一方で、私の行動にコメント欄は大騒ぎになった。【まじか、何かを見逃したのか?ゲームが始まったとき、泉様は地面に這いつくばってゴミ漁ってたから、腹減ってるのかと思ったぜ】【お前は悪くない。悪いのは、配信者がぜんぜんアップにしなかったことだ。俺たちも彼女が新聞を持ってるなんて見えなかったから、ゴミを食べてるんだと思ってたよ】【これはまさに反省どころだな。なんであの新聞、ド近眼の泉様は見えたのに、俺たちは見えなかったんだろうな】【彼女は目が悪いけど、俺たちにも増して事の真相を見抜いていたってことさ】29階にいた双子の姉弟は、18歳の誕生日の前日に、実の父親に屋上に呼び出された。そして、父親とその愛人に突き落とされてしまったんだ。彼らの父親は婿養子だったから、ずっと妻の財産を狙っていた。それで、子供たちが成人して財産を相続するのを防ぐために、愛人がこの恐ろしい計画を考えついた。そして、父親もそれに賛同したんだ。姉弟が亡くなってから3年後、父親と愛人には死刑判決が下り、すぐに刑が執行された。そして彼らの母親は会社をたたみ、2人の子供の写真を胸に、世界中を旅し始めた。出してもらったお茶を一杯飲み干すころには、物語も終わりを迎えていた。双子の姉弟は涙を浮かべて私を見つめ、私が立ち上がるのを見送った。29階のドアを出たあと、私はふと彼らの服についたほこりを手で払ってあげた。「これからは、たとえここであったとしても、ちゃんと『生きる』んですよ。お互いを想い続けていれば、きっといつか、あなたたちのお母さんと再会できますから」姉弟が力強くうなずくのを見て、私は満足げに下の階へ向かった。ほどなくして、私は28階にやって来た。この階のプレイヤーも、とっくにやられてしまっていた。そしてアイテムの力に屈したのか……じゃなくて、私の美しさに魅了されたからか、この階の化け物は、私がドアをノックした瞬間にドアを開けて、恭しくカードを差し出してきた。彼女は派手なコスプレ衣装を着て、濃いメイクをしていた。でも、体はどこも悪くなさそうな若い女の子だった。だが、私はそれを見ても少しも驚かなかった。だって、彼女は事故で死んだんじゃない。睡眠薬を飲んで自殺したんだから。亡くなったのは19歳のとき。まさに青春の真っ只中だった。
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