……よね?)「……筋肉は70%が水分。脱水は筋肉の収縮を妨げる。鍛錬中は小まめな水分補給を忘れるな……」(寝言で、筋肉豆知識を披露しているー!?) しかも、微妙にタメになることを! 私は別の意味で気になって仕方がなくなり、安眠が更に遠退いていく。 こうして私はこの日も、何なら今までよりも余計に眠れない夜を過ごしたのであった。◇ ◇ ◇ 翌日、私の精神状態は限界を迎えていた。連日の睡眠不足に加えて、大佐と同室就寝の上、筋肉ラジオを一晩中聞き続けたのだ。「懸垂は上半身の真実を映す。広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋を一度に鍛えられる。体重を自在に持ち上げられてこそ真の筋力……」
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第14話 ダンベリア王国、国王様登場!!

「明日、国王様の護衛任務ですか?」 軍の訓練も終えて少し休憩をとっていた午後、カイル大佐から執務室に呼び出された私は、告げられた任務の内容に目を瞬かせた。「そう、我がダンベリア国の王、バルク3世から頼まれたのだ」(私の所属している王国、そんな名前だったんだ……)「バルク3世と私は、実は昔からの古い友人でな」「ええっ、大佐が国王様とご友人!?」「そうだ。私は元々、下級貴族の出身なのだが……。幼少の頃、父に連れられて王宮を出入りしているときに、当時王子だったバルク3世と知り合ったのだ。年の近い私たちは、身分の差をこえて親しくなってな」「何だか素敵ですね、そういったご縁! バルク3世様は、どんな御方なんですか?」「ふむ……。丁度、子供の頃の写真を持っている。これが私で、こっちがバルク3世だ」 大佐は懐から身分証を取り出すと、そのケースの中から一枚の写真を抜きとった。大切な物として、ずっと肌身離さず持っているのだろう。  それだけでも、大佐と国王様の絆が伝わってくる気がした。「わぁ。子供の頃から、大佐はガッチリしていたんですね! 可愛いっ!! そして国王様は――な、なんて、儚げで愛らしいっ。こんなに繊細な雰囲気の御方なんですねぇ」 見せて貰った写真には、二人の少年が仲良さそうに並んで映っている。一人は木刀を掲げる幼少の頃のカイル大佐、もう一人は小柄で細身の、守ってあげたくなるような愛らしい少年――当時のバルク3世様だった。「私、気合を入れて任務に当たりますね! 国王様ですし、大佐のご友人ということでもありますし、しっかりお守りしなくてはっ」「ああ、期待しているぞ、コハル!」 こうして、私は大佐と一緒に重要任務につくことになったのだ!◇ ◇ ◇ 翌朝、私たちは早速、王宮へと国王様をお迎えに上がった。大きな城門をくぐり、豪華な装飾の施された広間や廊下を通り抜け、客間へと通される。  普段接することのない高貴な雰囲気に私は緊張しっぱなしだったが、大佐が慣れた様子で先導してくれた。そして、部屋で待つこと数分、バルク3世様その人が登場したのだった。「……!?!?」 その姿を見た瞬間、私の思考は完全に停止した。私の脳内妄想では、あの儚げな愛らしい少年が成長したような、線の細い華奢な男性が登場するものだと思っていたのだが。「やあ、君がコハルだね
last updateLast Updated : 2025-12-01
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第15話 護衛任務開始です!

 まだ朝も早い時間のうちに、国王様と王女様を乗せた馬車は出発した。前衛と後衛にそれぞれ10人ほどの兵士が配置され、中央の王家の馬車を守る布陣だ。兵士に関しては、カイル大佐の部隊から選りすぐりの精鋭たちが今回の任務に抜擢され同行している。 大佐本人は馬に乗り、馬車に並走しながら全軍の指揮をとっている。ああ、とても凛々しくて格好良い。キリッとした表情で的確に指示を出していく姿に、惚れ惚れしてしまう。  私は半ば本気、半ば現実逃避の思考を抱えつつ、そんな大佐の様子を”馬車の中から”眺めていた。 そう、王家の馬車の中から。「いやぁ、久しぶりの遠出だねぇ」「あ、見て、コハルおねえちゃん! ちょうちょ、ちょうちょだよ!」(……ど、どうして、こんなことに――!?) 私の膝の上には、愛らしいお人形さんのような見た目をした、幼いキンバリー王女がお行儀よく座っている。私の目の前には、筋肉をぎゅうぎゅうに縮こまらせながら、何とか馬車の座席に収まっている国王バルク3世様の姿がある。 ありえない想定外の状況に冷や汗をだらだら流しつつ、私は馬車の揺れでバランスを崩しかけた王女様をそっと支え直す。「それにしても、コハルがいてくれて助かったよ。キンバリーもすっかり懐いたみたいで良かった。突然、同乗を頼んですまなかったね。同行予定だったお付きの者たちに、筋肉風邪が流行しているみたいで参ってしまってね」「い、いえっ。光栄であります!」 そう、本来のお世話係さんたちが全員体調不良ということで、偶然にも王女様に懐いて貰った私が王家の馬車に同乗することになってしまったのだ。  確かに国王様は寛大なお方だし、王女様はとても可愛らしい。しかし、身分も階級も決して高くない自分が、いきなり王族二名とご一緒するというまさかの事態に、私はかなりの緊張状態だ。「コハルおねえちゃん、あれはなに!?」「ああ、あれはアイアン芋畑ですよ。この辺りは農業が盛んですからね。皆さん、今日も畑仕事に励んでいるようです」「ここでお芋ができるの? 私ね、お芋だいすきよ!」「うっ……! きゃわわわっ」 この筋肉密集地帯において、キンバリー王女様の愛らしさは圧倒的な癒しだった。そのキュートさに胸を打ち抜かれつつも、私はふと思案する。(で、でも、この王女様も、17歳になるともしかして――?) バルク3世様は
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第16話 危機一髪!? グルメシア兵との戦いです!

