All Chapters of 転生したら推しの軍人様が「筋肉信者」になっていたんですが!? ~そして私は筋肉聖女~: Chapter 21 - Chapter 30

50 Chapters

第21話 和平のカギは、食にあり!?

「あっはっはっはっは!」 お茶会の会場にて、先程の騒動について説明したところ、バルク3世様は楽しそうに大笑いしていた。「カイルは相変わらずだなぁ」「相変わらず過ぎますよ……!」 とりあえず、あっさり誤解は解けたので安心した。カイル大佐とバルク3世様は幼馴染ということもあり、上半身の服が弾け飛んだ件についてもすぐに納得して貰えたのだ。  ……昔からこういう体質だったのだろうか。 大佐は王城で着替えの燕尾服も準備してもらえたようで、改めて正装した状態で着席している。「……」 会話する私たち二人を前にして、大佐は少しだけ目を逸らして無言でいる。珍しく居た堪れないような表情をしているのを、少し可愛いと思ってしまった。「さて、早速だけど本題に入ろうか! 先日の護衛任務、お疲れ様だったね。キンバリーがいなくなったときは心配したけど、コハルが付いていてくれて良かったよ」「いえいえっ、任務ですから! お役に立てて光栄です」「今日はそのお礼として、お茶会を用意したので楽しんでいって欲しい。あと、いくつか話したいこともあってね」「グルメシア国の状況についてですか?」「そう。キンバリーからも少し聞いたんだけど。改めて、君があの日に体験したことと、意見を聞きたいんだ、コハル」「承知しました。まずですね――、」 私はあの日の出来事を説明した。    グルメシア兵に囲まれたが、王女様が飴玉を差し出して敵の戦意が失われたこと。  その後、皆で料理を作って少し交流を持てたこと。  彼らの食糧難はやはり深刻であること。  グルメリアス王は美食信仰が深いが、国民からは慕われる存在であるらしいこと。「あの、変な言い方かもしれませんが、皆さん、良い人に見えました。グルメリアス王も、そんなに悪い人ではないような気がします。だから、穏便な解決策を見つけたいと思うのですが……」「なるほどね。美食に傾倒して、王族貴族だけ贅沢三昧――ということはなく、みんな平等に食糧を分配して、みんな平等に飢えていると」 頷きながら話をまとめるバルク3世様の言葉を聞いて、大佐が口を開く。「それは政治ではない。為政者が共に苦難を引き受けたとしても、国民を飢えさせているという事実は変わらないだろう」「ご、ごもっともです」「やはり筋肉だ! 彼らに足りないのは筋肉だろう!!」「ひえっ
last updateLast Updated : 2025-12-08
Read more

第22話 グッズ展開が速すぎます!

「君が筋肉聖女だというのは、本当か、コハル!?」「ひえっ! あ、いえ、それは!! 勢い任せの方便と言いますか……」 バルク3世様の言葉を確認するように、カイル大佐が私に詰め寄る。私は慌てて否定しようとしたが、その前に、彼はふむと考え込み始めた。「しかし、可能性はあるな……」「大佐?」「この前の戦いで、私が幻術でプロテインの湖を泳ぎ回っていたときのことだ」「ありましたね、そんなこと」「私はすっかり敵の術にはまってしまっていたが……。不意にコハルの声が聞こえた気がして筋肉が呼応し、目覚めることが出来たのだ」「それなら、あれを飲み干したときは正気だったんですか!?」「なるほど! コハルがカイルの筋肉に力を与えたということだね」 バルク3世様は、カイル大佐の説明に感心したように頷く。大佐は真面目な顔のまま、付け足すように言葉を続けた。「それだけではない。筋肉の盾も、普段よりも格段に良い仕上がりだった! これもコハルが傍にいたから、という可能性も考えられる」(そうなの……??) 私は筋肉の盾をあのとき初めて見たので、仕上がりの良し悪しは分からなかった。 ともあれ、大佐は嘘を吐くような人ではない。だから少なくとも、彼がそう感じたのは事実なのだろう。 しかし、「確かに! それなら私が筋肉聖女ですね!」とはやはり言い難い。「いえあのでも、自覚はまったくなくて……。白状しますが、筋肉の声も聞こえませんし……」 困り果てた私の様子を見て、バルク3世様は優しく微笑む。「まあ、全てが伝説どおりとも限らないよ。ただ、コハルには不思議な力がある。それは間違いなさそうだ。カイルの目に狂いはなかったということだね」「へっ?」 思いがけない話の展開に、私はカイル大佐の方へ視線を向けた。彼は不服そうに眉を寄せていたが、バルク3世様は気にせず話し続ける。「君を自分の部隊に引き取ると言い出したのは、カイルなんだよ。ダンベリアには珍しい、魔法の才能を持った軍人希望。もっと後方支援部隊で頑張ってもらう案もあったけど、カイルの希望で第七部隊に配属になったんだ」「し、知りませんでした。大佐、どうして」「………」 大佐は答えない。バルク3世様は、くすくすと楽しそうに笑っている。「???」 間延びした空気を引き締めるように、バルク3世様がポンと一つ手を叩いた。「
last updateLast Updated : 2025-12-09
Read more

