All Chapters of 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Chapter 151 - Chapter 160

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第151話

一花は帰宅してすぐに風呂に入る習慣がある。しかしこの日は柊馬がいるので、それは後回しにして、まずは彼と一緒に過ごした。彼には何かしたいことはないか尋ねた。映画でも本でも、ゲームでも、どんなことでも彼に付き合おうと思った。一花は過去一度だけ恋愛した経験を持っているが、かなり昔の学生時代の恋愛だ。だから、実際はまだ恋愛未経験の少女となんら変わりない。当時は慶が一花のことを口説きまわっていた。毎回のデートもいつも彼が予定を立てて、ほとんど彼の主体的なものばかりだった。学生時代、慶はいろいろな試合を見るのが大好きで、一花は彼に付き合っていろいろな所へ見に行った。そして卒業してから、二人の恋愛もただ街に出て食事する程度にとどまっていた。慶は仕事のほうに意識を向けていた。彼は会社が上場したら一花と新婚旅行に行って、彼女がしたい事、行きたい所、なんだって彼女の希望を叶えると約束してくれた。しかし、一花はそれを真剣に考えたことはなかった。彼女はすでに自らを犠牲にし、相手を守るという形の恋愛に慣れていた。だから、自分が何を求めているのかなどはきちんと考えたこともなかった。「別に無理に俺に合わせる必要はありません。それでは疲れてしまいますからね。一緒にダラダラするのもいいでしょう。確か嫌な事があったと言ってましたね、それなら気分が良くなるような事を……もし、嫌じゃなければ、今日何があったのか話してくれませんか。俺も聞きたいから」柊馬がこのような言葉を口にした瞬間、一花は少しぼうっとしていた。その様子を見て、柊馬は一花が疲れているのを感じ取った。この日、彼女が遅くに帰ってきて彼も別に余計な詮索はしなかった。でも、彼女は嫌な事があったとはっきり言っていた。「先にお風呂に入ってきてもいいですか。それから一緒に途中のあの映画を見ませんか?だけど、今日はちょっと疲れてて最後まで見る体力がないかもしれません……でも、私もあなたと一緒にお話したいです」一花は少し遅れてやっと自分の思いを口にした。名家同士の政略結婚が意味しているものなど、彼女もよく理解している。互いの財産をさらに増やしたり、強力な協力関係を作ったり、支え合うことが目的だ。しかし、そこには感情というものは置き去りにされる。一花はもともと、柊馬とはそんな協力し合えるパートナー
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第152話

まだ柊馬が一花が嫌な思いをしたことを気にかけてくれていたので、彼女はとても嬉しかった。「どれも最悪な事ばかりで、話したらきっと不快にさせてしまいますよ」一花は小さな声でそう返事した。それに、一花も自分が黒崎慶に復讐しようとしている事を柊馬に話したくなかった。冷酷そうな外見とは真逆で彼は内面とても優しい。すでに心はズタズタに引き裂かれ、色濃い憎悪と怒りを胸に秘めている一花とは違う。このような負の感情を根こそぎ綺麗にしてしまうまで、彼女は柊馬に醜い自分を見せたくなかった。一花が話したがらない様子なので、柊馬もそれ以上深堀りしなかった。「以前の事にまだ手こずっているんですね?」暫くして彼がまた尋ねた。一花は驚いてすぐに反応できなかった。彼が言っているのは慶との関係のことだろう。「ええ、でももうすぐです。あと少しだけやることがあって」「何か手伝えることは?」柊馬は再び尋ねた。一花はそれでも淡々と答えた。「いいえ、自分で解決できますから」些細な事で彼に迷惑をかける必要などない。それに、黒崎慶と対峙するというのに、どうして柊馬の手を汚すような真似ができるだろうか。一花はゆっくり時間をかけて、慶を苦しめるつもりだ。この6年間に彼が搾取していった全てを取り戻してようやく決着がつく。「……」柊馬はそれ以上この話題に触れず、力のある腕で軽々と一花の肩を抱き寄せて自分の胸元に寄りかからせた。しかし、この時の彼の心はまるで氷でできた穴に落ちたかのように言いようもなく落胆していた。さっき彼はいくつかメッセージを受け取っていた。それには写真が添付されており、写っていたのは一花と男が病院で揉めている様子だった。今夜、彼女はあの黒崎慶に会いに行っていたのか。彼女の気分が悪いのは、全てこの男のせいなのか?一花とこの男は6年という付き合いだという。彼は一花の初恋の相手だ。たとえ彼が彼女を騙し気持ちを踏みにじっていたとしても、彼女は気持ちに区切りがつけられないのだろうか?柊馬は一花に聞いてみたかった。しかし、言葉が何度も喉まで上がってきては、どうしても口に出すことができなかった。6年という時間に培われた感情を一瞬できれいさっぱり片付けてしまうことなどできないと、柊馬も分かっているのだが、彼女の心に別の男がいると思うと、彼
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第153話

