All Chapters of 転生したら推しの軍人様が「筋肉信者」になっていたんですが!? ~そして私は筋肉聖女~: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話 再会! そして暗躍する陰謀の影!

 謎の大爆発に吹き飛ばされた私とカイル大佐は、演習場から遠く離れた森の中に落下した。 ――ドサドサドサァッ!! 私はその衝撃に身構えたが、痛みを感じることは無かった。「あれ、痛く……ない!? ……はっ!!」 気が付けば、私は半裸のカイル大佐に抱きかかえられていた。いわゆるお姫様抱っこの状態である。  大佐に守って貰ったおかげで、無事に怪我無く着地できたのだろう。「大丈夫か、コハル!」「ひょえっ!? 無事ですっ! あ、あああ、ありがと、ございま……!?」 真面目な顔で訊ねてくる大佐に、私は真っ赤になって固まる。 感謝の気持ちでいっぱいではあるが、それ以上に今の状況は心臓に悪い。  好きだと自覚してしまった大佐に抱きかかえられているだけでも、ドキドキしてしまうのに。 密着している大佐の上半身の服は、当たり前のように弾け飛んでいた。いや、多分、先程の爆発で吹き飛んだんだと思うけれど。   「大胸筋が……腹筋が……まるで筋肉の宝石箱や……ぴぃ」 私の脳はオーバーフローを起こし、意味不明な言葉を呟きながらがくりと目を閉じる。「コハル、本当に無事なのか!? どうした、コハル、コハル――ッ!!」 大佐は慌てて、私の身体を揺さぶる。  そんなやりとりに割り込むように、聞き覚えのある声が響いた。「……なあ、そろそろ、俺たちに気づいて貰って良いか?」「むっ?」 「ふぇっ?」 その言葉に反応した私たちが顔をあげれば、そこにいたのは十数人の軍人達。  ただし、軍服はダンベリアではなく、グルメシアのものだ。 そしてその中心で腕を組みながら困惑顔なのは、赤髪の――「グルメシア精鋭軍の、リーダーさん!」「ハバネロだ。それに、今はもう精鋭軍じゃない」「えっ、どういうことですか?」「とりあえず、降りてきてくれ」「降りる、って、何から……」 私が不思議そうに首を傾げながら足元を見ると、そこには巨大なマッスルエレファントが倒れ伏していた。「ひえええっ!? なんですかこれは!?」「どうやら落下の衝撃で倒してしまったようだな」 カイル大佐は静かにそう言いながら、私を抱きかかえたまま地面へと降り立った。「わわっ、あ、あの、もう大丈夫です! 歩けますっ!」 私は慌てふためきながら大佐の腕から解放してもらい、ほっと一息つく。  そうして私たち
last updateLast Updated : 2025-12-18
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第32話 ぐんぐん育つ、植物の秘密!

 軍の新人研修が終了して数日後、私とカイル大佐はダンベリア国の研究施設を訪れていた。  『プロテインの滝の水の効果が判明したので、報告したい』という手紙を受け取ったからだ。「お時間を頂き、ありがとうございます。カイル大佐、筋肉聖女さま」「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます!」「私は主任研究者のプロティーナです。さあ、どうぞこちらに」 眼鏡をかけた白衣姿のマッチョ男性研究者――プロティーナさんに案内されて、私たちは研究施設の奥へと進んでいった。  研究道具と筋トレ道具が同列に並ぶ棚のひしめく廊下を抜けて、辿り着いたのは開けた場所。「わあっ!」 「ほう、これは……!」 私とカイル大佐は、思わず感嘆の声を上げた。    目の前に広がっているのは、広大な畑だ。  研究施設の裏庭だと思われるその場所に、青々と作物の育った畑が広がっていた。「凄いですね。ここではいつも植物の研究を行っているんですか?」「いえ。ここは元々、研究員たちの筋トレ広場だったんですが……」(研究員たちの筋トレ広場??)「プロテインの滝の水をお預かりしたので……。試しにその水で花でも育ててみようということになりまして。その、第一号がこちらです」 プロティーナさんが指で示すが、其方には柱があるばかりで植物はない。私は首を傾げた。「……? あの、お花がどこにも見えませんが……」「いえ、その、上です」「上……?? うわぁっ!?」 私は腰を抜かしそうになった。 見上げた先には、巨大な、私の顔程の大きさのマッスルすみれの花があった。  柱だと思っていたのは、太く成長した植物の茎だったのだ。「ひええっ。な、なんですか、これは!? 私の知っているマッスルすみれは、もっと小柄な花なんですが……!」「はい。それが、育成中にプロテインの滝の水を与えたところ、一晩でここまで成長しまして」「一晩で!?」「うぅむ。これは……良い筋肉だな!」「スミレにも筋肉があるのでしょうか……」 カイル大佐の言葉に私は困惑していた。  しかし、当のマッスルすみれは風に揺られて、満足げにマッスルポーズをとっている……ように、見えた。「そんなわけで、このプロテインの滝の水には、植物の成長促進や発達を強化させる効果があると考えまして。他にも色々と試してみたのです。そうして出来たのが、
last updateLast Updated : 2025-12-19
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第33話 食事会のメニュー作りを頑張ります!!