第23話 調べ物と言えば図書館でしょう!

「ここが、ダンベリア王立図書館!」 私は町の中心地にある、巨大な図書館にやってきていた。  和平の食事会準備の為にも、筋肉聖女について考える為にも、とにかく沢山の知識が必要だと考えたからである。「この入館証があれば、大丈夫だって聞いたけど……」 ちなみに、今日は私一人での来館である。本当はカイル大佐も付き添ってくれる予定だったが、急用で軍に呼ばれてしまった。 私も一緒に戻ると言ったのだが、「大丈夫だから調べ物に専念するように」とのお言葉を頂き、今に至るのだ。「ようし、一人でも成果をあげるぞー! いざっ!」 私は気合を入れ直して、図書館入り口のバーベル型アーチへと向かった。認証用らしい魔導パネルに入館証をかざしてみるが、扉は開くことなく、エラー音声が流れてくる。『マッスル不足です』「……????」 とんでもない言葉が聞こえてきた気がするが、怯んではいられない。聞き間違えだと信じて、私は再度入館証をかざす。まず図書館に入らなければ、何も始まらない! 『マッスル不足です』「……」 私は頭を抱えた。だめだ、幻聴じゃない。絶対にマッスル不足って言われた。もしかして、筋肉ムキムキでなくてはこの図書館は利用できないのだろうか。  今から鍛えていては、入館許可が下りるのはいつになるのか……!    困り果てていた私の背後から、唐突に声が響いた。「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!! 図書館の使用は初めてかね?」 その声に私は安堵した。口ぶりからして、図書館の関係者か、利用に慣れている人だろう。「あ、はいっ! 実はここに来たのは初めてで――ひょえっ!?」 入館の仕方を教えて貰おうと振り返った私の目に飛び込んできたのは、小柄な老人――が、自分の身長の数倍程の高さに積み上げられた本を、軽々と片手で運んでいる姿だった。「わしは、ここの館長のチェストじゃ。……ややっ! もしやお主、噂の見習い筋肉聖女様かのう!」「かっ、館長さんでしたか! ええと、そうです。私が、その筋肉聖女見習いです」「わしの孫も、お主の大ファンでのう。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。筋肉聖女さまの人形を使って、毎日マッスルポーズの開発に励んでおるよ」「ど、独特な遊び方! でも、応援ありがとうございます!」「しかし、いくら見習い聖女様と言えど、この図書館の掟には従ってもらわねばならんのう……
last updateLast Updated : 2025-12-10
Read more

第24話 ダンベルよりも重い本の秘密!

