「美月さんは、僕のものです」壁に押し付けられた。身体が震える。蓮くんの両手が、私の両肩を掴んでいる。逃げ場がない。「ずっと、そう決めてたんです」蓮くんの手が、私の髪に触れる。「最初に会った時から。美月さんは、僕だけのものだって」涙が溢れてきた。怖い。この人は、私が知っている蓮くんじゃない。「美月さん、泣かないでください」蓮くんが優しく微笑む。その優しさが、何よりも恐ろしい。「僕が、ここにいますから」「助けて……」小さく呟く。「誰も来ませんよ」蓮くんが私の涙を拭う。「この部屋、防音しっかりしてるじゃないですか」「やめて……」「二人きりで、ゆっくり話せますね」バッグが、肩から滑り落ちた。中から、スマホが床に転がる。「スマホ、取りたいんですか?」蓮くんがそれを拾い上げた。「警察に電話?それとも、康太に?」「返して……」「どっちにしても、させません」蓮くんがスマホを自分のポケットに入れる。「美月さん、わかってください。僕は美月さんを愛してるんです」「これは……愛じゃ……」「愛ですよ」蓮くんの目が、じっと私を見つめる。「僕は美月さんを、誰よりも愛してる。だから、誰にも渡したくない」「蓮くん……」「美月さんだけを見てきました。ずっと。美月さんが何を食べるのが好きで、何色が好きで、朝が弱くて、コーヒーに砂糖を入れないことも。休日の過ごし方も、好きな本も、全部」蓮くんの声が、どんどん低くなる。「美月さんの全部を、知ってます」「それは……」「だって、好きだから」蓮くんが微笑む。「好きな人のこと、全部知りたいって思うの、普通じゃないですか」「普通じゃ……ない……」「普通ですよ」蓮くんの手が、私の首筋に触れる。冷たい。「美月さんは、僕だけを見ていればいいんです」「やめて……」「他の男を見る必要はない」「康太!!」叫んだ。ありったけの声で。「康太!!助けて!!」蓮くんの手が、私の口を塞ぐ。「静かにしてください」蓮くんの声が、冷たい。「誰も来ませんから」涙が溢れて、止まらない。もう、駄目だ。誰も、助けに来ない。五年前私が柊木蓮の声に恋をしたのは、人生で一番辛い時期だった。その声は、優しくて、温かくて——私を、救ってくれた。推しが、恋人になった。夢が叶った。そう思ってい
Terakhir Diperbarui : 2025-12-01 Baca selengkapnya