All Chapters of 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Chapter 901 - Chapter 910

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第901話

「お腹が空きました?もうすぐできますよ」夏海は彼がお腹が空きすぎたのだと思い、手に持っていた皮をむいたりんごの半分を差し出した。「大丈夫だ」陸斗は穏やかに笑って、夏海の差し出したりんごを受け取らなかった。「あまりに空腹なら、ちょっとこれで凌いでください」「今食べてしまうと、君の作った料理が無駄になりそうだから。何か手伝えることはあるか?」陸斗の口から「手伝う」という言葉が出るのは、やはり少し珍しかった。夏海は思わず笑った。「いいえ、お坊ちゃまは休んでいてください」「俺はもう、お坊ちゃまなんかじゃないよ」陸斗は低くそう言い、夏海の指示を待たずに、自分で洗ってあったネギを切り始めた。「それに、もし君が突然来たくなくなった場合、自分で何か食べるものを用意できるようになっておかないとな」その言葉に、夏海は野菜を切っていた手を止め、何も言わなかった。麺はすぐに茹で上がり、スープを加えて、ネギをちらし、まさに色と香りも豊かな一品ができあがった。陸斗はもうかなり空腹で、数口で半分以上を平らげてしまった。夏海はその様子を見て、心からおかしく思った。これが、かつてのあらゆることに文句をつけていた御曹司様だろうか?まるで飢えた子供じゃないか。しかし、こういう陸斗は……以前ほど嫌な感じはしなかった。黙ってご飯を食べ終え、夏海が食器を片付けようとすると、陸斗に止められた。「置いておけ。明日、使用人が来るから」「じゃあ、私はしなくていいんですね」夏海はそう言ってうなずいた。陸斗は彼女が立ち上がって荷物をまとめるのを見て、長い間躊躇って言わなかった言葉を、ついに抑えきれなくなった。「ああ、そうだ……」「まだ何かあります?」夏海は顔を上げ、陸斗の澄んだ瞳を見つめた。二人の間の心の壁は、この瞬間から完全に取り払われたかのようだった。「俺は……」陸斗が長い間迷って、結局何も言い出せずにいるのを見て、夏海の目が微かに泳ぎ、彼女の方から先に口を開いた。「今日は本当にもうここに残れません。家に帰らなくちゃ。でも、これから夜、あなたが一人で話し相手がいない時は、メッセージをくれてもいいですよ」夏海は、陸斗に対する見方をとっくに改めていた。彼には彼女の嫌いな一面もあるが、決して極悪非道な人間
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第902話

しかし、それは画面越しだから、考えすぎなのかもしれない。【今からゲームしますか?今夜はちょっとだけできますよ】夏海が自ら誘った。今度は相手の返信が速かった。【いいよ、パーティー組むから待ってて】すぐに二人はプレイし始めた。夏海の上達は早く、もう以前のようなぎこちなさはなかった。主力を務めるほどではないが、連携は非常に良く、三連勝を決めた。その時、タクシーが家の前に着いた。夏海はゲームを終了し、メッセージを送った。【ちょっとネットワークを切り替えますから、少し待ってて】【今、帰ったところか?】夏海が部屋に戻ると、相手から送られたメッセージが目に入った。続けて返信する。【ええ、今帰ったところですよ】【今日は一日中外にいたのか?】【そうですよ。あなたは?今日は何をしてました?】夏海の口元が綻んだ。珍しく誠が自分のことを尋ねてくるから、彼女の心はなぜか少し高鳴っていた。【今日は、俺も友達と一緒にいた。ちょっと出かけてたんだ】【友達?前にいた組織の友達なんですか?】夏海は少し心配になった。誠は以前、自分は監視されている状態だと言っていた。こんな時は、一人でいるのが一番安全なはずでは?でも……友達がいるのもいい。一人で放浪し、世界中を渡り歩く哀れな姿を見るよりはましだ。【俺のことはいいから、君のことを話してくれ】突然、相手のメッセージが不自然に話題を打ち切った。【私のこと?】【ああ。今日はどうだった?】【まあまあですね】【やっぱり友達と?】夏海は勿体ぶらずに、陸斗の世話をしていたことを話した。【二人の関係は、だいぶ改善したみたいだな?】夏海は誠の前で認めたくなかったが、嘘をつくのも良くなかった。【前に彼とちょっと誤解があって。今は確かに、そこまで嫌いじゃなくなりました】メッセージを送ると、向こうはしばらく静かになった。【ただ……嫌いじゃないだけか?】夏海の胸が微かに熱くなり、画面をしばらく見つめてから、ようやくメッセージを返した。【嫌いじゃないですけど、私と彼は住む世界が違います。友達になっても、そんなに仲良くなれるとは思えません。だから、その程度で終わりだと思います】陸斗が自分に好意を持っているのは分かっているが、彼女の心の中では
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第903話

