広い豪邸。噂では、時価百億とも言われているが、見るからにそれ以上に見える。ただ、蒼史の家族は見当たらず、普段は家政婦しか出入りしてないらしい。彼女はご馳走を用意するだけして、自分専用の離れに引っ込んでいった。広すぎるリビングの真ん中の棚上に、一色グループの創業一家が並んで映った写真がある。その横に、一色蒼史とその家族の写真も飾ってあった。「今現在、ここには俺しか住んでいない。」終始ご機嫌な蒼史と、ずっと緊張しっぱなしの私。一秒たりとも気が抜けない。油断なんて、できない。もし“凛音”のくせでも出ようものなら、即ゲームオーバー。とはいえ、この男が凛音に興味があったとは思えないけれど。警戒するに越したことはない。長いテーブルを挟み、私たちは共に食事をした。私は消化にいいメニューばかり。対する蒼史は、ステーキなどを上品に食べている。さすが、創業一家の孫。でもまさか毎晩ステーキとかじゃないわよね……「一……蒼史さんは、ご結婚はされてないんですね。」箸を動かしながら、私はなんとなく蒼史に尋ねた。彼の眉がぴくりと動く。「ああ、まあな。」「優秀な一色キャピタル・マネジメントのCEOで、一色グループ創業者の孫。おまけに優秀な経営手腕をお持ちだと聞きましたが。結婚の話は引く手数多でしょうに。失礼ですが、なぜ結婚されないのですか?」確か蒼史は、去年三十歳になったはず。婚約者がいたと聞いたこともあるが、それも、かなり前の話だ。「へえ。詳しいんだな。さすが、贋作を調べていただけのことはある。」褒めるように蒼史は唇を動かした。なぜ、さっきから目が輝いているのかはわからないが。「……調査は基本です。」気をつけて、光咲。
Last Updated : 2026-03-06 Read more