 20分の休憩、もとい筋トレタイムは予想通り1時間ほどに延長した。それから私たちは、また目的地へ向かって森の中の行軍を始めることとなる。 キンバリー王女は馬車の窓から、相変わらず瞳を輝かせながら景色を眺めている。「わーっ、きれいなお花畑だね、コハルおねえちゃん!」「本当、蝶々も沢山飛んでいて素敵ですねぇ」「わーっ、立派な鳥さんがいるよ、コハルおねえちゃん!」「あれは、この辺りに生息するプロテインバードですよ。見事な筋肉質!」「わーっ、すてきなお食事テーブルセットがあるよ、コハルおねえちゃん!」「随分と豪華ですね! 草原の中で長テーブルの上の純白のクロスが輝いています。並んでいるのは、仔羊のロースト、黄金色に焼き上げられた雉の丸焼き、大ぶりの伊勢海老も!? 森で宴会でも開かれるのでしょうか。 なんてグルメな――、あっ!?」 言いかけて、その異様な光景にハッとして私は馬車の外にいる大佐へ視線を向けた。「大佐っ!! あ、あれは……!」 私の言葉に即座に反応したカイル大佐は、馬上から険しい顔をして頷いた。「西方の草原に異変あり! 全軍停止!!」 行軍はただちに停止し、緊張感が走る。「なんでしょうか……。グルメシア兵のお食事の準備……?」 馬車の中で私は王女様をぎゅっと抱きしめながら、警戒を強めた。「いや、しかしこれ程の食事を準備する余裕が、食糧難のグルメシアにあるかな」 外に並んだ料理を眺めつつ、バルク3世様は思案気に首を傾げる。「その通り。これは――罠だ」 気づけば馬から降りた大佐が、私たちの乗っている馬車の窓へ顔を寄せていた。「ええっ、罠ですか?」「見てみろ、あのテーブルの上空を!」「上空?? ……ああっ!?」 目を凝らすと、豪華な食卓の上空には、目立たないように透明な糸で編まれた網が張られている。「よ、よく見えましたね、大佐」「ああ。眼筋を鍛えているからな!」「眼筋万能すぎません?」「しかし、困ったね。どうする、カイル。このまま通り過ぎるかい?」「いや、どうせ敵は近くで見張っているだろう。ならば、小細工は無用! 正々堂々、筋肉で応えよう!」 そう言い残すと、大佐は威風堂々とした足取りで、罠だと思われる食卓へと一人で近づいていく。「この罠を作った者よ! お前たちの魂胆は見抜いている。姿を現すが良い!!」 そ
last updateLast Updated : 2025-12-03
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第17話 誘惑!幻術! プロテインはいくらあっても良い!