 私は王立図書館の地下に辿り着いたが、辺りに他の人の気配はない。どうやらここに置いてある本は古い資料などが多く、一般の人はあまり読みに来ることは無いらしい。「ええと、食材図鑑、食材図鑑……ひえっ!?」 所狭しと置いてある本棚を眺めながら目的の本を探していると、それは唐突に現れた。「お……大きくない!?」 表紙に”ダンベリア食材図鑑全集”と書かれたその本の背丈は、私の半身ほどありそうな高さだった。分厚さも相当なものだ。  私は少し狼狽えたが、気合を入れ直してその図鑑を手に取ろうとした。「えっ、なにこれ、しかも本の表紙が……鉄板!? んぬぬぬぬ……っ、重っ!! そこら辺のダンベルよりも、重っ!!」 しかし、持ち上がらない。片手で持ち上げるどころか、両手で全力投入しても、運ぶことが出来るかすら怪しい。「うぅ、大佐が……。こんなとき、大佐がいてくれたら……」 きっとカイル大佐なら、こんな重量級の本でも軽々と持ち上げてしまうのだろう。今日は諦めて、改めてまた大佐にお願いして、図書館に一緒に来て貰おうか。 そんな考えが頭に過るが、私はそれを振り払った。「だめっ。大佐は私を信じて、一人で送り出してくれたんだから。自分でできる所まで、頑張らなくちゃ!」    私は本へと向き直ると、集中力を高める。「ウインドショット!」 本を傷つけないように細心の注意を払いながら、弱めの風魔法を使って私は図鑑を浮かせた。「で、できた! これで借りることは出来なくても、館内で読むことは出来る!」 私はそのまま、そろりそろりと本を浮かせて移動していく。そして、地下の机が置いてあるスペースまで図鑑を運ぶことに成功した。「やったー! やっと調べることが出来るっ。ノートを持って来てよかった」 それから、鉄板の表紙を開く作業に苦労したりしつつも、私は何とか調べ物を開始した。ダンベリアの特産物などはある程度勉強していたつもりだったが、図鑑は流石、情報量が違う。「アイアン芋は黒い外観で石のように重い。鉄分含有量は、他の芋類の10倍以上! 火を通すと柔らかくなり、甘みが増す……」 私は持参したノートに、目ぼしい情報を書き留めていく。「マッシブキャベツの重量は、およそ1玉20kgに達する。キャベツステーキの噛み応えは抜群で、咀嚼筋の鍛錬にも便利。『キャベツ一玉を抱え上げられ
last updateLast Updated : 2025-12-11
Read more

第25話 プロテインの滝を求めて! 探検、南の森!

 私が南の森に到着した頃には、既に空には満月が輝いていた。「ここが……、プロテインの滝があるという森」 馬車の御者さんに聞いたのだが、この辺りは人の往来が元々少なく、特に夜には魔物が出るので誰も近寄らないのだという。 私も引き返すように説得されたのだが、無理を言って森の手前まで送って貰ったのだ。「うぅ、暗い。でも、こんなときこそ……!」 図書館を出てすぐに馬車に飛び乗ったので、探索の準備も殆ど出来てない。けれど、私には暗闇を打ち払う秘密兵器がある。「――大佐の筋肉写真!!」 軍服の内ポケットから取り出したのは、とっておきのカイル大佐筋肉写真。しかも貴重な笑顔バージョンである! パァァァッ……!  写真からはシックスパックの谷間から放たれるような、神々しい光が溢れ出した。「ふふふ、これで夜の闇も怖くない!!」 木々の間に浮かぶ魔物らしき影も、光に照らされた途端に逃げ出していく。筋肉の輝きに怯えて去っていったのだろう。まさに完璧な作戦である。「……」 しかし、それでも夜の森には不気味な雰囲気が漂う。風が枝葉を揺らすたび、「フンッ!」「ハッ!」とまるで筋トレの掛け声のような音が響き、私はごくりと唾を飲む。「大丈夫、怖くない、怖くない……」 私は自分に言い聞かせながら発光する大佐の写真を握り締め、森の中へと足を踏み出していった。◇ ◇ ◇ それから私は森を歩き続け、随分と奥深くまでやってきた。「……何だろう、この視線」 見張られているような違和感を覚えるのは、恐怖心のせいだろうか。「でも、目的地に近づいている気がする……」 私がそう感じるのは、筋肉聖女見習いとしての第六感――などではなく、単に辺りの植物の枝葉が、妙にムキムキと逞しく隆起し始めたからである。  ついでに、落ちている石や岩も、何となく胸筋や上腕二頭筋などの形をしているように見える。「もう少し、……きっともう少しですよね、大佐!」 写真の大佐に話しかけつつ進んでいくと、やがて水音が微かに聞こえ始めた。 「やった、もしかして!!」 滝が近いのかもしれない。私の胸は高鳴り、足取りが早まる。  だが、その瞬間、頭上からけたたましい声が響いた。『ウッホォォォーーッ!!』 筋骨隆々の猿――バルキーモンキーが飛び降りてきた! 一体、二体……いや、十体以上!?   
last updateLast Updated : 2025-12-12
Read more

第26話 私は頑張るって決めたんです!!

