LOGIN凛音は罠に嵌められ、愛する朔夜に信じてもらえず、車の事故で命を奪われるはずだった――。だが、運命のいたずらか、彼女は他人の身体に転生し、記憶を抱えたまま再び朔夜のもとへ戻る。真相を突き止め、復讐を果たすために動き出す凛音。しかし、冷酷な朔夜は以前とは違い、執拗に彼女を追い求める。裏切りと憎悪を胸に、心を閉ざしながらも、彼の視線に胸が揺さぶられる————。誰が彼女を陥れ、誰が守ろうとしているのか。別人へと転生した元秘書×冷酷になったCEO、愛と復讐が交錯する極限の心理戦が、今、幕を開ける。
View More御堂の怪しさがぐっと濃くなった。それに、問題の資料が流失した当日の私のアリバイも、新が証明してくれた。これで、事件の真相に一歩ずつ近づいていってるという実感がじわじわと湧いてきた。 そんな時に、また蒼史から『会おう』という連絡が入り、今に至る。「光咲のおかげで、あの男に一泡吹かせてやった。 はは、あの時のあいつの顔、傑作だったよ。」「……ほどほどにお願いしますよ。」私は指定された高級クラブの個室に。上機嫌で酒を飲む蒼史に釘を刺す。あれから、朔夜と蒼史の買収交戦が続いていて、私が流した情報で朔夜側が一泡吹かされたからだ。 といっても、私もそこまで過激な情報を握っているわけじゃない。ただ、蒼史は事実かどうかもわからないマネーロンダリング疑惑を上手く活用したようだ。大企業の汚職疑惑は、それだけで信用を失いやすい。蒼史は私に怪訝な顔をされても満足気だった。 「そんなに、露骨に嫌そうな顔をするなって。 光咲にそんな顔をされると悲しいな。」彼はいつもとは違うラフな格好で、髪もくしゃっと下ろしていた。昼と夜では随分とイメージが違う男。夜はまるで捕食者だ。これまで何人の女をこうやって口説いてきたんだろう。そう思えるほど――「女性を勘違いさせるようなセリフは、控えた方がいいですね。 “想い人”さんに呆れられますよ。」 私は呆れながら、お酒の入ってない飲み物を口に含んだ。「……勘違いしてもいいんだけどな?」やはり蒼史はどこか上機嫌だ。それから蒼史とは、例の架空会社の経営に携わってる役員の名前を共有した。「調べれば調べるほど、鷹司燈が怪しいのが分かってきました。 この役員は、以前からたかつ燈とつながりが深い人物だったことが分かってきました。」蒼史が調べてくれたことで、一気に香港の架空会社の真相解明も近づいてきた。 「その件だが、本当に鷹司朔夜は関わってないと言い切れるのか?」 「それはまだ何とも……」 私は言葉を濁した。ここから先は黙っておく必要があった。なぜならその先は、凛音だった私しか知り得ない情報だからだ。鷹司グループには当然のように派閥があった。 その役員の男は、明らかに朔夜の味方ではなかったのだ。つまり香港の架空会社こそ、横領した金の隠蔽先になっているのではないのか?だとするとあの絵画はやはり、燈個人がマネー
車内ではしんとした時間が続いた。朔夜がなにもしゃべらないから、返って緊張感が増していく。どうして、私は朔夜と一緒にいるんだろう。恨んでるはずの男の車に乗っている時点で、いろいろ矛盾している。「もし、御堂があの日、あなたを襲った犯人なら……」先に沈黙を破ったのは朔夜の方だった。私は、助手席に乗れというのを断り、後部座席に座った。朔夜とはミラー越しに目が合う。「どうするつもりだ?警察も信用できないんだろう?」「そうですね……」一旦、しおらしく答えてみたものの、警察にツテがないわけではない。朔夜や新は警察に言うのは控えた方がいいと言うが、私には頼れる人物がいる。蒼史だ。彼には警察にツテがある。御堂が怪しいとわかれば、きっと調べてくれるに違いない。確証はないけど、蒼史は必ず協力してくれる気がする。「誤解しないでくれ。鷹司グループが警察にツテがないわけではない。だが、もし御堂が事件に関わっているとすれば、グループの威信に関わる重要なことだ。慎重にことを進めなければならない。」「そうでしょうね。