「だって、あの部長を呑み負かしたって伝説の持ち主だよ? そんなの見たいに決まってるじゃない」瑞希は本人の前にも関わらず、悪びれる様子なく言う。(確かに、たまにはこの子達と呑むのもいいかもしれない)千聖は彼女達を見回して、小さく頷く。「それもいいわね。なんなら今日、一緒に呑みに行く?」千聖の言葉に、3人は目を輝かせた。「はい、是非!」「わぁ、楽しみだなぁ」「残業しないように頑張らなきゃ」口々に言う彼女達を見て、千聖は微笑ましい気持ちになる。仕事が始まると、4人は連携プレーで次々と仕事を終わらせていく。「ちはちゃん、この資料50部コピーしてもらっていい? ホチキス止めは手伝うから、コピー終わったら声掛けて」「はーい」千春は資料を受け取ると、小走りでコピー機へ向かう。(なんだかいいわね、こういうの)仕事終わりの呑み会に思いを馳せながら、千聖は次の仕事に取り掛かる。4人の努力のかいがあって、彼女達は定時に仕事を上がることが出来た。「綾瀬先輩の行きつけに連れてってくださいよ」会社から出ると、美幸がせがむ。「うーん、よく行く居酒屋はいくつかあるから迷っちゃうわ」そう言いながらも、千聖の足は迷うことなく進んでいく。会社から10分ほど歩いたところで、千聖の足は止まる。着いたのは、格安でカクテルの種類が多い居酒屋だ。「ここよ」千聖が先に入ると、店員が案内してくれる。4人掛けの席につくと、千聖はさっそくハイボールを頼んだ。「上級者は案内されるのと同時に頼むものなんですね」「そういうわけじゃないわよ」感心したように言う美幸に、千聖は苦笑する。「わぁ、ここカクテル多いんですね。私カンパリソーダにしよ」マイペースな瑞希は、ひとりでメニューをパラパラとめくる。「私も見たい」「もう1冊あるわよ」千聖はメニューを広げると、自分と隣に座る千春の間に置いた。
Last Updated : 2025-12-17 Read more