 私とスライムたちに救出されたビルドさんは、プロテインの滝の岩陰で必死に呼吸を整えている。「ぜえ、ぜえ、はあ、……ああ、死ぬかと思った……」「ええと、お疲れ様です……?」 その様子を、私はしばらく遠巻きに眺めていた。 しかし光り輝く彼を見つめていたら、美少年写真集での不眠被害のことをじわじわ思い出してきた。  折角の機会なので、私は苦情を出しておくことにする!「そういえば、ビルドさん! 以前に大量に送り付けられてきた写真集は何だったんですか!!」「ああん? 素晴らしかっただろう??」「素晴らしく迷惑でしたよ!!」「なんだとぉ! あの写真集を見ても、まだ美少年の虜になっていないというのか!?」「なるか! ただただ眩しい安眠妨害装置でしたよ!」「くそっ。折角の僕の完璧な作戦が……」「作戦……?」「この世界は、転生者のお前の無意識により左右される。つまり、お前が筋肉推しから美少年推しに変化すれば、自然とここは僕の天下になるって寸法さ!」「ま、まさか、そのプロモーションの為にあの写真集を……!?」「そうとも! 特に水着特集には気合を入れたぜ」「うーん、努力の方向音痴さん!」「なにぃ!?」「何の説明もなくいきなり写真集が送り付けられても、恐怖と驚きしかないですよ!」「そうとも、僕の美しさに畏怖しな!」「ちがーう!!」 こうして暫し不毛な言い争いをしていたが、やがてビルドさんにも思う所があったらしく、キッとこちらを睨みつけてきた。「というか! 文句だったらこっちにもあるんだが!!」「え、ええっ!? なんですか??」「筋肉大佐の写真集! あれ、何なんだよ!!」「……? ど、どうして大佐の写真集のことを、ご存じで……?」「ご存じも何も、今、本屋であの筋肉写真集がバカ売れしてるんだぞ!?」「ひえっ!? いつのまに、そんなことに……!」「そして、……そして、だ――」 ビルドさんは忌々し気に拳を握り締めると、唇をかみしめた。「僕の信者もあの写真集のファンになり、全員聖バーベル教会を退会していった!!」「えっ。えええええっ!?」「どうしてくれるんだ!! 返せっ、僕の宗教組織を返せよおぉぉ!!」「なんかこう、本当に、ごめんなさい……?」「あいつら、筋肉大佐の下で働くって言って、全員軍に入隊しに行ったんだぞ!!」「ま、まさ
last updateLast Updated : 2025-12-13
Read more

第27話 決死の戦い!!

 私が言い放った言葉に、ビルドさんは少しだけ押し黙った。  けれど、すぐに高笑いを始める。「あっはっは! 既にそんなボロボロで、何が出来るって言うんだ! お得意の世界改変能力で、好き勝手してみるか?」「あのね!!」  その台詞に被せるように、私は声を張り上げる。「貴方は、世界は私の思い通りって言うけれど……。ぜんぜんっ、ぜーんぜんっ、そんなことないですからね!?」 頭の中がまとまらない。  それでも、思いだけはどんどん溢れてくる。「そもそも、筋肉は好きですけど……。だからってこんな筋肉ワールドを作りたいと思ったことなんてないですし!!」 ぴくり、とビルドさんの眉が動いた。「魔法だって、そんなに強くないし! 筋肉だって、私には沢山ある訳でもないし! 自分じゃ何もできなくて、迷惑ばっかりかけて……。それでも、大佐や、皆に、たくさんたくさん助けて貰って!!」「黙れ……っ!!」 私の言葉を拒絶するように、ビルドさんが片手を振り上げた。 再び魔力が彼の手に集まっていき、周囲にビリリと電気を帯びた風が巻き起こっていく。  だけど、怯むわけにはいかない。「何とかこの世界にしがみついて、生きてるの!! 楽しいけど、何も考えていない訳じゃないっ。悩むことだってある! 貴方には、おままごとに見えるかも、知れないけど――ッ」「うるさい、うるさい、うるさいっ!!!」 叫んだビルドさんから私へ向かって、電気を纏った鋭い刃のような風が無数に撃ち込まれる。   「……っ!!」 筋肉スライムたちが壁となって守ってくれた。  けれど、彼からの攻撃は止むことなく続けられる。 私は追撃を避けながら、必死に岩場へと這い上がった。「ビルドさん!!」    彼を何とかして止めようと、その足元を狙って私はファイヤーボールを放つ。  だけど、あっさりと弾き返されてしまった。「お前に僕の気持ちが分かるか!? 自分が世界の中心だと思って生きていたのに……。ある日突然、その居場所を奪われた僕の気持ちが分かるか!?」「……っ、わかりません! 完全には、わかって、あげられませんけど……!!」 私は諦めずに魔法で攻撃を続ける。 残念ながら、技量の差は圧倒的だ。  それに私は彼からの魔力弾の直撃を受けて、既に体は限界に近い。  彼に与えるダメージより、こちらが追
last updateLast Updated : 2025-12-14
Read more

