All Chapters of 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Chapter 481 - Chapter 490

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第481話

綾芽は慶が自己中心的で薄情、手段を選ばない人間だと分かっている。決して愛情を重視するタイプなんかじゃないととっくに見抜いていた。慶が話している間、綾芽は着替えていた。白く滑らかな背中が、彼に向けられている。彼女は「そっか」と相槌を打ちながら、今夜、どのワンピースを着ようか選んでいた。「西園寺グループの代表が今日、私をディナーに招待するの。あなた、どれが似合うか、選んでくれる?」慶もそばにあったタオルを放り投げ、手を伸ばして彼女を胸に抱き寄せた。「俺も連れて行け」彼は綾芽が何を着るかには興味がなく、ただ彼女の耳を軽く噛んだ。以前、慶は綾芽の前では態度がここまで強くなく、むしろ優しかった。だが綾芽は今、彼が変わったと感じた。傲慢で、そして冷たくなった。一花への憎しみが、彼を凶暴に変えたのだ。「何しに行くの?そんなに西園寺家の人に会いたいの?」綾芽が慶をからかい、手を伸ばし彼の体に触れた。「ああ」慶が軽く息を吸いこんだ。彼は、西園寺家の人に会いたかった。一花が自分と対面した時の表情を、直接見たかった。彼女は西園寺家の令嬢なのに、何度も自分を騙し、弄び、そして祖母を殺した。一体どんな顔をして自分に会うのか、とても見たかった。だがこれも、ただ慶の悪趣味に過ぎない。綾芽はまだ、一花が西園寺家の令嬢であることを知らない。もちろん、彼もこんなに早く彼女に教えるつもりはない。知るにしても、綾芽自身がその目で確かめるほうが、ずっと面白い。綾芽も、自分と同じように絶望するのが一番いい。それから、彼女に二人がもう一度やり直すことについて話させよう。もし一花が、ギャロップから来た人物が綾芽だと知ったら、綾芽の運命も、黒崎家と同じようになるのではないか?慶は細めた目で、悦に浸り、自分との情事を待ち望む綾芽を見つめている。瞳の奥の嫌悪は、あふれ出そうだった。綾芽と一花は全く同じだ。一花は自分を裏切った。そして綾芽こそが……本当に彼の人生を狂わせたのだ!綾芽は慶の甘い態度に溺れている。彼がしばらくキスをすると、もうこれ以上やらず、代わりに、また要求をしてきた。「誰か付き添いが必要だろう。こんな遅くに、お前一人では心配だ」「分かった……じゃあ、私が気に入る服を選んでくれたら、あなたを連れて
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第482話

慶と綾芽とは、陸斗は今まで直接関わったことはない。だが、以前、一花に嫌がらせをするため、とっくに二人の過去を隅々まで調べ上げていた。彼は、善悪ということにこだわりがなく、ただ、どちら側に立つかだけを気にかけている。敵の敵は、つまり味方だ。慶が一花を不快にさせられるのなら、陸斗は利用するつもりだ。むしろ、彼と手を組んでもいい。だが黒崎家はあまりにも弱い。陸斗は以前、彼を支援しようと考えたが、残念ながら相手は役に立たなかった。最も重要なのは、一花の心変わりが早すぎることだ。もし慶が一花に愛を訴えかけられなければ、本当に利用価値はまったくなくなるだろう。今、和香がギャロップを強く支持しているのは、ただ一花を差し置いて会社の主導権を取り戻したいだけだ。そこに綾芽が加われば、ますます面白くなる。一花が一度でも、ギャロップとの提携を拒めば、それは西園寺グループの利益に背き、匠に逆らうことになる。もし同意すれば、それは自分に敵を一人、増やすことになる。和香のやり方は、そこまで鋭くないものだ。一撃で一花を倒すことはできないが、彼女を西園寺グループで楽ではいさせないだろう。綾芽と慶こそが、彼女を苦しめる一番効果的な道具なのだ。考えてみると、陸斗でさえ、少し同情の念を覚えた。「……」彼は上着を着替え、ちょうどオフィスを出ようとした時、ドアを開けると、夏海が目の前に立っていた。彼女は、まっすぐに彼を見つめている。まるで、何か汚れたものでも見るかのように、顔に嫌悪と信じがたい気持ちが浮かんでいる。「何してるんだ?オフィスの外でコソコソして、何を盗み聞きしてる?」陸斗がすぐに冷たい声で詰問した。もし相手が別人なら、彼は本当に不機嫌になるところだ。しかし、目の前の人物は夏海だ。彼はほんの少しだけ我慢した。特に、彼女の手に魔法瓶を持っているのを見ると、だ。「これは何だ?」陸斗は問答無用で、それを取り上げようとした。夏海が一瞬、きょとんとし、すぐにまたそれを奪い返した。「私が作った滋養のお茶です」「そうか?わざわざ俺のために作ったの?ありがとな」陸斗が笑いながら、再びそれを奪い取った。彼は昂輝の転校手続きを済ませた。あの日、帰り道で、昂輝はずっと彼に感謝していた。陸斗はついでに夏海に感謝してもらえば
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第483話

