『現在習得可能な一覧を表示しますか?』 その質問にわたしは頷くと、視界にスキルがずらりと並ぶ。上部にはフィルターの文字があり、レベルや種別などで見やすく整理できるようだ。今は手探りの状態で、何から手を付けていいのか分からず、レベルの一番低い『棒術』の項を開いてみた。 そこには必要な金額、ステータス、効果などの詳細が記されている。棒術は棍や杖などの扱いを補助する技術みたいだ。必要なステータスは最低値。このステータスも、モイラの生体モニタリングにより数値分けされていて、学校で通知表を貰うような感覚に近い。金額も500ダルフ、約5,000円だけど、道場に通うと思えばかなり安い。棒術なら周りに落ちている枝でも、多少は武器になるだろう。 次に見たのは晶術の項目。説明文を確認すると、この星では魔法を晶術と称する旨が書かれていた。確かに『魔』は悪しきものを指す文字で、『魔法』という言葉が日本に入ってきた時代では妖術やまやかしの類だった。ラノベを読むとき、いつも疑問に思っていた事でもある。モイラによる翻訳でも『晶』が使われているのは、この地の人々にとって、善きものとして認知されている事が窺い知れた。 ステータスはクリア。項目には適正属性も表示されており、確認済み。それによれると、わたしは火属性に適性があるらしい。ここまではいいとして、問題は金額だ。技術には種別毎にもレベルがある。最初に習得できるのは初級から、次に中級と進む。級は更にレベルが設定されていて、それぞれ5レベルずつ、最上級まで上げるには15レベルを制覇しなければならない。 そんな初級晶術レベル1が2,000ダルフ。約2万円だ。しかも属性ひとつ毎に課金する必要があった。適正属性は判明しているけど、汎用性を高めるには他の属性も買うべきなのか。 しばし悩み、モイラに確認する。「これって、習得できる数に制限はあるの?」 先ほどモイラは習得と言った。イコナも同じような発言をしている。技術の習得とは、脳に追加データをインストールする、いわばダウンロードコンテンツなのだ。昨今のゲームで主流の販売方法でもあるダウンロードコンテンツ、略してDLC。本編にストーリーや衣装といったものを追加するこの方法は、課金主義として賛否両論あれど、現行のゲームにはほとんど実装されて
Last Updated : 2025-12-08 Read more