第28話 予想外の事態です!!

 ビルドさんがいなくなったプロテインの滝は、すっかり静けさと穏やかさを取り戻した。「や、やった! 勝った……!」 私は、へなへなとその場に座り込む。『ぷよよっ!』 スライム大佐も分裂して、もとの筋肉スライム軍団へと戻っていく。 彼らは勝利を祝うように、私の周りでぽよぽよ飛び跳ねた。 「みんなっ、無事でよかった! 助けてくれて、ありがとう!!」 状況の整理はひとまず脇に置いて喜び合う私たちの背後から、声が響く。「見事だ、コハル――」「……??」 振り返ると、そこには本物のカイル大佐がいた。「ふぇっ!? た、た、大佐、なんで此処に……!?」「君の帰りが遅いから、王立図書館へ迎えに行ったんだが……。軍に戻らず、一人で南の森に向かったという情報を得たのでな」「探しに来てくれたんですか?」「ああ。森の中で彼らに出会い、道案内して貰ったのだ」「彼ら??」 首を傾げていると、バルキーモンキーたちが木陰から姿を現した。「ひょええっ!?」 私は思わず身構えたが、モンキーたちはカイル大佐の傍で大人しく筋トレに励んでいる。 その姿を見て、大佐は感慨深そうに頷いた。「この者たちは、なかなかいい筋肉を持っているな!」『ウホオオォーッ!!』「き、筋肉でコミュニケーションが成立している……」 その様子に嫉妬したのか、筋肉スライムたちは構って欲しそうに大佐の周りを飛び跳ねる。『ぽよよっ!』「勿論! 我が弟子たちも、素晴らしい活躍だったぞ!!」『ぽよぽよ!』 スライムたちは、褒められて満足したようだ。「それにしても、大佐、いつからいらっしゃったんですか? 全然、気が付きませんでした……!」「今来たところだ。助けに入ろうと思ったら、ビルドが吹き飛ばされていったからな」「そうだったんですね! でも、活躍が見て貰えてよかったね、スライムちゃんたち!」 私は筋肉スライムたちに微笑みかける。「……」 そして、あることに気が付いた。「ええと、大佐は、今来たところなんですよね?」「ああ、そうだ」「筋肉スライムちゃんたちが、ビルドさんを吹き飛ばすところは見たんですよね?」「素晴らしい筋肉のこもった一撃だった!」「あの、その前の……スライムたちが、スライム大佐に変身するところは見ましたか?」「うむ。筋トレの成果で、あんなことが出来るとは
last updateLast Updated : 2025-12-15
Read more

第29話 国王様にご報告です!