陸斗の自惚れは、夏海をイライラさせた。だが今回は、夏海はもう反論せず、陸斗が魔法瓶を開け、温かく黒い茶を一杯注ぎ、眉をひそめて自分を見つめるのをだただた傍観していた。彼女は口元を上げ、こっくりとうなずき、どうぞ、と手で合図した。陸斗は細めた目で彼女を見つめた。嫌な匂いが鼻先に漂ってきて、彼はしばらく唇を噛みしめていたが、やはり尻込みした。「今はやめとく。これは後で飲む」彼はお茶を戻し、直接蓋を閉めた。「行こう。お前を送るよ」陸斗は振り返ってオフィスのドアに鍵をかけ、何気なくそう言った。夏海は冷たく男の後ろ姿を見つめ、声音を和らげて言った。「副社長、今、私を送る暇あるんですか?あなた、これから出かけるんじゃないんですか?」「ついでだ。お前の家も遠くないしな」陸斗が軽く笑った。言い終わると、また一呼吸置いて口を開いた。「お前を送ってから、他の用事を済ませに行く」綾芽たちはまだ到着していない。それに、ホテルにはもう、二人を迎えに行く者が行かせている。陸斗はついでに夏海を送っても、時間の無駄にはならないと考えた。夏海は断らなかった。途中、陸斗の携帯がちらりと光ったが、彼は一目も見ず、電話にも出ない。夏海は我慢できずに言った。「副社長、もしお忙しいなら、私を近くに降ろしてください」「大丈夫だ。もうすぐ着くだろう」陸斗が前方を見つめながらこう言った。道両側の街路灯の灯りが彼の顔の輪郭をぼんやりと照らした。そのおかげで、彼が珍しく嫌みがなく、さわやかなイケメンに見えてくる。だが夏海は、彼の顔を眺める気はなかった。彼女はどうやって陸斗の口から役立つ情報を引き出し、一花に伝えるかを必死に考えていた。一花は今、会社にいない。敵の細かい動きは、どうしても防がねばならない。「副社長、あなた、接待があるんじゃないんですか?」陸斗が少しも語ろうとしないのを見て、夏海はやはり我慢できず、自ら口を開いた。案の定、陸斗が彼女を横目で一瞥し答えてくれた。「ああ、そうだよ」「とても重要な顧客なんですか?」夏海が陸斗の上着を指さした。彼はわざわざ新しい服に着替え、ようやく薄くなっていた香水の匂いが、今はまた鼻をつくほど濃くなっている。夏海が調べたところ、陸斗が取引先に会う時は、香水の匂いがいつも強いそうだ。「そ
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第484話