「落ち着け、ダンベリア国にそんな意図はないっ!」「カッカッカ、信じられるか! おまえたち、いくぞ、気合入れろぉ!」 カイル大佐が説得を試みるも、ダンベリア国が戦況を悪化させようとしていると信じたグルメシア兵の勢いは止まらない。 無理もない話だと思う。そもそもが敵対中なのだ。簡単に対話することは出来ないだろう。 グルメシア兵は全員が集まって、力を合わせるように呪文を唱え始めた。『虚と実の狭間にて、香りは形を、欲は姿を得る。幻よ、食卓を越え、我らの望む景色を示せ!』 ダンベリア兵は説得を諦め、相手の攻撃に備えて筋肉の盾を更に強固にする。「……っ!! くるぞ!!」 そして詠唱が終わった瞬間、私たちの目の前に広がったのは――きらめく水面をたたえた大きな湖。湖畔には白鳥が泳ぎ、周囲には美しい花畑。さらに見渡せば、なんと湖そのものが淡く輝いている。 ご丁寧に、こんな看板までたてられていた。『こちら、プロテイン湖』「こ、これは……!」「見ろ、あのきらめき! プロテインの湖だぁぁぁ!!」 ダンベリア兵たちの目が一斉に輝く。湖面はまるで、純度100%のプロテインドリンクで満たされているかのようだった。 彼らは筋肉スクラムを離脱し、我先にと湖へ向かってダッシュしていく。「いや、待ってください、皆さん! 絶対に可笑しいですから! さっき、呪文聞いていましたよね!? あれ、たぶん幻ですよ! 幻術!!」 慌てて馬車から飛び降りて声を荒げる私へ、赤髪のグルメシア兵リーダーが不敵に笑う。「カーッカッカカ! 筋肉命のダンベリア兵は、幻術に極端に弱いのだ!」「そ、そんなぁ!?」「よし、この隙に国王と王女を……、ぐうっ、駄目だ、視界がぼやける! 大規模幻術はとにかくカロリー消費が激しすぎる!! ああ、三途の川が見えてきた……」「こっちはこっちで、術の為に命を犠牲にし過ぎている……」 前方にはプロテイン湖ではしゃぐダンベリア兵士たち。後方には空腹でうずくまっているグルメシア兵士たち。混沌を極める状況に現実逃避しかけるが、私は気合を入れて意識を引き戻す。 今はグルメシア兵が空腹でダウンしているから良いが、彼らが回復して動き始めたら国王様たちが危険だ。早く仲間の皆を正気に戻さないと!「そうだ、大佐っ。大佐なら、こんな幻術に負けない――!!」「すごいぞカイル大
last updateLast Updated : 2025-12-04
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第18話 どうなる!? 空腹の兵士と小さな王女!

「追いついたっ! ごほっ、ごほ……!」 私は唐辛子爆弾の煙の中をなんとか走り抜ける。夢中でかなりの距離を進んだところで、ようやくキンバリー王女様に追いついた。  保護するように、優しくそっと後ろから抱きしめる。「わあ、コハルおねえちゃん! どうしたの?」「急に走り出すから、慌てて追いかけてきたんですよ! キンバリー王女様は、唐辛子の煙は平気だったんですか?」「……? キンバリーちゃん、元気だよ!」 どうやら王女様は小柄なため、上空を漂う煙の影響から上手く逃れられていたらしい。それで大人たちが混乱する中、一人で駆け出すことが出来たのだろう。「とにかく戻りましょう! みんな、心配していますよ」「だめだよ、だって……!」「そうとも逃がさないぜぇ!!」「……っ!?」 突然、会話に割り込む声が響いて、私はびくりと肩を震わせる。そろりと顔をあげると、なんと私とキンバリー王女様は、先程のグルメシア兵にぐるりと取り囲まれていた。「わざわざ二人だけで追いかけてくるとは、愚かな奴め!」「ひえっ! ち、違うんです、これは――!」「問答無用! カッカッカ、丁度いいグルメリアス王への土産が出来たぜ!!」 赤髪のグルメシア兵リーダーが、ふらつきながらも私たちに近づいてくる。私は必死に周囲を見渡すも、完全に逃げ場はない。  私が王女様を庇うように抱きしめようとしたそのとき、彼女がするりと腕の中から抜け出した。「あっ、王女様、危ない……!」 引き留めようとするが間に合わない。そのまま王女様は、グルメシア兵リーダーの所まで駆け寄ると、満面の笑みでポケットの中身を差し出した。「はい! これ、あげる!!」「!!」 その瞬間、完全に空気が固まった。王女様以外の誰もが、何が起きたのかが分からなかった。「……?? おいしいよ、どうぞっ!」 誰も反応しないので不思議そうに首を傾げて、王女様は差し出したものを、グルメシア兵リーダーに押し付ける。彼女が彼らに渡したのは、てのひら一杯に乗せられた飴玉だった。「王女様……。まさか、これを渡すために、彼らのあとを追いかけたんですか?」「そうだよ! だって、お腹空いてたんでしょ? この飴玉、おやつにとってた大事なやつだけど、お兄さんたちにあげる!!」 王女様は、にこにこと屈託のない笑顔を見せる。その純真さに、私は目頭が熱
last updateLast Updated : 2025-12-05
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第19話 幸せの筋肉プリン!