 グルメシア研究所から帰還してから、私は和平食事会の準備に尽力していた。 日中は軍の仕事をこなしつつ、休みの日や空き時間にはメニューの研究をして、小さいながら畑も作って植物を自分で育ててみたりもした。 「うーん」 そんなある日、私は軍の拠点にある自室で、机の上にノートやメモ書きを広げたまま腕を組んでいた。「メインディッシュが決まらない……!」 鬱憤を発散するように、わーっと叫ぶ。  その声に驚いて、近くで遊んでいた筋肉スライム達がぽよぽよ転がっていった。 新人研修以降、筋肉スライム達とバルキーモンキー達は、すっかり軍に居ついて馴染んでいる。筋肉による交流の効果か、他の軍人さんとも仲良くやっているらしい。「わわっ、ごめんね!」 スライム達を拾い上げると、私は小さく溜息を吐いた。「部屋の中で考え込んでいても、煮詰まっちゃうな……。お散歩がてら、畑でも見に行ってみよう!」 私は数匹のスライムを連れて、自分の作った畑へと向かった。「外の風はやっぱり気持ちいい!」 軍の本拠地の裏手を耕して作った畑には、アイアン芋、マッシブキャベツ、ショルダートマトが元気よく育っている。  水を汲んで生きたジョウロの中に、プロテインの滝の水を数滴たらして、私は日課となった水やりを行った。 その傍らで、バルキーモンキー達はスクワットしながら、畑の雑草取りに勤しんでくれている。「みんな、ありがとうね! お野菜たちも、立派に育ってきたなぁ」 少し離れた場所には、マッスルベリーやバーベル葡萄を育てている果樹園もある。  一生懸命お世話をしているとはいえ、ほんの数日でここまで成長してしまうのは驚きである。「これだけの材料があれば…! サラダに、スープに、デザートのフルーツ盛り合わせも出来そう。でも、やっぱりお魚やお肉がないと――」 「どう思う?」とスライムちゃんに問いかけても、彼らはぷるるんと飛び跳ねるだけだ。  その姿に癒されつつも、水やりを終えた私は畑の傍の草原にどさりと寝転んだ。 仰向けになって空を見上げる。  雲がのんびりと流れていく、のどかな光景である。「マッスルすみれは、花弁も葉も茎も食用に使えそう。サラダや、デザートの彩りに。アイアン芋はポタージュスープにしながら、具もごろごろと入れて歯ごたえを……」 ぶつぶつと呟きながら、私は次第に睡魔
last updateLast Updated : 2025-12-20
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第34話 筋肉風邪の恐怖!!