 私のベッドの周りには、バルク3世様、サーロイン大臣、カイル大佐、キンバリー王女様、侍女の皆さん、筋肉スライム達、バルキーモンキー達がずらっと並んでいる。「……お、多くないですか!?」「いやぁ、みんなコハルの話を聞きたがってねぇ」「スライム達やバルキーモンキー達が王城に入るのは、大丈夫だったんです?」「良い筋肉だったからね! 私が許可したよ!」 バルク3世様が、さわやかな笑顔でそう言った。国王様が許したのなら、まあ良いか……。「コハルおねえちゃん、お話、聞かせて聞かせてー!!」 キンバリー王女様が、ベッドの傍まで駆け寄ってくる。  私はその愛らしい姿に癒されつつ、ゆっくりと昨夜の出来事を話し始めた。  ――プロテインの滝の存在を知り、南の森へ出かけたこと ――無事に目的地にたどり着いたが、襲撃を受けたこと ――ピンチに陥ったが、突然不思議な力がみなぎってきて勝利できたこと 「なるほど。コハルの祈りに応えて、スライム達の筋肉がパワーアップしたということかな?」 話を聞いたビルド3世様は、興味深そうに私に問いかける。「どうなんでしょうか。と、とにかく、あのときは必死で」 そういえばあのとき、何かとんでもないことが起こっていたような……。「あっ!!」「……?」「そうだ、あのとき! スライムちゃん達の、筋肉の声が聞こえてきたような……!」「なにっ!?」 驚きと共に、大佐が身を乗り出す。「それは本当か、コハル!?」「は、はいっ! もうフラフラだったので、幻聴の可能性もあるんですが」「筋肉は何と言っていたんだい?」「それは――、『躍動したい』『輝きたい』と……!」『ぷよよっ!』 私の言葉を肯定するように、筋肉スライム達はぽよぽよ飛び跳ねる。「ふーむ。なかなか信憑性のある台詞だな……」「そ、そうなんですか??」「いかにも、筋肉が言いそうな言葉だからね!」「……??」 なんとも奥の深い筋肉の世界だ。しかし、この国屈指のエリートマッスルであるバルク3世様とカイル大佐がそう言うのなら、そうなのだろう。……多分。「今も筋肉の声は聞こえるの?」「いえ、あの一度きりで、今は全く」「そうか。何か特別な時にだけ、力が発揮されるのかもしれないね」「だが、コハルの力が本物であることは間違いない。私もこの目で見たからな」「大佐…
last updateLast Updated : 2025-12-16
Read more

第30話 地獄の筋肉鬼ごっこ!!

「ひいいっ」 私は涙目になって、木陰に身を潜めていた。その周辺を、ノースリーブの軍服を着たマッチョ軍人たちがうろうろと徘徊している。「ど、どうして、こんなことに……」 ――そう、この話は数時間前にさかのぼる。◇ ◇ ◇「新人研修の最終訓練ですか……!」 カイル大佐と私が軍の新人研修に合流してから、1週間ほどが経過していた。 朝の挨拶代わりのスクワット敬礼に始まり、懸垂行軍、バーベルシールド演習、腕立て射撃と、その訓練メニューは苛酷なものだった。 しかし新人たちは誰一人弱音を吐くことなく、むしろ我先にと訓練をこなしていった。  流石、もともと聖バーベル教会に入信していたマッスルエリートたちである。 ちなみに彼らは自慢の上腕二頭筋を見せつける為、いつの間にか軍服の袖を勝手に切り取っていた。  その後、軍服を再支給する話も出たが、「どうせまた勝手に切りそう」という理由でこのまま放置されている。 ――そんなわけで、ついに研修最終日を迎えることになったのだ!「うむ。最後は今までとは違い、実践的な演習を行う!」 演習場である森の中、新人たちの前でカイル大佐は腕を組みつつ説明を始めた。「演習は二チームに分かれておこなう。簡単に言えば鬼ごっこのようなものだ。鬼はささみチーム、逃げ手はブロッコリーチームとする!」(ネーミングが筋肉食材……)「私はこの森の奥にある岩山で待っている。ブロッコリーチームの一人が私に辿り着ければ、逃げ手の勝ち! それまでに全員捕獲すれば、ささみチームの勝ちだ!」「おお、なんかちょっと面白そうですね。私は捕獲の判定員とかすれば良いですか?」「いや、この演習にはコハルたちも参加してもらう」「ひょえ!? 私もですか?」「ああ。人数が多い方が訓練になるし、チームワークも磨けるからな!」「な、なるほど。あれ、コハル”たち”って……?」「勿論、彼らのことだ!!」 カイル大佐の言葉と共に、森の木陰から筋肉スライム達と、バルキーモンキー達が飛び出してきた。「えええっ、こ、この子たちも参加するんですか!?」「うむ。素晴らしい筋肉を期待しているぞ!!」 元聖バーベル教会の教徒、もとい軍の新人さん達から大きな歓声が上がる。  私は筋肉ムードで盛り上がるこの場の雰囲気におされて、一切のツッコミを封じられた。「さあ、くじ引き
last updateLast Updated : 2025-12-17
Read more
PREV
12345
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status