柊馬と一花の結婚式の三日も前から、二人は京原市に到着していた。今回の結婚式のために、伊集院家は京原大聖堂の近くに新しい豪華な屋敷を一軒購入し、その名義は一花一人だけにし、結婚式当日花嫁を迎える場所とした。さらに、京原大聖堂の隣にある最高級の七つ星ホテルをすべて貸し切り、賓客をもてなした。柊馬と一花は今や国内のビジネス界の頂点に立ち、二人の結婚式のニュースは瞬く間に広がり、最近のメディアが競って報じるホットな話題となっていた。二人の結婚に少しでも関連する情報は、すぐに注目を引く。二人の披露宴に招待されたビジネス界の賓客や芸能界のスターなども話題となり、さまざまな偽のゲストリストがネット上で飛び交った。多くのビジネスマンが事前に周辺のビルやスタンドを借り、すでにネットでチケットを販売し始めており、視界の良い場所の席のチケットは一枚数十万にもなった。「世紀の結婚式……世界の注目……国民的な模範夫婦って?私たち、ちょっと大袈裟じゃない?」一花は一番有名な新聞社が自分たちの結婚式を報道しているのを見て、驚いてしまった。他のメディアが騒ぐのはまだしも、どうして……ここまで有名な新聞社まで宣伝してくれているの?柊馬は気にした様子もなく言った。「俺たちにその価値があるからじゃない?今回の結婚式は、世界に我が国の伝統文化を宣伝し、国内経済を活性化させるきっかけになる。だから当然、事前に盛り上げる必要があるんだ……それに、南関市での俺たちのビジネス活動も、国や家から認められているんだ。今の俺たちは、まさに一番都合のいい宣伝手段だぞ」柊馬の言うことは一花にも理解できたが、それが彼女の最も心配するところでもあった。「何もかもいいところと悪いところを持っているのよ。今の私たちはかなりいい評価だけど、将来、もし転んでしまったら大変だわ」一花は眉をひそめ、どこか漠然とした不安を感じていた。柊馬は彼女のそばに歩み寄り、身をかがめて彼女の眉間のしわにキスをした。「君が俺から離れず、愛し続けてくれれば、俺たちはそんな目に遭わないよ」一花は目を細め、口元に微かな笑みを浮かべた。柊馬のシャツの襟元は開いており、彼が身をかがめた時、中に覗くくっきりとした胸筋のラインが露わになった。彼女は手を伸ばし、そっとシャツの裾を掴み、少
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第904話

