週末。土曜の昼、蓮くんと会う約束をしていた。夜は康太と会う予定だ。蓮くんには、夜は予定があると伝えてあった。『何の予定ですか?』と聞かれたけれど、『友達と約束があって』とだけ答えた。『……そうですか。じゃあ、昼間会いましょう』蓮くんの声が、少し冷たく感じた。約束の場所は、いつもの個室カフェ。蓮くんは既に席についていた。「美月さん、こんにちは」いつもの笑顔。でも——何か、違う気がした。「こんにちは」席に着く。蓮くんが、じっと私を見ている。「美月さん、今日は何時まで?」「八時には帰らないと……」「誰と会うんですか?」「友達です」「男性?女性?」「……女性です」嘘をついた。康太と会うと言ったら、また何か言われる気がして。「そうですか」蓮くんが少し目を細める。「美月さん、嘘ついてないですよね?」ドクンと、心臓が跳ねた。「つ、ついてないです……」「ならいいんですけど」蓮くんが微笑む。でも、その笑顔が怖かった。六時にカフェを出て、康太との約束の場所に向かう。駅前の居酒屋。暖簾をくぐると、温かい空気と賑やかな声が迎えてくれた。週末の夜、店内は混んでいる。奥の席に、康太が座っていた。手を振っている。「美月、久しぶり」「康太……」久しぶりに会った康太。変わらない、穏やかな笑顔。テーブルには、もう枝豆と冷奴が置いてある。「先に頼んどいた。美月、ビール飲む?」「ううん、烏龍茶で」「わかった」康太が店員さんを呼んで、注文する。その仕草が、昔と変わらなくて。少しだけ、肩の力が抜けた。「どうした?疲れてる顔してるけど」康太が心配そうに覗き込んでくる。「……ちょっと、色々あって」烏龍茶が運ばれてくる。グラスを持って、一口飲む。康太は、黙って私を見ていた。やがて、静かに口を開いた。「蓮くんのこと、調べたぞ」康太の顔が真剣になる。箸で枝豆をつまんでいた手が、止まる。「やっぱり、二年前にストーカー問題起こしてる。共演した声優に異常な執着を見せて、相手の家に無断で合鍵作って侵入したり、SNS全部監視してたり……事務所が金で揉み消したらしい」握っていた箸が、震える。テーブルに置いた。周りの客の笑い声や、ジョッキが当たる音が遠くに聞こえる。「美月、蓮くんは……多分、また同じこ
Last Updated : 2025-12-17 Read more