続きは、その事故の詳細だった。相手はスピードが速すぎて、その場で即死。誠は重傷で運ばれて、意識不明。それに両足も、多分もうダメだろうっていう話だ。私は片眉を上げて、「そう」とだけ返した。電話の向こうにいる友だちは、私と誠の馴れ初めから全部知っている人だ。ため息をひとつつくと、「また連絡する」とだけ言って電話を切った。それから、私の日常は何事もなかったように静けさを取り戻した。……数日後。スタジオで残業をしていた私は、東国からの着信に気づいた。見覚えのない番号。当然のように、それをスルーした。その後も二通、三通と続いて……あまりにもしつこいから、一旦ブースから出て、廊下で通話ボタンを押した。耳に飛び込んできたのは、聞き覚えのある女性の泣き声だった。「結衣?……結衣なのね?」誠の母だった。「ごめんね、こんな電話するなんておかしいとは分かってるんだけど……誠がね、このままだと、本当にダメかもしれないの」呼吸を整えるように少し間を置いてから、嗚咽混じりの声が続いた。「先生は、生きる気力がまるでないって……今は本当に、自分から死に向かっていくみたいで……私には、誠しかいないの。どうかお願い……一度でいいから、この子に会ってくれない?」電話越しでも分かるくらい、必死だった。誠と結婚してからの数年間、義母と会う機会はそんなに多くなかった。それでも、会うたびに本当の娘みたいに接してくれた。あの人たちと一緒にいるときだけは、少しだけ「両親が生きていた頃」の空気を思い出せた。誠とのことは、もうどうにもならない。それでも、義母の泣き声をここまで聞かされてしまうと、完全に無視できるほど、私の心はそんなに強くはなかった。どうしようか迷っているうちに、電話の向こうから突然悲鳴が上がった。「ちょっとあなた!しっかりして!」どうやら、義父が、息子の状態に耐えきれず、倒れたらしい。モニター音、誰かの呼ぶ声、バタバタとした足音。騒然とした気配が、受話器越しに伝わってくる。胸のあたりがきゅっと縮まり、私は小さくため息をついた。「……分かりました。一度帰ります」電話を切ると、天音が事情を聞き、少し困ったように笑った。「まあ、行くしかないよね。それは。でもさ、結衣ちゃん。これは誠の
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