 みんなの協力を得られるようになってから、和平食事会の準備は順調に進んでいった。  今日も軍の本拠地のキッチンで、私は料理に励んでいる。「肉のメインは、やはりバルクチキンの中に沢山の野菜を詰め込んで蒸した、ローストチキン風の料理が良さそうですね! これならお腹いっぱい、栄養満点、美食っぽさもばっちり!! ちょっと前回よりも、ソースに工夫をしてみようと思っていまして……」    収穫してきた野菜を手際よく洗いながら、後ろで待っているはずの大佐に声をかけるが、返事がない。「……大佐?」 私が不思議そうに振り返るのと同時、いつも堂々とした姿で立っている大佐がぐらりと膝を付き、倒れ込むのが見えた。「えっ、大佐……? 大佐っ!!」 私は反射的に、彼の方へと駆け寄る。「く……、これは……」 大佐の苦し気なうめき声が聞こえる。私が彼の手をとった、その瞬間。 ――パァンッ!! カイル大佐の軍服の上半身が弾け飛んだ。つやつやとした筋肉が露出する。そして……、「うっ」 がくりと、大佐は気を失った。  私は意味も分からず彼を抱き寄せると、混乱しながら叫んだ。「たっ……、大佐ああぁぁっ……!!」◇ ◇ ◇「筋肉風邪ですね」 軍の医務室まで、私は何とか無理やり大佐を担ぎ込んだ。 半泣き状態で巨漢を引き摺ってくる姿に困惑されたが、すぐに事情を察した軍医さんによってカイル大佐は引き取られ、ベッドに寝かせて貰うことが出来た。 そうして一通りの診察を終えた後、軍医さんは冷静な声でその診断結果を伝えてくれた。「筋肉風邪って、お城の侍女さん達がかかっていた……?」「まあ、このあたりではよくある病気ですね。カイル大佐が罹患するのは珍しいですが……」「あの、大佐は! 大佐は大丈夫なんですか!!」「大丈夫ですよ、ただの筋肉風邪ですから。数日、療養すれば元に戻ります」「よ、良かったぁ……!」 私は安堵と共に脱力した。「これ、治療の手引きですから、筋肉聖女さまにお願いして良いですか? 私はカイル大佐不在のときの軍の動向について、上に確認してきますので……」「えっ!? いや、私、聖女と言っても、医療行為は出来ませんが……!?」 慌てふためく私に、軍医さんはふっと笑って顔を近づけてきた。  ちなみに軍医さんは黒髪の女性で、素晴らしい筋肉の持ち主のマッチョ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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第35話 大佐とお話しました!

 カイル大佐の部屋は、ひっそりとした緊張感に包まれていた。  彼はベッドに寝ころんだまま、私はその傍らの椅子に腰を下ろして息を飲んでいる。 やがて、大佐は静かに話し始めた。「君はこの世界の人間ではないと、以前に言っていたな」「は、はい。そうです」「もしかして、この世界について、何か知っているのではないか?」「……っ!」 突然の核心的な質問に、私は思わず膝の上のこぶしを握り締めた。  どうしよう。なんて答えよう。 ここがゲームの世界だって伝えてみる?  そうすれば、ビルドさんのことも相談しやすいかもしれない。  きっと大佐は信じてくれると思う。 ――だけど、そうしたら、今の大佐との関係は変わってしまうのでは? 大佐は実直な人だ。  この今の大佐との友好的な関係も、全部ゲーム由来のものだと知られたら何と思うだろう。 私はこの世界のことを知っていたのに、ずっと黙っていた。  それは狡いことなのかもしれない。  ならばせめて、早く伝えるべきだ。ちょうど今、大佐がきっかけを作ってくれた。    それなのに、それなのに。 ――嫌われたくない。 自覚してしまった恋心が、私を臆病にしてしまう。「あ、あの……」「私は幼い頃から、ずっと不思議な夢を見ていた」 言葉に詰まった私を助けるように、大佐がぽつりと口を開いた。  私はその台詞に瞬く。「不思議な夢、ですか?」「そうだ。夢の中では、いつも世界が少しずつ違っていた。だが、大抵は激しい闘争の中にあった」「闘争……」「あるときは大勢が死に、あるときは私自身も命を失った。怪我は日常茶飯事で、国を失くしてしまうことすらあった」 私はハッとする。  大佐が言っている”夢”とは、もしかして、ゲームで繰り返された別シナリオのことなのかもしれない。 カイル大佐のシナリオは基本的には彼の真面目な性格も相まって、シリアスな話が展開されていくことが多い。勿論、その世界と今の世界は別物だ。  だが、その以前の世界の記憶が、夢という形で残っているのだとしたら――「私はその雑念を振り払うように、筋トレに励んだ」「そこはぶれていなくて安心しました」「そんなある日、また私は夢を見た。だが、その日の夢は恐ろしいものでは無かった。皆が笑って、楽しく過ごす夢だった。死んだ者も、怪我した者もいない」
last updateLast Updated : 2025-12-22
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第36話 ピンチ!? 食糧庫襲撃!