おっしゃっている意味はわかりますよ。鷹司グループの不祥事になりかねませんから。」私は冷たく答えた。初めから朔夜をあてになどしていない。むしろ彼が、妨害してくるのではないかとさえ考えていた。だが、今の段階でそういった動きはなさそうだ。私に協力だなんて、本気だろうか。朔夜と御堂は、本当につながってないのだろうか?朔夜は慎重にハンドルを切りながら、時々ミラー越しに私を見ていた。彼と目が合わないように、私はわざと窓の外を眺めた。「〇〇3〇〇 〇ー〇〇ー〇〇。」「え……?」「御堂の車のナンバーだ。」ぼそっと朔夜が呟いた。
御堂がゆっくりと私に近づく。私は緊張で喉をごくりと鳴らした。最悪な状況だ。もしこれで見つかったりしたら、今後は御堂に近づくことすらできなくなる。「そこに誰か――」もうだめだと思った瞬間。その場に現れたのは――「お疲れ様。」「……代表?」私を御堂から見えないように庇ったのは、なんと朔夜だった。「ああ。俺だ。」「帰りが被りましたね。では、私はお先に失礼します。」「ああ、気をつけて。」すっかり油断した御堂が、自身の車に乗り込み、エンジンをかけた。彼の車が去るまで、朔夜は私を見えないように庇い続けていた。助かった……でも。「どういうことか、説明してもらおうか?なぜ、あなたが、御堂の車を?」私の前に朔夜が立ちはだかる。そうなるとわかっていた……。朔夜の顔は相変わらず、光咲として出会った当初の通り険しい。だが、御堂さえ去ればなんとでも言い訳できる。朔夜に変に疑われず、御堂を調べてもおかしくないというシチュエーション。それは……私は覚悟を決め、朔夜をじっと見上げた。「あの人――庭園で私を襲った犯人に似てるんです。だから気になって……」ここで、御堂の名前を使わせてもらう。「なに?でも、当日顔は見てないと言っていたじゃないか。」「確かに顔は見ていません。でも……あの時の犯人と身長や体格が似ているんです。」「身長と体格か……それが、御堂の車を調べようとした答えになるのか?」朔夜は鋭く言及した。「はい。なります。当日、彼の車が近くにあったという証拠があれば、犯人がわかるのではないかと思ったので…&
あの日以来、朔夜からの執拗なメールが続いている。ただ、内容はごく普通の会話と変わりなかった。『いまどこですか?』『ちゃんと食事はしたのか?』恋人でもあるまいし――だけど、そのうちデートの誘いとも取れるような内容まで送られてきて、私は頭を抱えた。『今度の休日、もし予定がなかったら、一緒に出かけないか?』 「なんなのよ、もう……」私は朔夜のメールを無視して、スマホをテーブルの上に滑らせた。確かに朔夜に対する警戒心は薄れつつある。 私を狙った犯人とは無関係だという意味では。彼には、あの青いケシの花もあった。つまり彼は、私を“死なせたくなかった”うちの一人だ。それに、朔夜と会話をしていて勘付き始めた違和感。その違和感は日に日に大きくなってきている。だからといって、全面的に信用しているわけでもないけれど……私はマンションで、メモ用紙に相関図を描いた。「私を殺して得をする人物…… 私の家に横領の証拠資料を入れたかもしれない人物が、御堂悟なら、彼はなにが目的?」御堂と燈。この二人の関係はなんだろう。そして、燈が時々見せる、朔夜への別の顔は……「私が朔夜と死別して、得をした人物なら工藤さんも当てはまるわね。 彼女が、朔夜の婚約者になったんだから。 確か、工藤グループの孫娘だったわよね。」だからと言って、彼女が私を死に追いやったとまでは考えにくい。「朔夜が本当に私の死を望んでいなかったとして――それなら、どうして、あの時ひどく私を拒絶したんだろう? 本当に朔夜は、あの事件に関わってないの? 私が死んで朔夜が得をする面もわからない。 あの態度じゃ、工藤さんと婚約することが目的だったわけじゃなさそうだったし…… 私たちはまだ婚約者で、籍も入れてなかった。 私の死亡保険金や、共有財産というわけでもなさそうだし……」やはり朔夜