【もう起きていますか?朝食はテーブルの上に置いておきました。ちゃんと食べてくださいね】一花はそのメッセージを見ると、すぐに部屋を出た。本当にテーブルの上には朝食が置かれていた。そこにあったのは、サンドイッチに、サラダ、ヨーグルトやフルーツジュースの飲み物など、豊富だった。朝食はお弁当箱にきれいに盛りつけられていた。見るからに柊馬の家にいるシェフがわざわざ作ったものだろう。その瞬間、一花は胸が温かくなるのを感じ、すぐに返事を打った。【今見ました。ありがとうございます。伊集院さんは朝食を食べましたか?】彼にはもっと、どうして昨夜は泊まっていかなかったのか、今日は忙しいのか、などいろいろと尋ねたかった。しかし、言葉を考えながら打ち込んでみたものの、まずはさっき書いたメッセージを送ることにした。するとすぐに返事がきた。【食べましたよ。今はちょっと忙しいので、あとでまた】送られてきたメッセージを見て、一花は長々と打っていた言葉を全部消して、ただ「分かりました」という返事の後にスタンプを送るしかできなかった。柊馬は携帯をおろすと、後ろを振り向いてオフィスにいる女を見た。「如月さん、伊集院グループの規定により、アポをとっていない者は俺に会うことはできません。もし、次またこのようなことがあれば、如月家との提携関係は解消することを検討します」柊馬は椅子の背もたれによりかかり、冷ややかな声でそう言った。彼女のほうに一瞥もくれることはなかった。陽菜は目を赤くさせていた。湊とボディーガードはすぐ傍にいて、強制的に彼女を追い出すべきかどうか迷っていた。如月家と伊集院家は最近あるプロジェクトで協力することに一致していた。だから、陽菜には伊集院グループに入る通行証が渡されてある。二人は昔からの知り合いでもあるし、以前、陽菜が急用で柊馬に連絡しても会えない時にはこのようにオフィスまで会いに来ていた。しかし、以前の彼はただ表情一つ変えずに平然とした様子であっただけで、今日のように厳しい言葉を吐くことはなかった。それで、柊馬の部下や周りの社員たちはみんな陽菜に対して丁寧な扱いをしていた。「柊馬、どうして私のLINEの友だち登録を消したの?なんでこんなふうに絶縁しようとするのよ。私、何か間違ったことをした?あの子の態度から、どんな女性なのか
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第154話