「それにしても急な決定でしたね……!」 王宮から伝えられた和平食事会の開催日は、なんと連絡から1週間後だった。  あまりに突然の決定に驚いたが、どうやらこれはグルメシア側からの希望らしい。「ビルドがグルメシアに入り込んでいるなら、これは食事会を準備不足で失敗させようという策略かもしれないな」 冷静に分析するカイル大佐の言葉に、私はふふんと胸を張る。「もしそうだとしても、ビルドさんの思い通りにはなりませんよ! 皆さんのおかげで、食事会の用意はばっちりですから!」 私の言葉に、大佐は力強く頷く。「ああ、必ず成功させよう! 万が一に備えて、食糧庫の警備も強化しないとな」「はいっ!」 こうして軍の管轄の広場の一角に食糧庫が設けられ、食事会当日まで、ダンベリア兵が厳重に管理することになったのである。◇ ◇ ◇ 食事会を数日後に控えた夜、私は料理の仕込みの為に、食糧庫へ材料を取りに向かっていた。   「お疲れ様です!」「筋肉聖女さま、こんばんは!」 「今日も平和だぜ」 入口に数名いる見張りの兵士さんに挨拶をする。 万が一に備えて食糧庫の警戒態勢を強めたものの、彼らの言葉通り、食糧庫はここ数日、特に何事もなく平和だった。「よーし、私は料理に集中しよう! 下味を付けておくのは……」 広い食糧庫の中には、野菜や果物、処理された肉や魚が揃っている。  気合を入れ直した私が食材を集めていると、外から叫び声が聞こえてきた。「誰かーっ!! 敵襲、敵襲!!」「……っ!?」 私は手にしていた野菜を置いて、跳ねるように駆けていく。  食糧庫の裏口から外に出ると、倒れていた見張りの軍人さんの姿があった。「大丈夫ですか!? あっ……!」 彼を助け起こしながら顔をあげると、他に配置されていた軍人さん達も倒れているのが見える。「なんてことを……まさか!!」 食糧庫の入口の方から、怒声交じりの大きなざわめきが響く。  私は倒れている軍人さんを寝かせ直すと、そのまま喧噪の方へと走っていった。 騒ぎの中心まで辿り着いた私の目に飛び込んできたのは、ダンベリア兵とグルメシア兵、十数人の乱戦状態だ。 そしてグルメシア側の指揮を取っていたのは――「やっぱりあなたですか、ビルドさん!!」「くくくっ、きたか、転生者!! 今は筋肉聖女と呼んだ方が良いか?」
last updateLast Updated : 2025-12-23
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第37話 炎の矢の絶望!

 和平食事会のために準備された食糧庫をめぐって、私たちダンベリア兵と、ビルドさん率いるグルメシア兵は対峙している。  すでに乱戦状態と化していた戦場で、私は叫んだ。「皆さん、私たちの目的は食糧庫の防衛です! 全員で協力して、筋肉の盾を――!!」「わかった!!」 「任せろ!」 「筋肉が最強の防具だと見せつけてやりましょう!」 私は、国王様の護衛任務のときにも使用した技を提案する。  ダンベリア兵の仲間たちはそれに頷き、ガッチリと筋肉を寄せ合いスクラムを組んだ。「大佐の役割は、私が果たします!」 筋肉の盾の中心に位置する私は、気合を入れて力をこめる。  いまだに筋肉聖女としての実感は完全ではないけれど、力の使い方は少しずつ覚えてきた。 とにかく強い思いが、皆の筋肉を強くしてくれる気がする。  だから私は、ひたすらに願う。全ての筋肉が輝き、ハッピーエンドに導いてくれることを!「筋肉は裏切らない! 守るは筋、砕けぬは肉!! いきますよ、皆さん――筋肉の盾!!!」「「「「「ふんっ!!」」」」」 まばゆい光が私たちを包み込み、食糧庫を守るように輝くバリアが発生した。 グルメシア兵たちはその圧倒的な筋肉パワーに狼狽したらしい。多くの者は圧倒され、その場から動くことすら出来なくなる。  何人かは果敢にそれでも攻撃をくわえようとするが、筋肉の盾に届くことすらなく投擲物は消滅した。「ぐぁっ!? なんだ、この暑苦しい光景は! ええい、おまえたち怯むな! こんなもんに負けるんじゃない!!」  指揮を執っているビルドさんは怒鳴り声をあげると、美少年パワーを全開にして、鮮烈な光を発生させて対抗してきた。「うわああっ、目が、目があっ!?」 「ああ、あの不眠の夜を思い出す……!」 「なんだか懐かしい感じがします、元教祖様ぁ!!」 単純な眩しさに目を焼かれる者。  美少年写真集での不眠のトラウマを呼び起された者。  かつての聖バーベル教会の日々を思い出し感傷にひたる者。 様々な方向で、ビルドさんの攻撃は、ダンベリア兵の集中力を削いでいく。「駄目です、皆さん、集中してください!!」 私は必死に呼びかけるが、筋肉の盾の光が次第に弱まっていく。「今だ、いけえええっ!!」 ビルドさんの突撃の合図で、我に返ったグルメシア兵たちが次々に向かってくる。
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第38話 希望のマッスルパンチ!!