「嘘じゃないですよ。あなたは三条社長と自分がどんな関係なのか分かっているはず!住所は送りますから、どうするかは……あなたが決めてください」綾芽はそう言い終わると、すぐに電話を切った。一花は顔を暗くさせた。柊馬もこの時、綾芽の話が聞こえていた。彼は眉をひそめた。「とりあえず落ち着いて。人を手配して確かめさせるから」そう言い終わると、柊馬は電話をかけ始めた。一花は綾芽が送ってきた住所を見つめ、突然胸の奥が苦しくなった。そして三十分後、一花はやはり病院の手術室の前に姿を見せた。柊馬はすでに病院のほうには確認を済ませており、綾芽が言ったことは本当だと分かった。確かに、三条という名字の患者が交通事故で急患で運ばれてきたらしい。手術室の外には、綾芽と一緒に浩之の部下や友人たちもいた。一花と柊馬の二人と一緒に来ていた部下がすぐに状況を確認した。「西園寺さん、来てくれたんですね」綾芽が一花に近づくまえに、柊馬と傍にいたボディーガードが綾芽の前に立ちはだかった。綾芽も無理に近づくことがなく、ただ一花を見つめた。「西園寺さん、こんな時に、過去のあなたとの確執を持ち出したくありません。今はお互いにそれは置いておきましょう。浩之はあなたの血が繋がったお兄さんですよ。彼のためにも、穏やかにいきましょうよ」「それは面白いわね。あなた、私とトラブルを起こしたくないのか、それとも三条社長のために私には特別に寛容さを見せてほしいと思ってるの?」一花はこの時かなり気分が沈んでいた。しかし、綾芽に対しては鋭さを衰えさせることはなかった。柊馬のほうは口を開くことすらも面倒で、ただ一目だけ綾芽のほうに向けた。それで綾芽にまた何か言わさずに、強制的に外に引きずりだそうとした。「あんたたち、何するの……」「何って?もちろんあなたがいるべき場所に送ってあげるだけよ」一花がそうつぶやくと、柊馬が体の向きを変えて一花を懐に抱きしめた。まるで綾芽の傍にいると一花が穢れるとでも言いたげな行動だった。傷つけることはないが、綾芽に対する侮辱だった。ギャロップはどうやら綾芽への責任追及をするつもりはないらしい。一方で一花側は一歩も譲る気はなかった。一花が許す気がなければ、綾芽はすぐにただ調査される状況から、刑務所送りにされてしまうこ
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第905話

浩之が事故を起こす前に電話していたのが綾芽だ。だから、事故に遭ったその一部始終を綾芽は電話越しに聞いていた。当時、浩之は車の中で柊馬と一花の結婚式に関するニュースを聞いていた。浩之はそのニュースに気をとられていたせいで交通事故を起こしてしまったのだ。綾芽は事故が起こるとすぐに救急車を呼んだ。もし、あと数分でも遅れていたら、今浩之はこの世にいなかったかもしれない。柊馬は綾芽にそれ以上騒ぐ機会を与えず、ぎろりと一瞥し、彼女を強制的に連れて行かせた。その瞬間廊下は静かになった。一花と柊馬は病院に来る途中に浩之の事故の状況について聞いていた。だから、綾芽が嘘を言ってはいないと分かっていた。しかし、綾芽のような人に対して、一花は何の理屈も語りたくなかった。この時突然、手術室のドアが開き、医者が急いで中から出てきた。ドアの周りには大勢が取り囲んだ。浩之の親しい友人は多くなく、数人の年配者くらいだった。今、ギャロップでは管理職についていて、彼らがここにいた理由も、今浩之が持っている財産が会社の経営と関係があるからだ。浩之がもしこの世を去れば、ギャロップは大きな影響を受けてしまう。「どなたか患者さんのご家族の方はいらっしゃいませんか?すぐに輸血が必要なんです」医者の焦る声で、廊下はしんと静まり返った。数人の三条家の年配者たちは互いに目を合わせ、みんな後ろにさがっていた。すると医者がまた尋ねた。「いらっしゃるなら早く教えてください。病院の輸血が足りていないのです」医者が焦ってそう言った時、一花が一歩前に出て、落ち着いた声ではっきりと言った。「私の血を使ってください」すると柊馬は即座に彼女の腕を掴んだ。その力は少し強かった。「一花……」一花は彼のほうへ振り返った。「大丈夫。献血するくらいだから問題ないわ」「……」一花の決意した表情を見て、柊馬はまた心配になったが、その気持ちは抑え込んだ。看護師がすぐにやって来て、簡単な質問をした後、一花の血液検査と準備に行った。柊馬は暗い顔をして彼女のすぐ後に続いた。採血はすぐに終わった。しかし、一花の顔色はすぐに青くなった。柊馬はずっと彼女の傍にいて体を支えてあげていた。一花は何を考えているのか、ずっと上の空だった。看護師がブド
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第906話