「柊馬、そんなに私のことが憎いの?昔のことは私が間違っていたわ。私に仕返しするために自分を苦しめたりしないで……彼女は……あの女なんかあなたに相応しくな……」「さっきの言葉が聞こえていなかったのか?」柊馬は陽菜の言葉を遮ると、軽く息を吸い、彼女とこれ以上言い合う意思はないらしく、電話をかけ始めた。陽菜も柊馬が言った事を実行に移す人間だと知っていた。いくらかなりの損失が出ようとも、提携を取り消しにしてしまうだろう。如月家は伊集院グループと同じくらい財力を持ち、勢力を持っているわけではない。この両家の提携事業には、伊集院家と提携することになったから、如月家はずっと資金やコストの額など気にせず投入していた。「分かったわ、すぐに出ていくから。それにもう彼女のことを調べたりしない。あの写真も全部消すから!」陽菜も如月家の全てを犠牲にしてまで柊馬とやり合うつもりはなく、結局は諦めてしまった。彼女がそう言い終わって、しくしくと泣き続けているのを見て、柊馬はようやく電話をかけるのをやめた。「出て行け」彼は同情の欠片もなく、きつい口調で吐き捨てた。陽菜はかなり泣いていて、しっかりと顔を手で覆って柊馬のオフィスを飛び出していった。そんな彼女の可哀想な様子に湊は思わず同情した。そして湊は暫くして中に入った。もともと柊馬に問題が大きくならないよう対処すべきか尋ねようとしたが、柊馬のほうが先に口を開いて淡々と言った。「今後俺の許可なく、あの女を俺のオフィスに入れるな。それから、今回の如月家との提携事業が終了したら、二度と提携しないと伝えろ」誰もが伊集院家と如月家の関係はただ仲が良いだけではないと知っている。柊馬と陽菜の関係も……昔は睦まじいものだった。それで湊は、たとえ彼が結婚したとしても、柊馬が陽菜と縁を切ることはないと思っていた。それがまさか、その一歩手前まで柊馬はやってのけたのだ。これは完全に彼が彼女に対する情を一切捨ててしまったからなのか、それとも……まだ以前の事を根に持っていてこのような行動をとったのだろうか?……午後、久子が京子に付き添われて黒崎家に戻ってきた時、執事が血相を変えて駆けつけ、報告した。「おばあ様、奥様……さきほどあるファックスが届きました!」京子はこの時機嫌が悪く、いらいらして言った。
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第155話

「颯太があの女の雑種だったとは、それで慶があそこまで庇おうとするわけね……いいでしょう、あの二人が関係を断ち切らないということはつまり、慶も了承済ということね!」京子も頭に血がのぼり、慶を庇うこともなかった。ちょうど則孝不在の時でよかった。もし彼がこんなものを見れば、慶を殴り殺してしまいかねない!久子は冷静になり、すぐに遺伝子情報解析センターに人をよこし、その結果の真偽を確かめさせた。誰がこのような物を送りつけてきたのか、その目的が何なのかはわからないが、今、まずやるべき事はやはり綾芽と颯太をどうにかすることだ。家庭内のこのような失態を外に漏らしてはならない。さらに黒崎家と会社に悪影響を及ぼすわけにはいかないのだ!夕方、慶は緊急の電話で実家に呼び戻された。彼は祖母にまた何かあったのかと思っていたが、家に帰ってみると、祖母と母親がリビングに姿勢を正して座っていた。かなり重々しい雰囲気で彼の帰りを待っていた。「これは一体どういうことだよ。ばあちゃん、母さん、一体何があったんだ?」慶はその場の雰囲気が尋常でないと察し、不安になって口を開いた。彼がそう言うと、京子の冷ややかな視線がテーブルに落ち、彼はその上にある何かの検査結果の紙に視線を移した。「これは……」慶はすぐに顔色を変え、サッと顔を上げた。「母さん、これ、一体誰がこんなものを送ってきたんだ?」「匿名よ、だけどそれは本物」京子が冷ややかにそう言い放った。久子は前をじっと見つめ、その場から微動だにせず座り、何か言おうとする様子もなかった。しかし、そのような久子の態度が、もっと寒気をおぼえさせた。「これは偽物に間違いないよ……颯太は俺が養子として迎えた子だぞ。どうして柏木さんと関係がある?もしかすると、どこかのビジネス上のライバルが、黒崎家を内部からめちゃくちゃにしようと企んでこんなものを……」「あなたと彼女の事は我々黒崎家の人間しか知らないわ。あなたが一花さんと結婚しても世間では知られていないのと同じようにね。もし、本当にそのライバルとやらがやった事なら、世間にあなたの失態を噂で流せば済む話よ。家庭内で揉めさせるようなこんな面倒なことをする必要はないでしょ」慶が反論する前に、京子に冷笑され口を閉じた。「母さん、こんなのありえな……」「ありえるかあり
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第156話