「俺がそういうことしなければ、お前は一花君に話さないのか?」陸斗の一言に、夏海は言葉に詰まった。彼女は一瞬、きょとんとして、すぐに尋ねた「どういう意味ですか?」「俺のオフィスで盗み聞きしておいて、なんでまだそんなに威張ってるんだ?俺、お前にとてもよくしてるのに、お前はどうしても一花君のスパイになりたいなんて、本当に心が痛むよ」陸斗は非常に落ち着いた口調でそう言いながら笑っている。完全に彼女をからかうのを楽しんでいる。彼は夏海をからかうのが好きだった。だが、彼女の企みが分からないというわけではない。もともと、陸斗は確かに、彼女が自らお茶を持ってくるので、今回は見逃してやろうと思っていた。だがあれこれ考えてみると、万一、これを台無しにしたら、その責任を背負うのは自分だ。この小娘が、彼のことを探り出す時には、少しも良心を持たないようだし。それなら、もうこれ以上演じるのもやめよう。夏海は顔色が青ざめた。「私、盗み聞きしてません。あなたにお茶を持ってきただけ……」「何を聞いたんだ?」陸斗が彼女の話を遮った。だが夏海が口を開くのを待たず、また言った。「まあ、どうでもいい。この取引が決まるまで、お前はずっと俺と一緒にいろ。俺も、お前に何かはしない」「西園寺さん、あなたは本当にここまで図々しい人なんですか。紳士なら、人が困っているところに、わざと相手を落とすこともしないんですよ。私のあなたへの信頼を盾に、私をはめようって思っているんですか」夏海は焦った。だが話す時は、やはり可哀想な様子で、悲しい表情を浮かべた。陸斗は彼女を一瞥し、突然、道端に車を停めた。夏海が気づかない間に、強引に彼女の携帯を奪い取った。もし夏海がすでにメッセージを送っているのを見ていなければ、彼は本当に自分が行き過ぎた行動をし、またしても純粋な女性を傷つけたと思うところだった。「西園寺陸斗、あなた、最低よ!」夏海の力は、もちろん陸斗には及ばない。彼が本気を出すと、彼女に反撃の余地は少しもない。携帯を奪われた後、陸斗は一目も見ずに強引に電源を切り、自分のポケットにしまった。「ああ、俺は最低だよ。紳士じゃない。その点、お前はとっくに自分の心の中で決めつけた事だろ?」陸斗は軽く息を弾ませた。だが、この言葉を口にする時、夏海が少し怒り
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第485話

もともと、今回、西園寺グループから来るのは、謎めいた西園寺家の令嬢か、あるいはその西園寺匠の妻だろうと思っていた。彼女は西園寺グループの現在の最高責任者は、その令嬢だと聞いている。だが西園寺家の内部には、数人のかなり権力を持っている管理職がいる。中でも、匠の養子は、どうやらその一人らしい。目の前のこの人物が、多分、その人だ。「はい。私は西園寺グループ副社長、西園寺陸斗と言います」陸斗が綾芽と握手すると同時に、横目で慶を一瞥した。慶が陸斗の言葉を聞き、すぐに理解できた様子だ。「西園寺副社長、ご冗談を。南関市にもはや、黒崎グループという会社はありません。私も、もう社長ではありませんよ」彼は以前、ずっと自分が西園寺グループの令嬢と知り合いになったと思っていた。一花が西園寺家の娘である真実を知り、ようやく分かった。当時、西園寺グループに投資したがっていた人物は、絶対に彼女ではない。陸斗のこの一言で、慶はすぐに理解した。黒崎家に投資したのは、陸斗だったのだ。彼もまた、西園寺グループについて少し調べていた。匠の養子は、その妻とともに西園寺家に入ったのだという。公開された資料によれば、匠のほぼ全財産は、実の娘に渡されている。そんな情報を見れば、誰がどう見ても、陸斗と一花が仲がいいはずがないと気付く。彼が一花を差し置いて、黒崎グループに投資したことは、彼の考えが正しいと証明できた。残念なことに、養子はやはり実子には敵わない。そうでなければ、黒崎グループもこんなに早く破産しなかっただろう。だが慶は今、すでに悟った。自分の態度を低くすることも、悪くはない、と。少なくとも、彼らはもう、訳のわからない勢力に押さえつけられ、真相を知らされずにいることはない。「黒崎社長、そんなに失望しなくてもいいと思いますよ。世の中は常に移り変わり、明日は何が起こるかも分からないんですよ。今、輝かしい西園寺グループであっても、十年後、没落しないとは限りません。そう思いませんか?」陸斗が軽く彼を慰めると、すぐに二人に座るように勧めた。慶は陸斗を見つめ、表情を変えずにまた言った。「西園寺副社長、今日の食事は私たちだけですか?」「ええ、おもてなしも行き届かず、申し訳ありません。明日、契約が終わった後、改めて盛大に祝いましょう」
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第486話