「患者さんは命の危険から脱しました。輸血が間に合ったおかげです」三条家の年配者たちはその言葉を聞いて安心した。そしてその場に残した者にいくつか言いつけて、その場を去っていった。柊馬と一花がいたので、彼らは失礼のないように挨拶を交わそうと思ったが、柊馬の周りを凍り付かせるような雰囲気に、誰も近づくことができなかった。浩之は一般病棟の部屋に移された。この時まだ目を覚ましていなかった。柊馬は一花を休ませに行きたかったが、一花は彼の手首を掴んだ。「分かったよ」一花が何も言わずとも、柊馬は理解してそう言った。二人はすぐ近くにある休憩スペースで夕方までいた。そしてやっと、部下が急いで報告に来た。「旦那様、奥様、三条社長が目を覚まされました」一花は柊馬の懐に埋めた顔を上げたが、彼女が口を開く前に柊馬が先に言った。「見に行ってみよう」この時、一花はまた彼の腕を掴んだ。「やっぱり、もう帰りましょう」柊馬は躊躇することなく、一花の手を繋いだまま立ち上がった。「ダメだ、さっき採血して輸血までしたし、ここまで待ったんだよ。少なくとも、一目だけでも会ってから帰ろう」浩之の病室の前まで来ると、一花はなぜだかとても緊張してきた。一花はこれまでの人生で様々な人間に出会ってきた。しかし、まさか血縁者に会うなどとは一度も思っていなかった。それに彼女の中でその血縁者をどのような位置に置くべきなのか、どのような感情を持てばいいのか、一花もよく分からなかった。柊馬は優しく一花の瞼にキスをし何も言わずに彼女を励ました。暫くして、一花は病室のドアを開けて入っていった。部屋の中は静かすぎて、自分の心臓の音だけが聞こえた。大きな部屋には他には部外者は誰もいない。浩之はまるで一花を待っていたように、ベッドに真っ青な顔で弱々しく横たわっている。普段の様子と比べると、一気に老けたような気がした。一花は彼のベッドの前までやって来て、傍にある各種の機器に目を向けた。複雑な思いが心の中に渦巻き、暫くしても何を言えばいいのか分からなかった。浩之もじっと静かに一花を見つめていた。一花が病室のドアを開けて入ってきた瞬間、彼の瞳の底には感情が大きく渦巻いた。浩之はこの時、全く力ない様子で、喉を何度か動かし、どうにかして声
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第907話

しかしこの時、浩之は一花に謝罪するばかりで、他の話は何もできなかった。「そもそも期待なんてしていなかったんです。だからがっかりすることだってないでしょう?」一花は淡々とそう言った。浩之はその言葉に微かにまつ毛を震わせた。彼は複雑そうな顔をし、最後には果てしない寂しさを感じた。「確かにその通りだね」「治療に専念してください」一花はその時、良い気持ちがしなかった。浩之が力なくそこに横たわっている様子を見ると、一花も心が締め付けられた。その弱々しい様子を見ると、一花も心が締め付けられたが、それでも、彼と兄妹として親しく接することは気まずくてできなかった。「……」浩之は口を開いたが、一花を呼びとめる言葉が見つからず、ただ彼女の後ろ姿が遠ざかっていくのを見つめるしかなかった。柊馬は病室の外に待機していて、一歩も動かなかった。一花が出てくると、柊馬がすぐに彼女に近寄り手を握った。一花の指先はとても冷たく、その表情からはどんな感情も読み取れなかったが、全体的に疲労感を漂わせている。「大丈夫?」彼は低い声で尋ね、彼女の冷え切った手を温かいその手で包み込んだ。一花は頷き、微かに笑顔を見せた。「行きましょう」車に戻ると一花はやっとほっと一息つくことができた。彼女は柊馬の肩にもたれかかり、目を閉じた。柊馬は彼女の長い髪を優しく撫でた。「疲れたら少し休んでいたらいいよ。俺はすぐ傍にいるから」一花は目を閉じたまま両手で柊馬の大きな手をいじっていた。「柊馬、あなたが傍にいてくれて本当に良かった」「俺もだよ」すると彼は一花の額にそっとキスをした。雲苑に戻る前に、一花は本当に眠りについてしまった。柊馬は彼女を抱きかかえて寝室まで運んだ。深夜、柊馬の携帯は鳴り続けていた。一花を起こしてしまうのではないかと思い、彼は携帯を持って下に行った。「何事だ?」「あの女に逃げられました」相手は戦々恐々とした様子で話した。柊馬の目はその言葉を聞いた瞬間、凍り付くように冷たくなった。結婚式を目前とし、綾芽が京原市で何か大きな騒ぎを起こすことはなくとも、何らかの災いとなるのは間違いない。だから柊馬は機会を見て彼女を捕まえさせ、何らかの「根拠のない罪名」を用いてもいいから、まず彼女を警察に
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第908話