久子は鼻で笑い、軽く手をあげ、京子に激しい叱責を一旦やめるように合図した。「慶、あの女を片付ける時間を一週間あげましょう。それから、あの女にしっかりと伝えなさい。即刻海外に移住し、今後一切、永遠にこの南関市に足を踏み入れることを禁じるとね。もし言うことを聞かないのであれば……」久子は陰険な目つきに冷酷な光を宿した。「聞かないのであれば、心の準備をしなさい。一生息子に会えなくなるとね」その言葉を聞き、慶は何か気づいたようで、少し戸惑いまたすぐに京子を見つめた。「颯太を連れていくつもりか?」彼はすぐに携帯を取り出して家に電話をかけようとしたが、京子の冷ややかな声がそれを遮った。「心配しないで、あの女がおとなしく去れば、一年後、颯太と彼女を会わせてあげます。私だってあんなのを代わりに養いたくないわよ。だけど、もしあの女があんたにしつこくつきまとうというなら、颯太は彼女が二度と探し出せない所に連れていく。それから、柏木家とあの女自身も一生黒崎家と敵対する準備をすることね……」「ばあちゃん、二度と彼女と会わないと誓うから!」慶はこの時、自分はもう無力だと悟っていたが、それでも歯向かった。「だけど、颯太はただ俺が養子として連れて来た子供だ。まだ小さいんだ、だから子供にひどい真似なんて……」「慶、ここまで来たのよ。私ももう確かめる気もないわ」久子はソファのひじ掛けを触りながら、力強く息を吸い込んだ。「あの女には二度と会いたくない。どこの馬の骨だから分からない子供に、やましい心を持った女のせいで、黒崎家の顔に泥を塗られたくないわ。あなたがどうするのか、合理的に考えて決断を下すことね」そう言い終わると、久子は慶に目をくれることなく、立ち上がり傍にいた使用人に支えられてその場を去っていった。慶は祖母は説得できないと分かり、すぐに京子にすがりつくように尋ねた。「母さん!颯太をどこに連れて行ったんだ?」「それは私だって知らないわ、おばあ様がやらせたんだもの。たとえ私が知っていたとしても教えるわけないでしょ。だけど、黒崎家は小さな子供に手を出したりしないから安心なさい。早く颯太に会いたいのなら、おばあ様の言う通りにすることね」京子は慶の今の様子を見て、確かに怒りはあったが、可哀想で心を痛めていた。自分の息子があの綾芽とかいう女のせいで、
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第157話

慶が帰ってきたことが分かり、綾芽は思わず嬉しくなった。ここ数日、二人の関係はかなり冷めていた。特に久子が黒崎家に戻ってから、慶はメッセージに返事もしなくなった。一日中、一花のことばかりだ。すると綾芽の友人の紬が、こんな時は焦らないで冷静になったほうがいいとアドバイスしてくれた。以前の一花のように、まるでペットのように慶の言うことは何でも聞いて彼を喜ばせていても、彼は結局は綾芽のところから離れなかった。しかし今はどうだ。一花が去って彼に冷たくあたり出すと、かえって一花のほうに目を向けるようになった。これは人の心というものだ。得られないとわかるとずっとそれに執着する。慶は今心身共に疲れ切り、プレシャーもかなりのものだ。綾芽はそんな彼に余裕のある心を見せなければならない。綾芽は紬の話も一理あると思った。今の彼女はかなり辛い思いをしていたが、二人の間にはまだ颯太という存在がある。子供さえいれば彼女を捨てることなどできないはずだ。慶は必ず自分のところに戻ってくる。綾芽はナイトウェアをたたみ、羽織を脱いで、キャミワンピース姿になり、玄関のドアを開けた。「今日は一体どういう風の吹き回し?こんな遅くに来て、お家の方に見つかってもいいの?」綾芽の言葉の端々には皮肉が込められていたが、女性らしい甘えた声で、完全に相手を魅了してしまうものだった。しかし、今の慶はそのようなことに構っていられる状態ではなく、一目綾芽を見てすぐに部屋に入って座った。そして暫く一言も発しなかった。「何か悩み?会社の事?」綾芽は探るように尋ね、慶の隣に座った。すると濃いタバコの匂いがした。タバコの匂いを嫌う彼女のために、慶は普段タバコを吸うことはほとんどなかった。それで綾芽はおかしいと思った。「タバコを吸ったの?」そう言いながら、彼女は自然な動作で彼のコートを脱がせようとしたが、腕を掴まれてしまった。「綾芽、君はたぶん……暫く海外に行かないといけないかもしれない」「海外に?どうして?」綾芽はかなり驚いていた。以前から二人は人の目を避けるために、いつもあまり一緒にいられなかった。そして、ようやくどうにかして彼の子供を生んだ。遠距離恋愛で少しずつ彼に近づいていったというのに!「暫くの間だよ、安心して。ばあちゃんが帰って会社が落ち着
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第158話

