Mag-log in凛音は罠に嵌められ、愛する朔夜に信じてもらえず、車の事故で命を奪われるはずだった――。だが、運命のいたずらか、彼女は他人の身体に転生し、記憶を抱えたまま再び朔夜のもとへ戻る。真相を突き止め、復讐を果たすために動き出す凛音。しかし、冷酷な朔夜は以前とは違い、執拗に彼女を追い求める。裏切りと憎悪を胸に、心を閉ざしながらも、彼の視線に胸が揺さぶられる————。誰が彼女を陥れ、誰が守ろうとしているのか。別人へと転生した元秘書×冷酷になったCEO、愛と復讐が交錯する極限の心理戦が、今、幕を開ける。
view more蒼史に会う日が訪れた。場所はあの時の高級クラブ。外出時は新に嘘の事情を説明するのに、少し苦労した。蒼史に会うことは誰にも言ってない。当然、朔夜にもだ。「久しぶりだな。また痩せたか?」「そうですか?」「そんな気がする。まあ、座ってくれ。」相変わらず蒼史は淡々と酒を注文した。今夜も少し髪を崩し、色気が漂っている。着ているのもスーツではなく、大人びた私服だ。目が合うと、蒼史は顔を逸らさずに見つめ返した。「あんたは飲むか?」「いえ、私は結構です。」「相変わらず固いな。たまには酒でも飲んで、日頃のストレスを発散させた方がいいぞ。」この人は、かなりお酒に強そうだ。「といっても、今は自重する時期ですから。」まだ犯人が見つかっていない以上、あらゆるリスクは避けておくべきだ。「本題に入ります。」私はバックから小型の暗号化USBを取り出し、蒼史に手渡した。今夜は取引の日でもある。あくまで私と蒼史はビジネスパートナーだ。「約束のものです。最近の鷹司グループの動きと、朔夜さんの行動パターン。わかる範囲でまとめておきました。」朔夜の弱みになりそうな情報を売る。それが私と蒼史の本来の取引内容だ。「確かに受け取った。」中身を確認し、蒼史は満足気に笑った。蒼史はそれをしまい、グラスに酒を注いだ。「あれから、爆発事故や襲われた事件について、なにかわかったのか?」私はふるふると首を横に振った。「まだ、なにも。」「そうか。なかなかに胡散臭い事件だよな。あんたが鷹司グループに関わったことが原因だろう。犯行は内部犯で間違いない。」やはり蒼史も、犯人が内部犯だって気づいているんだ。どこまでも鋭い人だ。「今度は俺からだ。凛音の事件のことで。」
朔夜がアザを持っていた。あなたが、私の死を望まなかった一人だって言うの?どうして――あんな風に、私を地獄に突き落としておきながら。私が死んで罪悪感でも芽生えたっていうの?それとも……生きて私を罪人に仕立て上げるため?刑務所に放り込むことが目的だったから?わからない。なにも。朔夜のことがなに一つ。朔夜はそのままベッドに寝かせて、私はリビングのソファに横になった。同じ空間にいるだけでも、頭がおかしくなりそうなのに。眠れるはずがない。頭の中をぐるぐると、青いケシの花びらが回り続けた。「月島さん。」明け方のことだった。朔夜が私を呼ぶ声が聞こえた。私は目を閉じ、眠ったふりをした。怖い。目を覚ましたくない。「……すまなかった。またあなたに迷惑をかけたみたいだな。」ソファがギシッと軋む。朔夜がソファに手をかけたのが、気配でわかる。「どうして俺はあなたにだけ、こんな……」まただ。また朔夜が私に近づいている。目を伏せていてもわかる。私の顔を覗き込んでいる。それから……朔夜の手が、そっと私の髪に触れた。だめだ。触らないでと言いたいのに。目を開けるのがこんなにも怖いなんて。昨夜がどんな顔をしているのか、見るのが怖い。香水なのか、ふわっと朔夜から甘い匂いがした。「月島光咲。あなたが気になって仕方ない。」切なげな声が響いた。その後朔夜は家を出て行ったが、しばらく私は動けなかった。天井を仰ぎながら、さっきまでいた朔夜のことを思い出していた。「なによ……まさか光咲に惚れてるとでもいうの?」冗談じゃない。私は唇をぎゅっと噛み