「筋肉クッキングって何だよ!?」「わーい、おりょうりだー!」 ざわつくグルメシア兵士たちと、嬉しそうに飛び跳ねる王女様へ、私はふふんと笑いかける。「お料理ですよ! ここで、料理をするんです」「だから、我々は美食しか――!!」「美味しければ良いんでしょう? だったら出来ることをやってみましょうよ。こうしてじっとしていても、お腹がすくだけですよ!」「そ、それはそうだが……」「大丈夫、私に任せてください! 美味しいご飯がみんなをハッピーにするというのには、同意ですし!」「しかし何を作る気なんだ? こんな設備もない森の中で……」「実はもう、考えてあります。筋肉プリンです!!」「なんだその、暑苦しい料理は!」「はいはい。役割分担始めますよー! まず、グルメシア兵士さん達、さっきみたいにお鍋は出せますか?」 私の問いかけに、一部の兵士さんたちがおずおずと手を挙げた。「あ、あの、俺、出せます!」 「実はこれ、召還魔法だったんだぜ」 「鍋だけで良いですか? 他の調理器具もいけますよ!」 意外と積極的な彼らに、赤髪のグルメシア兵リーダーが慌てて声を荒げる。「おいこら、お前達! なに、ちょっとやる気になっている!? 正気か??」「だって、兵長! プリンですよ、プリン!!」 「食べたくないですか!?」「はい、喧嘩しない! 次は材料集めですね。貴方たちは、プロテインバードの卵を探してください。きっとこの辺りに生息していますから。貴方たちは、アイアンビーの蜂蜜を。残りの人たちは、石を積んでかまどを作りましょう!」 私はてきぱきと指示を出した。実は村での炊き出しの後、この世界の食材が随分現実世界と違うことに気づいた私は、色々と勉強していたのだ。まさかその知識が、ここで役に立つとは! それに、大佐が作った筋肉プリンはみんなに大好評だった。あれなら、きっとグルメシア兵の人たちにも喜んでもらえる自信がある! 一通り話した後、私は、いまだにどこか納得のいかない顔をしているグルメシア兵リーダーの肩へポンと手を置いた。「貴方には、特別な任務をお願いします」「なにっ!? 何の権限で……!」 彼の反論をものともせず、私は、ずずい、とキンバリー王女様を彼の傍へ差し出す。「キンバリー王女様の遊び相手です!!」「なにーっ!?」 「やったー!! 赤髪のおにい
last updateLast Updated : 2025-12-06
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第20話 おめかしはお好きですか??

 あれから護衛任務は無事に終了し、全員が元気にダンベリア城下町へ戻ってくることが出来た。その数日後、私とカイル大佐は改めて、国王バルク3世様から王城に呼び出されたのだった。「「「コハル様、お待ちしていましたっ!!」」」 「は、はいっ……!」 そして私はダンベリア城の客室で、三人の筋肉ムキムキレディー達に囲まれている。ちなみに大佐は別室へと連れられて行った。つまり、1対3の逃げ場なし状態である。「キンバリー王女様から、お噂はかねがね!」「きゃーっ、筋肉聖女様よ! やっぱり美人ね、それに神々しいし品があるわ!」「私のトレーニングウェアにサインをくださいませんか!?」 彼女たちは、筋肉風邪で倒れていたと聞いていた、キンバリー王女様のお世話係の皆さんらしい。病気はすっかり完治したらしく、元気満点で私に迫ってくる。 私はおろおろと応対していたのだが、やがてそのうちの一人が我に返ったように時計を見上げた。「はっ、いけないわ! もっと交流を深めたいのは山々だけど、私たちには使命があるもの!」「使命……ですか?」「そうです!」「そうだったわ!」「さあ、やるわよ…!!」「「「覚悟は宜しいですか、コハル様――!」」」 筋肉レディー達の目がキラリと光り、三人が全員、手をワキワキさせながら私の方へと近づいてくる。「えっ、えっ、ちょっと、何が始まるんですか?? 女子会筋トレフェスティバルとかですか!? まってください、話せば、話せばわかる、あ、あああーっ……!」 ごくごく普通の筋肉しか持たない私は彼女たちにかなうはずもなく、されるがままになってしまうのだった……。◇ ◇ ◇ たっぷり30分程経過した後、私はすっかり着飾られた状態で、客室の鏡の前に立っていた。「こ、これが……、私……!?」 選ばれたラベンダー色のドレスは光を受けてほんのり銀色に揺らめき、裾が大きく花のように広がっている。胸元や袖には細かなレースが散らされていて、動くたびにきらきらときらめいた。 肩までの栗色の髪には花飾りが差され、耳と首元には宝石があしらわれている。「ふふふっ、自信作です!」「久しぶりに腕が鳴ったわぁ!」「やっぱり、素材が良いと映えるわね!!」 筋肉レディー達は満足げに私の姿を上から下まで確認すると、魔導カメラを取り出して連写し始めた。「はい。笑ってくだ
last updateLast Updated : 2025-12-07
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