 大切な食糧庫に巨大な炎の矢が迫る。  食い止めようと飛び出したが間に合いそうにない絶望の中、私の視界に飛び込んできたのは――「カイル大佐――っ!!」 周囲の木々をなぎ倒す勢いで、此方へと駆けてくるカイル大佐の姿だった。「諦めるな、コハル!!」 その言葉に勇気が、力がわいてくる。「筋肉の強さは、心の強さ! みんな、コハルへ力を送るんだ!!」 「「「おーっ!!」」」 カイル大佐の号令で、皆が私に気合を送ってくれる。   (頑張れ――!) (筋肉聖女よ、負けないでっ…!) 聞こえる……、筋肉の声が、聞こえる……!!「うわあああああっ!!!」「何っ、何だあの力は……!!」 ビルドさんの叫び声は、激しく巻き起こる風による轟音でかき消される。   「大佐直伝、マッスルパンチ!!」 私は、炎の矢に届かない右腕を振りぬいた。  そこから激しい衝撃波が発生し、炎の矢を吹き飛ばす。「やったー!!」 食糧庫が守られたことに、ダンベリア兵から大きな歓声が上がる。  グルメシア兵も予想外の展開に狼狽え、どう動けば良いのか分からずにいるようだ。 折角の好機を奪われたビルドさんは、その場にがっくりと膝を付いた。「くそっ! 何故だ!! そもそも、どうしてあの筋肉バカが此処に――!!」「やはりこいつはお前の差し金か!」 忌々し気に顔を歪めるビルドさんへ声をかけたのは、気絶したゴリーノさんを抱えた赤い髪の男……元グルメシア精鋭軍リーダーのハバネロさんだ。「んなっ!? 貴様がどうしてここに!」「お喋りは後だ!!」 二人の会話に割り込むように、到着したカイル大佐が拳を振りぬく。「ふんっ!!!」 本家のマッスルパンチはやはり強力だった。拳が直撃したビルドさんは垂直に空へと吹っ飛び、10秒くらいして戻って来て地面に激突した。痛そうだ。  そして、そのパンチの余波による衝撃波で残りのグルメシア兵もバタバタと倒れて気絶していった。 こうして、食糧庫の攻防は、ダンベリアの勝利で終結した。「あっ……と、とりあえず、捕獲しましょう! これ以上、暴れられると困りますので!」 私はハッと我に返ると、ダンベリア兵の皆さんにお願いする。  皆が頷いて作業に入ってくれるのを確認して、大佐とハバネロさんの元へ駆け寄った。「大佐っ!! 戻って来てくれたんで
last updateLast Updated : 2025-12-25
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第39話 和平食事会、開催です!!

