この時、一花はすでに驚きと恐怖から落ち着きを取り戻し、頭をフル回転させていた。電話の男はボイスチェンジャーすらも使っていないから、一花の知り合いでないことは確かだ。しかし、浩之と一花の関係を知っているということは、身近な人間か、裏でこそこそと一花を調査していた人物のはずだ。一花を恨んでいる者がいるとすれば、それはただ一つ、「青空」だ。誠は去る前に、一花に「青空」の南関に残る勢力に十分注意するように言っていた。一花はここ暫く、柊馬とともに目立たないように動き、何をするにも警戒していた。「青空」の残党はきっと一花たちに手を出すことができないと分かり、浩之に狙いを定めたのだろう。もし、一花が今警察に通報すれば、浩之は生きて帰ってくることはない。そして凶悪犯も捕まらないかもしれない。結婚式も同じく、ぶち壊しになるに決まっている……一花は何も言わず、黙認しているようなものだった。相手は目的が達成されたと思い、低い声で本題に入った。「今からこちらの言う通りにするんだ」一花は電話の声を聞きながら、突然運転手に車をとめるように伝えた。「途中のドラッグストアで一度止めて。買いたい物があるの」「買い物ですか?西園寺様、何か必要なものがございましたら、誰かに買いに行かせたらよろしいのでは?今は時間が……」「止めてと言ったら止めてちょうだい。今すぐに停車するのよ!」運転手はおかしいと思いながらも、一花の指示に従うしかなく、路肩に突然停車した。車の列はそれぞれある程度の間隔で走っていた。一花の車がとまった所はちょうど十字路だった。後続車は状況がわからず、次々と停車させた。しかし、一花が突然車を降りて、ドレスの裾を掴んだ状態でドラッグストアに駆けこんでいった。後ろに続く車からはすぐにボディーガードが降りてきて、状況確認に向かった。しかし、数分も経たないうちに、一花が消えてしまった。一花は携帯を握りしめたまま、すでに店の裏から出てきて、すでに待機していたタクシーに乗った。相手はどうやら全てを手配していたらしい。ドラッグストアの場所はちょうど周りの視線を遮れるようになっていた。タクシーはその辺に走っている普通のタクシーで、相手は運転手に目的地を伝えてあった。電話の相手は一花に電話を繋いだまま
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