「あんた、それでも男なの?慶!」綾芽はこの時、本気で発狂し、泣き叫びながら、慶の顔を叩いた。彼もそれを避けることなく、彼女の気が済むまで、好きなように殴られていた。そして綾芽は疲れて力尽き、ようやく手を止めた。「本当の事を話して、俺らが一緒にいられると思うか?ばあちゃんのところにはじいちゃんの遺言がある。知られれば黒崎家の全てが俺たちとは無関係になる。俺が全てを失ったら、どうやってお前と颯太を養っていけばいいんだ?もし一花にこの事を知られれば、俺たちの事はスキャンダルになる。そうなれば南関市での俺らの立場はなくなるんだぞ?」慶の話に現実を突き付けられ、その一言、一言が冷たく綾芽の心を貫いていった。彼女は今実家とは縁を切ってしまっている。慶までも黒崎家から捨てられてしまえば、二人はどうやって颯太を育てていけばいい?綾芽が静かになり、慶も額を押さえて深呼吸した。「これ以上騒ぎを大きくしたくないんだよ、綾芽」「その親子鑑定の結果は誰が送ってきたの?」綾芽は何か思い立ったらしく、突然瞳を暗くさせた。慶は頭を横に振った。「分からない。だけど、俺たちの事を知ってるなら、きっと近い人だろう。以前の友人とは暫く連絡をとらないでくれ。あの三谷さんともだ」「私の友達を疑ってるの?」綾芽は信じられない様子で彼を見た。「最も疑うべきは水瀬一花でしょ!」「一花」の名前を聞いて、慶はまるで雷に打たれたかのようなショックを受けた。そしてすぐに反論した。「絶対に一花の仕業じゃない!」「どうしてそう言い切れるの?よく考えてもみて、今彼女のあなたに対する態度は以前と全く違うでしょ。私が引っ越してきてから、あの女は会社の事にはノータッチ、私たちの関係もお義母さんに知られてしまったし、今颯太まで……」綾芽は自分で言いながら、だんだんおかしいと思い始めた。女の勘が、この全ては水瀬一花に関係があると告げている。「考えすぎだろ」自信たっぷりな綾芽の言葉に、慶はまったく耳を貸そうとしなかった。もし、一花が二人の関係を知っていれば、騒ぐはずだ。どういうことか説明しろと迫ってくるはずだろう?慶と一花の婚姻は偽物だ。彼女が騒がずにそのまま去っていくなら、何も手に入らないで離れることになる。「慶、絶対に水瀬一花よ!あの女は私達に復
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第159話