夏海を連れ去ったのは、他でもない、茉白だった。誰も茉白がどこから現れたか知らないが、実は彼女はなんとずっと彼らを尾行していたのだ。夏海が陸斗の手下にホテルに軟禁されると、彼女はすぐに警察に通報し、人を連れてドアを破り、夏海を連れ出した。今、彼の手下はまだ警察に拘束されており、彼の到着を待っている。だが、これらの事を、陸斗は少しも心配していない。彼にとっては、ただ少し面倒になり、数本の電話をかけるだけで解決できることだ。むしろ、夏海が茉白に連れ去られたことが、彼には実に腹立たしい。二階堂茉白という女はまさかヒマを持て余しているのか?どうして彼のことに頭を突っ込んでくるのだろう。時間はもう遅い。こんな夜遅くに、陸斗が二階堂家まで人を迎えに行くわけにもいかない。彼と二階堂家にも、特に縁はない。事を大きくすれば、たとえ茉白が痛い目にあうだろうが、彼にも嫌な思いをさせるだけだ。だが陸斗は知っていた。茉白は二階堂家に何の発言権がなく、夏海を二階堂家に連れて行けるはずがない。陸斗は待ち伏せすることにした。もしかすると、夏海が家に戻ってくるかもしれない。案の定、夏海は家にいない。陸斗はひどく腹を立て、彼女の家のドアを蹴りつけた後、やっと夏海の携帯がまだ自分のポケットにあるのを思い出した。だが、電源を入れるにはロックを解除しなければならない。陸斗がいろいろ試したが、まったく成果がなかった。だがすぐに、ロック画面が表示された。夏海が学校で撮った一枚の風景写真だった。午後の日差しが心地よく、彼女が目を細め、手のひらで額を押さえ、生き生きした様子で、温かな陽の光に包まれている。陸斗がロック画面に映る夏海を見つめ、体を壁にもたれかけ、一瞬、心が少し乱れた。夏海が住んでいるのは古い団地のアパートで、廊下は狭く、光は薄暗い。すぐに、センサーライトが消えてしまい、陸斗が、まるで幽霊のように闇に沈んだ。彼は夏海は今夜、家に帰らないかもしれないと考えた。彼女は今、おそらくもう一花に連絡を取り、状況を説明しただろう。彼がここで待ち続けるより、早めに対応策を準備したほうがいい。それに、一花は今南関市にいない。たとえすぐに駆けつけてきても、彼女には西園寺グループとギャロップの提携を阻止する理由は、何もない。理性的に分析す
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第487話

これほど強情な女は珍しい、少なくとも陸斗にとっては、かなり魅力的だった。彼の怒りは一瞬で消え、支配欲が思考をもたげた。力を込め、突然夏海の腕をつかみ、彼女の体を自分の胸に抱き寄せた。夏海は以前のように激しく抵抗せず、ただ手のひらをそっと彼の胸に当て、無理に少し距離を保とうとしていた。「俺がどれだけ腹を立ててるか、分かってるのか?」陸斗の冷たい息遣いは夏海の額を掠め、彼女は眉をひそめた。彼はあいまいな態度を取っており、話す時、軽く女の耳の後ろにかけた髪を弄んだ。陸斗から見れば、これはごく自然な動きだ。夏海と彼は、とっくに微妙な関係になっている。「副社長の気持ち、私には分かりません」夏海が僅かに口角をつり上げ、その目には何の感情もなかった。「私は副社長のことをあんなに信じていました。こっそり連絡を取るため、一花さんの制止も無視しました。それなのに、あなたは私にあんなことをするなんて……私は退職して、引っ越しを考えたほうがいいでしょうか?そうすれば、副社長、私を見逃してくれますか?」「はっ」陸斗が笑い声を上げた。この女、逆恨みする才能はなかなかだ。彼女のほうがわざと彼に近づき、彼を試し、裏で一花に報告しようとしたのに、ほんの一言二言で、自分を彼に弄ばれた哀れな人に仕立て上げている。陸斗は、猫を被った女性に接したことがないわけではない。だが夏海のようにある意味誠実な女は、初めてだ。彼は夏海の顎を持ち上げながら言った。「俺に、お前を見逃してほしいのか?」夏海は相変わらず、静かに彼を見つめていた。「副社長、もう遅いです。私は家に帰りたいんです」言い終えると、夏海はようやく陸斗を押しのけ、彼に背を向けてドアを開けようとした。陸斗がうつむき、地面の吸い殻を靴のつま先で払いのけると、振り返り、すぐに夏海について部屋に入った。夏海がもう一度追い出そうとしても、もう間に合わない。陸斗が彼女の手をつかみ、ドアを素早く閉め、自分の体を彼女の前に押しつけながら、笑みを浮かべた。「お前、今日、俺の大事な仕事を台無しにしそうになった。それに、俺をこんなに怒らせたんだ。今夜は、お前の家に泊まらせてもらうぞ」陸斗は彼女に相談するのではなく、その言葉を言い終えると、大股で夏海の寝室へ向かった。彼は自分が何をしているの
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第488話

