あれから5日が過ぎ、動き回るのに支障がないほどまでに回復したわたしは、早速お使いに出ていた。 この街、ベンデードは関所のある貿易の要所とのことで、露店や大店が軒を連ね大勢の人で賑わっていた。街を円形の防壁が囲み、中央に関所の門がそびえていてる。その関所の左右延長線上に防壁が伸び国境を示していて、わたしがいるのはサファルという国側なのだと聞いた。 往来を行く人々は様々な容貌をしていて、宿屋の窓から眺めていたとはいえ、間近にしたわたしはきょろきょろと挙動不審に周囲に視線を巡らせる。全身毛むくじゃらだったり、耳やしっぽだけ獣の獣人や、わたしと変わらない、所謂人間の見た目をした人。耳の尖ったエルフやずんぐりとしたドワーフ、全身鱗で覆われたリザードマン、羽の生えた小さな妖精まで。色も形も千差万別だ。 この星では言葉を持ち文化を築いている種族は、全て人族と称するのだとか。ここではわたしも猿の獣人に数えられる。毛皮もしっぽも持たないフェルロスという種族で、世界各地に生息し、最も数が多いけど、場所によっては牙無しなんて蔑称で呼ばれることもあるとか。でも、この街では人種も様々行き交っているので差別も少ないらしい。 そんな街の中を四苦八苦しながら手渡されたメモを見つつ、人の波をかき分け辿り着いたのは郵便局だ。白い建物には赤地に黒で大きく郵便局の文字が掲げられている。文字も自動翻訳のおかげで難なく読めるのはありがたい。 今日の使命は手紙を出すこと。 預かった封筒は一目で高級だとわかる紙で折られ、きれいな流線が綴られている。宛名は読めるけど、詮索は失礼だろう。見当もつかないというのもあるけれど。 送料としてお金も預かった。 私の所持金はインベントリ・リングに入れっぱなしになっているので、初めて手にしたお金だ。 1ダルフは青銅貨、10ダルフは銅貨、100ダルフは銀貨、1,000ダルフは金貨、1万ダルフは白金貨。5の位の硬貨には中央に四角い穴が開けられていて、硬貨が使われるのは10万ダルフまで。それ以上の取引は手形や小切手を使うらしい。 預かったのは1,000ダルフ金貨だ。日本円だと1万円。結構な金額なので失くしたり、掏られたりしないようきつく握りしめる。木造の白い扉をくぐると、狭い室内には小さな窓口がひとつ。手紙とい
Last Updated : 2025-12-08 Read more