私、江崎和穂(えざき かずほ)はアダルトグッズのネットショップを開いている。百パーセント好評のランジェリー商品に、ある日ひとつだけ低評価がついた。【この色はダメ。夫が気に入らないって】するとネット上の誰かが追及した。【それって……旦那さんのほうがダメなんじゃないの?】購入者が追記した。【まさか!紫色に替えたら、夫が急に元気になったんだから!】私は添付されていたライブ画像を開いた。女性は頬を紅潮させ、恍惚とした表情で甘い吐息を漏らし、揺れる身体が快楽に震えていた。カメラに背を向けた男性が彼女に覆いかぶさり、激しく腰を動かしている。片手は、女性が彼の肩に乗せた足をしっかりと掴んでいた。その瞬間、私の指先がぴたりと止まった。男性の手首に、半月型の傷跡があった。あの年、篠原周平(しのはら しゅうへい)が私を庇って受けた傷、まさに同じ場所だ。その時、彼は笑いながら言っていた。「傷が残ったほうがいいだろ?どこにいても、すぐ俺の手だって分かるから」今年で、私は周平と結婚して八年目。そして、私たちのセックスレスの結婚生活も、八年目を迎えていた。疑いを確かめるために、その夜、私はあの紫色のランジェリーに着替えた。深夜一時、周平が扉を押して入ってきた。私を一瞥した瞬間、彼の喉仏が上下し、耳の先がほんのり赤くなる。「和穂、ごめん。今日は学生の研究テーマを見ていて帰りが遅くなった。長く待たせた?」私は黙って彼の上着を脱がせた。片手を彼の肩に回し、もう片方の手は器用に衣服の中へ滑り込ませる。紫色が私の白く柔らかな肌を一層引き立て、半分ほど覆われた胸、そして私がわざと近づけたせいで、もともと少ない布地がほとんど私の体を包みきれていない。指先を彼のベルトへとなぞらせ、潤んだ目で彼を見つめる。「周平……私たち、もう一度……試してみない?」彼は視線を逸らし、反射的に私を押し離した。「和穂、やめなさい。……俺には無理だって、前に言っただろ。君だって、セックスレスで構わないって……それ、脱いで……君には似合わない」突然、涙がぽろりと落ちて、私は苦笑した。「似合わないのは……服?それとも、私?」彼は困ったように私を見つめ、眉をひそめた。「和穂、何を言ってるんだ?今日はどうした?」私は首を振り、寝室へ向かった
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