「今日、一花君に何て言ったんだ?それに二階堂家の小娘も、ヒーローのマネをして、どうしてお前と一緒に帰ってこないんだ」陸斗は、もちろん恋に惑わされるような人間ではない。夏海が家に戻ってくるのは、絶対事情が解決したからだ。彼女は賢い。一花がまだ西園寺グループにいる限り、陸斗は彼女に何もできないと分かっている。和香も彼に、一花を徹底的に倒す前には、問題を起こすなと言ってある。特に、こんな低レベルな問題だ。夏海が陸斗をしばらく見つめ、ありのままに伝えた。「一花さんに話したこと、どうして副社長に話さなければならないんです?」三時間前、夏海は茉白にホテルから連れ出された。今日、茉白が会社を出る時、たまたま夏海と陸斗が一緒に駐車場へ向かうのを見かけた。夏海は一花の部下だ。陸斗と近づくのは、そもそも不自然なのだ。茉白は好奇心が強く、やはり我慢できず、ずっと後をつけてきた。これで、夏海が陸斗の手下に強制的に軟禁されているのを発見した。茉白は用心深く、夏海の部屋番号をメモした後、陸斗がまたレストランへ行くのを見て、フロントで様子をうかがっていた。このホテルは和香の実家、白川家が経営しているもので、彼女はもちろん情報を聞き出せない。茉白は少し考え、やっぱり侑李に電話をかけた。この時間、侑李はまだ寝ていなかった。彼は地方出張で、まだ接待中だった。茉白が状況を説明し、侑李にホテルの名前を伝えた。侑李の友人は、南関市のすべての大きなホテルを監督する職業をしているので、もちろん、ホテルに泊まる人を見つけられる。今夜、予約されたVIPの情報を、調べるのはとても簡単だ。茉白が夏海を連れ去ってから間もなく、侑李から連絡がまた来た。陸斗が会ったのは黒崎家の人間で、案の定、一花と関係があった。夏海はすぐに一花に電話をかけ、状況を説明した。陸斗が何を企んでいるのか分からない。今、勇は国外におり、侑李も仕事に追われている。西園寺グループの機密情報は徹底的に管理されており、一花でさえ知らない状況なら、彼らがすぐに状況を把握するのは難しい。だが侑李は茉白には心配しなくてもいいと伝えた。後で自分で何とか調べると。一花はこの連絡を受けると、とても冷静だった。彼女はとっくに、自分が西園寺グループにいない時、和香たちが騒ぎ
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第489話