 ビルドさんによる食糧庫襲撃事件が起こってから、私たちはより警戒を強めて過ごした。 しかし幸いなことに、あの日以降は特に問題が起こることはなく、無事に和平食事会の日を迎えることになったのである。「いよいよですね、大佐!」 私たちは無事に会場への食料搬入作業を終えて、今は調理人さんたちが料理に励んでくれている。「ああ。会場の警備は、軍が責任を持っておこなう。コハルは食事会に集中してくれ」「はいっ!」 この食事会は本来、主催側であるダンベリアの領地で行われるのが普通である。しかしグルメシアが指定してきた会場は、ダンベリアとの国境付近にあるグルメシア領の大聖堂だった。 おそらく和平の申し出を完全には信用していないグルメリアス王が、ダンベリア領に入ることに抵抗があった為だろう。(でも、どこであろうと開催できただけで十分! 絶対に成功させてみせる!!)  今日は双方の国の王や側近たちが一堂に会して、ダンベリアの用意した食事を囲みながら話し合いが行われる予定だ。  私は食事会の発案者兼「筋肉聖女見習い」として、振舞われる料理の説明などを行うことになっていた。 だから大佐はいつもの軍服だが、私は王宮で用意された白いドレスをまとっている。大きな役割を任されていることを改めて実感し、背筋が伸びる思いだ。(緊張するけど……、一生懸命準備したし、きっと大丈夫!) 戦争なんてしなくても食糧難は解決できるし、皆が幸せになれるとグルメシア国王に伝えなくてはいけない。私は料理や食材について記した分厚いメモを読み返しつつ、気合を入れ直す。 やがて、大聖堂の大広間には豪奢な長机が並べられ、その上を真っ白なテーブルクロスと食器たちが彩っていく。  会の開始時間が迫ると、大佐は警備の指揮の為に大扉の付近へと移動した。 各国の随行団も会場に入って着席していく。  長テーブルの東側にダンベリア国、西側にグルメシア国の人間がずらりと並んだ。    会場の雰囲気はどこかぎこちなく、微かな緊張感が漂っている。 「グルメシア国王、ダンベリア国王、ご入場――!!」 大きな声でアナウンスが響いた。  東西の扉が開かれ、両国の王が姿を現す。(あれがグルメリアス王!) 私は初めて見る相手国の王の姿に、息を飲んだ。(か、完全にやつれている……) 元はふくよかな方だったと話
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第40話 大波乱! ビルドさんの策略!!

 最初はピリピリとした雰囲気だった食事会も、すっかり和やかな社交の場へと変化していた。  グルメリアス王も料理を気に入ってくれたようで、ここまで出されたものは全て完食されていた。「ああ、このように楽しい食事は、いつ以来だろう」 会話の最中、そう呟くグルメリアス王の言葉に、私は静かに耳を傾ける。「料理も勿論だが、皆が十分な量の食事を笑顔で口にしている。食材自体はどれも素朴なものであるのに、どうして……」「それはね、きっと、この食事に思いやりがつまっているからだよ」 バルク3世様が、グルメリアス王へそっと答える。「料理を作った人、食材を準備した人、会場を整えた人……。皆の力が一つになって、この食事会が生まれたんだ」「私だって国のことを思っている! 一番に!!」「それは分かるよ。私も同じだ。でも、一人の力でできることは少ない」「……」 バルク3世様の言葉に、グルメリアス王は押し黙る。「そして一人で思いつめれば、壁にぶつかってしまうこともある。正しいことをしようとしていても」 そう語りかけてから、バルク3世様は大真面目な顔で付け足した。「筋トレだって、休憩も無しに無暗に鍛えていては、体を壊してしまうからね!!」 その姿にグルメリアス王は目を丸くしてから、小さく笑う。  この食事会で、初めて見せた笑顔だった。「はは、貴殿は本当に筋肉ばかりだな。ここまでくると……、感心するよ」「お、良いね! グルメリアス王も一緒に鍛えるかい?」 バルク3世様が本気の顔で目を輝かせて、2メートルのマッチョな巨体でグルメリアス王に迫る。「いや、それは結構……」 いけない!   折角良い雰囲気だったのに、バルク3世様の筋肉暴走が始まりかけている!!「ええと、そろそろ! そろそろ、メインディッシュですよ」 私は話題を変えようと、次の料理を運んできて貰うことにした。「お肉のメインディッシュは、バルクチキンの野菜たっぷりスタミナ蒸しです! 高たんぱくのバルクチキンに10種類の野菜を詰め込んで、しっとりと蒸し上げました。マッスルベリーのソースを添えています」 金属製のフードカバーを被せられた大きな皿が、一人一人に並べられていく。  辺りには食欲を誘う肉の良い香りが漂い、会場は期待感に包まれた。「さあ、どうぞ――!」 私の言葉を合図に、次々とフードカ
last updateLast Updated : 2025-12-27
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