彼女がなにかを必死で叫んでいる。「朔夜…お願い、私を見て!見てよ!どうして……どうして私を見ようとしないの?」だが、俺の耳にはもうなにも届かない。「高遠凛音、お前の部屋の資料だ。会社の核心データを競合に流し、入札を失敗させ、数百人の努力を踏みにじった。」俺のコンサルである御堂が、凛音が働いた不正の証拠を突きつけた。どうしてこんなことになった?まさかあの凛音が俺を――鷹司グループを裏切るなんて。一体なぜなんだ?「兄さん、凛音の言うことに耳を貸してはいけません。彼女が言うことはすべてでたらめです。」「どうして――」燈が気の毒そうに俺の腕を引き、慰める。凛音は、警察に連行されそうになりながら叫んだ。「愛してる!子どもの頃からずっと……!あなたはわかってるはず、私はそんなことしないって……!」わかってるか、だって?ああ、わかっていたつもりだった。それなのにお前は最低な形で、俺を裏切った。もういい。もう見たくない。声も聞きたくない。「兄さん。辛いでしょうけど、ここは耐えて。」燈がこの場にいてくれてよかった。そうでなければ、今頃俺はどうにかなっていたかもしれない。凛音は抵抗を続け、ずっと俺の名前を呼び続けていた。ようやく彼女を乗せたパトカーが走り始めた。心が焼け付くように痛い。引き裂かれそうだ。もう二度と会いたくない。永遠に。俺の前から消えてくれ――凛音。次の瞬間、甲高いブレーキ音が聞こえた。振り返った時、すでに凛音が乗った車はぐしゃぐしゃになっていた。原型も留めないほど、凄まじい事故だった。「え……?」凛
朔夜がおかしいのは、それだけではなかった。「必要なものは新じゃなく、俺に言ってくれ。可能な限り、揃えるから。」家具に家電。必要な物はもう充分揃っているはずなのに、なおも朔夜は執拗に聞いてきた。「あの、もう充分です。新さんに揃えてもらったのもありますし……」慌てて私が断ろうとすると、朔夜はむっとしたような表情を浮かべた。なんなのよ……もう。調子が狂うわ。「それでも、なにかあれば言ってくれ。」私がなにか買ってくれと言うまで、引かなそうな勢いだ。「とにかく、ありがとうございました。」お礼を言って、私は朔夜を無理やり部屋から追い出そうとした。あのことについて話さないなら、これ以上朔夜と一緒の空間にいたくない。だって、いつ正体がバレるかわからないのに。そろそろ、背中のアザも疼いてきた気がする。まさか、また花びらが消えた……なんてことはないわよね? 「月島さん。また後で伺う。あなたは充分に用心して過ごしてくれ。」玄関越しに、真剣な目で見つめられて――「わかりました。」そうやって、私は素直に頷くしかなかった。 ともあれ、私の利用価値は朔夜に情報を提供することだ。新しいパソコンも手に入ったし、ネット環境も整ったから、情報を収集しないと。「えっと、確か蒼史さんに聞いた取締役員の名前は……」例の海外コードにまつわる役員の名前を調べ、謎の架空会社の実態を調べ始めた。その時、ちょうど蒼史から連絡がきた。 「もしもし!光咲!お前、大丈夫なのか!? アパートが爆発したって聞いて……」電話越しの彼はすごい勢いで、私の安否を聞いてきた。 そういえば、彼のことすっかり忘れていた……「あ、はい。大丈夫で……」「あんたの“大丈夫”は信用できない。 今どこにいるんだ?」「実はその……話せば長くなるんですが