「須藤さん、一花君の元で働くのは、そんなに良いのか?」陸斗は、どうしても理解できない様子だった。一花は夏海の実の姉ではない。ほんの少しの恩義があるだけだ。本当に権力と金よりも人生に大きな意味があるのか。夏海が淡々と答えた。「副社長、逆に聞くんですけど、西園寺社長のために、人を陥れることで自分の利益を得るというのは、そんなに良い気分になりますか」「はっ」陸斗がまた鼻で笑った。「社長は俺の母だ。それに、彼女には彼女の立場がある。一花と対立する立場にいるだけで、悪役になったわけか」「西園寺グループは、一人のものではありません。もしあなたと社長が望めば、完全に平和に共存できると、私は信じていますが」夏海はそう言いながら、体の向きを変えて寝室に入り、布団を変え始めた。彼女は、陸斗と同じ寝具を使いたくなかった。まだ洗うまえで、捨てようと思っていた一式があると思い出した。汚くないので、彼に一晩、我慢して使わせようと考えた。自分はソファで寝る。陸斗は、彼女の忙しく動き回る後ろ姿を見つめていた。心の中に、言いようのない温かみを覚えた。家では、いつも使用人が彼のベッドを整えている。彼は幼い頃から、お坊ちゃんとして慣れきったことだ。だが、物事がついて以来、家族の誰一人、彼にこんなことをしてくれたことはない。もしかすると、夏海の雰囲気があまりにも庶民的で、かえって彼に家族のような親しみを与えているのかもしれない。彼女が自分のためにベッドを整えるのを見て、彼の心は少し温かくなった。陸斗が鼻をこすった。夏海に対する少しの不愉快の感情も、完全に洗い流された。そして彼は、口を開いた。「平和に共存するのが容易だと思うか?西園寺グループの基礎には、母の半分の功績がある。匠さんの遺言は、完全に彼女を裏切ったと言える。お前だったら、自分が半生をかけて築いた功績を、無償で人に譲り渡せるか?」「でも、それは西園寺匠さんの過ちです。一花さんが背負うべきではありません。それに、一花さんもずいぶん苦労しました。今、家業を継いで、苦労の末にやっと報われたんです。彼女はそれを盗んだわけでも、奪ったわけでもない。得た相続権を、どうして人に譲り渡さなければならないんですか?」夏海は依然として、静かに話した。彼女は、和香と陸斗にはそれぞれの立場があると知
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第490話

陸斗は口角を上げ、振り返って浴室に入った。浴室のドアが閉まる音を聞くと、夏海はすぐに部屋に戻り、陸斗の携帯を手に取った。夏海の家の近くに、個人で経営している携帯の修理屋がある。店主は、少しハッキングの技術を持っている。以前、彼女の携帯やパソコンが何度かロック解除できない時、店主が手伝ってくれた。だが、他人の携帯内のデータを見る行為は、明らかに不正だが……夏海は長い間、迷った。それでも歯を食いしばり、店の方へ行った。陸斗の携帯のパスワードは、夏海の設定よりはるかに複雑だった。店主はしばらく時間をかけて、ようやくロックを解除した。だが、ハッキングプログラムなので、持続時間は長くない。夏海が携帯を取ると、すぐに部屋の隅でギャロップ関連のプロジェクトデータを探し始めた。あれこれ構わず、まず録画し、一花に送信した。その後、夏海の瞳が暗くなり、鼓動もさらに速くなってきた。彼女は、こんなことをしたら、警察に捕まった場合、どんな結果を招くか知っていた。だが、陸斗が彼女の親友を死に追いやったことを思うと、またしても心を鬼にした。彼の連絡先、メッセージ、それにアルバムなど……プライバシーを探れる場所を、夏海はすべて一通り見た。だが意外なことに、陸斗のような本来なら悪い噂だらけの人物の携帯は、驚くほどきれいだった。ほとんど仕事のファイルと、少しの日常生活の記録が携帯に詰まっている。アルバムにも、変な写真はなかった。ただ、陸斗は自分のスタイルや、各種の銀行カード、クレジットカードを撮るのが好きだった。おそらく、アルバムをメモ帳代わりにしているのだろう。夏海には、陸斗のプライベートの生活を知りたい気持ちなどなかった。彼女はただ、彼の携帯から、自分の親友の痕跡を見つけ、頭の中の推測を確かめたかった。だが、探しても探しても、結果は何もなかった。夏海が諦めかけていた時、アルバムの「お気に入り」と書いてあるファイルを見つけた。中に、一枚のぼやけた写真が保存されていた。メモ用紙を撮影したものだ。その上に書いてあったのは、殴り書きの文字だった。【ここまで一緒に歩いてくれてありがとう、陸斗さん】夏海はかなりの衝撃を受けた。この筆跡は、彼女がよく知るあの哀れな親友のものだ。彼女は文字を書く時、線をいつも特別に長く引く
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