綾芽が目を開けると、目の前には屈強な男二人が立っていた。二人はマスクに帽子を被り、そのうち一人は小型銃を弄んでいた。「あ……あんたたちは……一体誰よ……西園寺一花が差し向けたの?」綾芽は恐ろしさで声が出せなくなりそうだった。あまりの恐怖に体が小刻みに震えた。彼女は車から逃げ出した後、排水溝に身を隠していた。柊馬の部下が彼女を探すのを諦めて帰ろうとした時に、誰かに突然襲われてしまったのだ。そして今目を覚ますと、縛られてよく分からない場所に連れて来られてしまった。二人の男は互いに目を合わせると、そのうち一人が綾芽の傍に近づき、小型ナイフを彼女の顎の下に置き、上を向かせた。「演技はよせ、おまえは西園寺一花の友人だろ?今すぐ彼女に電話して助けを呼ぶことだな、もし拒否するなら……」「あなた達何か勘違いしているわ!私は彼女とは友人でも何でもないんだから!」男が話し終わる前に、綾芽は反応してすぐに甲高い声で男の言葉を遮った。あまりに恐ろしく、呼吸が加速し、もうどうにかなりそうだった。「友人ではない?」ナイフを持った男が少し驚き、隣で待っている仲間に目を向けた。どういうことだ?誘拐するのを間違えたのか?この二人はあの「青空」のメンバーだ。亮が国内で自ら選び抜いた新人だった。少し前に任務に行き、戻ってくると亮が誰かに陥れられたと聞いた。今、国内の組織は潰され、「青空」の海外での勢力は他の人間が継いでいる。二人もすぐに国内から離れるように通達を受けた。しかし、彼らにとって恩のある兄貴分の亮が誰かに陥れられたと聞くと、彼らも、はいそうですかとおとなしく引くわけにいかなかった。組織の裏切り者である誠は未だ逃げている。そしてボスの亮を牢屋送りにしたのは一花と柊馬で、その二人は堂々と結婚式の準備をしている。国外に逃げるとしても……最悪、ボスの憂さ晴らしをしてからではないと納得できない。それで二人はまず、一花を誘拐する計画を立てた。しかし、一花と柊馬はあまり外出せず、周囲にも多くの人がいるため、なかなか手を出すのは難しい。そして彼らに残された時間は多くなかった。それで二人はプランBに変更し、一花や柊馬の近くにいる人間を狙うことにした。一花が友人に構わなかったとしても、彼らが事を大きくすれば、一花の結婚
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第909話