恭平は慶には劣っていたが、彼はもっと早くに一花と知り合っていた。入学式の時に、二人は出会った。一花の学習態度は非常に真面目で、恭平は彼女と一緒に授業を受けて、自習も付き合った。この男がいると、慶が一花を口説く邪魔になった。だから、恭平が学部を変更したいと知ると、綾芽は自ら手伝ったのだ。しかし、恭平は経済学部からいなくなる前に、学部学生の目の前でロマンチックな告白を一花にした。その時、全員が彼の後押しをしようと応援していた。綾芽は慶が居ても立っても居られない様子を見ていた。しかし、一花は恭平が恥をかくことも一切気にせず、大勢の前ではっきりと告白を断わった。その日、恭平が大勢の前でメンツを潰されて、ショックを受け、その場で泣き崩れたのを綾芽は今でも覚えている。あれは本当に恥ずかしいシーンだった。それで彼は経済学部の同級生との付き合いは一切断ってしまった。そして卒業してからグループ内でまた復活したのだ。記者……これはまた一花と深い縁がありそうだ。綾芽は脳裏にある考えが浮かんだ。すると彼女はすぐに恭平に連絡をとることにした。まずはお祝いの言葉を送り、それから近況について尋ねた。恭平は綾芽にはとても親切だった。綾芽は大学の女神的な指導教師で、みんな彼女のことが好きだった。そんな綾芽が学部を変更する手続きを親切に手伝ってくれたのだ。【水瀬一花さんのことを覚えてる?】【えっと……突然ですね。大学時代のことはもうすっかり忘れましたよ】恭平の言い方から、綾芽は相手がまだ引きずっていると確信した。綾芽は恭平に電話をかけた。綾芽は今いらついていて、単刀直入に恭平にどういうことなのか伝えた。恭平が一花の本性を暴いた記事を書いてくれるのを期待していた。グループ内のほとんどが卒業してから慶と一花が結婚したことを知っていて、それは恭平も例外ではなかった。綾芽は、恭平に、一花が結婚してから節度をなくし、慶を助けるためだという理由であちこち男を誘惑し、黒崎グループが2年というスピードで多くの事業を成し遂げていったのも、全て一花に由来していると話した。「そうですか、水瀬さんはそんなに恥を捨てた女だったんですね!でも俺もなんとなく分かっていました。大学時代だって男に色目使いまくってましたもん。俺と一緒にいる時、わざと俺に気があるよう
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第160話

テレビ業界では、偽の情報が飛び交うことはよくある。たとえ、嘘の記事だっとしても、一花のように力も権力も持たない孤児が記者である恭平にどうすることもできないはずだ。彼はメディア関係の能力に長けている。彼が南関テレビに就職できたのも、彼が民衆の心を引き付ける文章を書くのが得意だったからだ。如何なるニュースも彼の手にかかれば、瞬時に世間に広まり大きな影響を及ぼしていた。今回彼が一花に関する記事を書くときには、自分の感情も加わっている。彼女に心を弄ばれた被害者であるという視点から、正義感に燃える怒りを込めて一花を名門大学出身の男を弄ぶ悪女に仕立て上げた。大学時代、彼女は完全に男を誘惑する「尻軽女」で、社会に出ると手練れた「女の武器の使い手」になった。明け方、恭平はその記事をネットに上げた。彼は南関テレビ局記者が扱うSNSアカウントでそれを公表し、一夜のうちに瞬く間にその記事が炎上した。しかも、話題のネット検索トップ3にまで上がった。ネット検索で多く使われた言葉は【名門出身の高嶺の花 結婚後 南関市 ビジネス界の大物 枕】だった。恭平は記事の中には一花の名前も、学校名もはっきりと書いているが、黒崎グループに関する内容だけをほのめかすように書いていた。するとすぐに一花の同級生たちが面白がって、大学のオープンチャット、Xなどで一気に拡散していった。ネット上での話題の焦点は社会の風紀に対してであったが、一花の周りではそうではなかった。普段、一花への印象はなかなか良い。しかし、一花が美しく能力の高い女性であることに本能的に好感が持てない人も多くいた。そしてこのような記事を見た後では、一花への印象が良くても悪くても、彼女に対してマイナスなイメージが生まれてしまった。黒崎グループ内でも、一花のゴシップ記事の内容が広まった。「彼女ってこんな人だったんだ……だからどんな契約でもとれたわけか……」「いくら綺麗だからって、こんな胸クソ悪い事するべきじゃないでしょ、女の恥ね……」朝、慶が会社に出勤するとすぐにオフィス内でひそひそと話し合う声が聞こえてきた。一花の名前が耳に入ると、彼はすぐに何があったのか尋ねた。そしてすぐに慶はあの記事を目にした。この記事を書いた人物は、一花の全てを知っているかのようだった。彼の話では、一花は大
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