弘樹は毒蛇に噛まれて、すぐに意識がもうろうとしてきた。瑠夏は慌てて救助センターに電話したけど、そこにももう血清はなかった。「弘樹さん、死なないで!もしあなたが死んじゃったら、来世では絶対に探しにいかないから。絶対に!」彼女は目を真っ赤にして、眠っちゃだめだと弘樹に伝えた。そして地面に落ちていた指輪を拾い上げ、彼の前で薬指にはめてみせた。「ほら見て。プロポーズ、受け入れるから。だから今回を乗り越えたら、帰ってすぐに結婚式を挙げよう?ね?一緒に世界を旅するって約束したじゃない。まだ数都市しか行ってないのに。もしこのままいなくなったら、一生あなたを許さないから!」瑠夏は弘樹に必死に話しかけ続けた。彼は力を振り絞って手をあげ、目の前の女の頭をなでた。「大丈夫だよ、瑠夏。昔、ジャングルで標本を集めていた時も、毒蛇に噛まれたことがあるんだ。泣かないで、くれるかな?君が泣いているのを見ると、俺のほうがもっとつらくなる……」弘樹の声はどんどん小さくなり、とうとう完全に目を閉じてしまった。瑠夏は信じられないと彼にすがりついた。必死で体を揺さぶっていると、そこに浩がヘリコプターで降り立った。弘樹が毒蛇に噛まれたのを見て、彼は飛行機から転げ落ちそうになった。そして、よろめきながら機内のスタッフに叫んだ。「早く血清を!」専門の医療スタッフが弘樹に血清を注射した。彼は丸3日、意識がなかったが、ようやく目を覚ました。目を覚ました弘樹が最初にしたことは、瑠夏に、あの時の「はい」という返事をもう一度ねだることだった。「あの時、ちゃんと頷いてくれたんだ。約束を破るのはなしだよ」彼らが結婚式を挙げることは、ごく一部の人しか知らなかった。浩もその一人だ。なんといっても、彼は弘樹の人生の一大事のために、一番がんばったのだから。あとは、あの小さな町の隣人たちくらいだった。結婚式は、あるプライベートな島で開かれた。瑠夏は真っ白なウェディングドレスに身を包み、プリザーブドフラワーで埋め尽くされたバージンロードを歩く。その先では、弘樹が愛と期待に満ちた瞳で彼女を見つめていた。親しい友人たちに見守られるなか、二人は結婚指輪を交換した。寄り添う二人の笑顔は、太陽の光よりもあたたかく、幸せに満ちていた。結婚後、弘樹は瑠夏をとても大事
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