「小林さん、この女が言ってることは本当だ……俺たち、まじで誘拐する相手を間違えたみたいだ。こいつをこのまま捕まえておくのか?」ナイフを持つ男はため息をついた。綾芽は二人が何かを相談し始めたのに気づき、すぐに口を開いた。「あなた達、西園寺一花に仕返ししたいんでしょう?それなら私も手伝えるわ!私はあの女の弱みを握ってるの。私を解放してくれるなら……全力であなた達の手助けをするから!」……二日後。月が沈み、太陽が顔を出して、朝の光が薄々と差し込んでいる。一花はとても豪華に飾られた寝室で座り、ドレスに着替えていた。今日は一花と柊馬の結婚式で、手順は非常に多い。彼女はたった二時間しか寝ておらず、起きてメイクを始めた。そして今は結婚式前にドレス姿の写真を取り終わったところだ。屋敷の中も外も多くの人たちでごった返していた。カメラマンは至る所を回って今日の主役の友人たちの写真を撮っていた。敬子と美穂は招待客をもてなしていて、一花の傍にはいなかった。夏海と茉白が一花に付き添っていた。陽菜も来たいと思っていたが、家族に何か急用があったのか、陽菜を呼び出してリビングのほうにいた。一花は生まれつきの美人だが、メイクをすると更にその魅力が引き立っていた。夏海と茉白はひたすら一花の美しさを褒め続けていた。二人は休むことなく一花の写真を撮り続けていた。その間、グループチャットに撮った写真をアップし続け、みんなからもっと写真を送ってくれと催促されていた。そのグループには一花と柊馬の主役の他に、ブライズメイドとグルームズマン、それから彼らの仲の良い友人たちがいる。女性側は夏海と茉白、そして陽菜に一花が育てた部下たち。男性側は侑李、陸斗、湊それから優紀に徹たちが入っている。一花の写真が送られてくるとグループは褒めるスタンプで埋め尽くされた。しかしすぐに、男性側も後れを取るまいと、柊馬を横から撮った写真を一枚グループに上げた。彼はタキシードに革靴姿で、かなりシンプルな格好だった。彼は窓辺で電話をかけていた。【どう?カッコいいでしょう?】優紀がグループ内で尋ねた。確かに、一花の美しさにはみんな言葉を失うほどに見惚れてしまうが、柊馬もまたそれに負けていない。この写真が芸能ゴシップのニュースにでも流れれば、ちら
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第910話

二人は京原大聖堂に直接向かい、一緒に両家の家族たちと写真を撮る。一花は車に乗り込む時、大きなウェディングドレスの裾がふわりと大きく広がり、それをぎゅっと中に押しこまないと乗れないほどだった。夏海と茉白は一花の左右に立ち付き添い部屋を出た。すぐ傍には多くのボディーガードに止められた記者とカメラマンが競うようにその様子を写真におさめていた。「一花さん、ヴェール」一花が車に乗り込む前に、スタイリストが追いかけてきて、留め具にパールとダイヤが嵌められたヴェールをつけた。何台にも繋がる車の列の先頭に、会場に到着してすぐに写真が撮れるように一花が単独で乗っている。夏海と茉白とわかれて、一花は先に車に乗り込んだ。車に乗る瞬間、一花は突然まるで夢の中にいるような感覚だった。ここまで来るのに、彼女は多くの経験してきた。そしてやっと本当の幸せを感じられた。一花は俯き、手でそっとお腹を触り、嬉しそうに口角を上げた。彼女は携帯を持つと、ふいにまた柊馬にメッセージを送りたくなった。もうすぐ二人は直接会うというのに。一花が携帯を開いた瞬間、知らない番号から動画とファイルが送られてきた。その動画には浩之の姿があった。その瞬間、一花は驚いた。動画は暗い中を揺れ動いていて、それがどの場所なのかは分からなかったが、画面には浩之の姿しかなかった。彼は椅子に縛り上げられていて、朦朧として目ははっきりと覚めていないようだった。暫くして、マスクをつけた男が浩之の傍に近寄り、彼の首に針を刺した。その動画はたった二十秒ほどの短いもので、音も文字もなかった。一花はあまりに驚いていて、訳が分からずにいると、次の瞬間携帯が鳴り始めた。一花は悩むことなく電話に出た。「あなた達は誰……」「しーっ、声を出すんじゃない」相手は一花の言葉を遮った。車を運転している運転手が声を聞いて、思わず後ろを振り向いた。「西園寺様、どうかされましたか?」「……」電話の向こうからまた声が伝わってきた。「今こちらと西園寺さんが通話をしている。もし誰かの邪魔が入れば、通話はできなくなってしまう……あなたの実のお兄さんもそうなればどうなることか」一花は息を止めた。バックミラー越しに運転手と目が合い、彼女はぎゅっとドレスを掴んだ。一花
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