契約書を交わすと、またふと、朔夜の刺すような視線を感じた。だが、今度は気づかないふりをする。 「なぜあなたが、鷹司ホールディングスの芸術投資に関わりたがるのか、理解できない。こんな情報を流してまで……」彼は低い声で口を開いた。抑えた調子だが、その奥に鋭い刃を秘めている。 「理解できなくても構いません。私の目的は意外とシンプルなんです。……純粋にビジネスに関心があり、利益を得たいから、とでも言っておきましょう。」 そう答えれば、朔夜はやはり不満げに唇を尖らす。 ――突然現れた女。――会社の基盤を揺るがすほどの情報を携えた。――目的は不明、だが一歩一歩確実に迫る。彼の目には、間違いなく私は危険な存在として映っている。実際、鷹司ホールディングスにとって不利な証拠を握っているのは、偶然ではない。 あらゆるものを駆使して、三年前のファンド事件を徹底的に調べたのだから。 朔夜、この会社、誰かに狙われているわよ。 そんな私の意思とは無関係に、粘着質な視線がいつまでも肌にまとわりつく。 「それで、次はいつお会いできますか?」 とにかく必死に話題を振って、彼の目線から逃れた。 ……なぜ、そんな風に見つめるの? まだ二回しか会ったことのない“光咲”を。 それが、なぜかとても不愉快だった。理由は、この男が――かつて私の弁明に耳を貸すことなく、自らの手で私を深淵へ突き落とした張本人だからだろう。……だが今は、感情に流されるわけにはいかない。 とにかく、朔夜を含めた
最終更新日 : 2026-01-31 続きを読む