「真司、見てよ!」晴子は興奮した声で叫び、カーテンの端をつかんだ。彼女の動きにつられるように、重厚な黒いベルベットの布がゆるやかに左右へと引きずられていく。仕掛けられたスポットライトが一瞬で幕の後ろのガラスケースを照らし出した。ガラスケースの中には、一人の女性の全身標本が、まるで生きて立っているかのような自然な姿勢で据えられていた。展示ホール全体が、一瞬にして静まり返った。次の瞬間、あちこちから息を呑む音が響いた。その標本は、あまりにも衝撃的だ。彼女の全身の皮膚は剥がされ、筋肉、神経、骨格が完全な形で残されていた。鮮やかな紅の筋繊維が、白い骨格を包み込むようにして、まるで精密に彫り上げられた芸術品のように見える。それは悲しげで美しい、ふと振り返るような姿に形作られていた。かすかに体を前に傾け、今にも去りゆこうとしつつ、それでもまだ何かを求めて振り返るような姿だ。片方の手は自然に垂れ、もう一方の手は胸の前に置かれ、祈りにも似た仕草を形づくっている。顔の表面に表情筋がわずかに残され、完全に表情を失ってはいない。むしろ、悲しみから解放されるその瞬間を、かすかに捉えているかのようだった。眼窩の空洞が光に浮かび上がり、深く沈んだその窪みは、無言のまま何かを訴えかけているかのような切なさをたたえている。真司はその標本を見た途端、胸の奥で心臓がぎゅっと締めつけられるのを感じた。息が詰まるほどの、圧倒的な既視感が、一気に彼を呑み込んでいった。「ちっちっ、この体つき、なかなか悪くないじゃない」晴子の声が静寂を破った。彼女は標本を上から下まで眺め、軽く挑発するように言う。「このくびれのはっきりしたスタイル、あの橙子にちょっと似てるわね。惜しいことに、いくらスタイルが良くたって、結局は皮を剥がれて筋を抜かれ、ここで展示品になるだけなんだから。もしあのクソ女も同じように死んで、標本にされたら、私、毎日見に来るわ」悪気のないふりをした言葉ながら、一つ一つが心を抉る。真司の顔色が、さっと血の気を失ったように真っ白になった。胸の奥で膨れ上がる異様な感覚を必死に押し殺し、彼は勢いよく振り返って、かすれた声で言った。「言っただろ、俺はもう帰る」彼はもう、その標本を直視することができない。もう一度でも見てしまえ
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