Mag-log in紅玲と千聖が同棲を始めた。 ふたりは順調に思えたが……。
view more「そうだったら嬉しいね。チサちゃんが俺に染まってるってことでしょ?」「もう、すぐ恥ずかしいこと言う……。はやくまとめて、今日はもう休みましょう」千聖は頬を染めながら、手を動かす。「照れちゃって、可愛いんだから」紅玲は千聖の近くに置いてある着替えを取るついでに、彼女の頬にキスをする。「なにするのよ……」「ただの愛情表現だよ」千聖はなにか言い返そうとしたが、いつもの余裕たっぷりの笑顔を見てやめた。ふたりは時折こうしてじゃれ合いながら荷物をまとめると、風呂と夕食を済ませて眠った。翌朝、ふたりは荷物の最終確認をする。「パスポートに、海外旅行保険証。証明写真と空港券。ちゃんとある?」「うん、あるよ」千聖はスマホを片手に、必要な荷物を読み上げていく。「現金にクレジットカード。セキュリティポーチでしょ。あと、歯磨きセットとトイレットペーパーにタオル」「あるよ」「くし、石鹸、シャンプーとコンディショナーは?」「えーっと、あぁ、あった」紅玲はがさごそと奥の荷物を漁りながら確認する。「粉末ポカリと薬」「風邪薬、酔い止め、痛み止めがあるよ」「日焼け止め、下着、靴下、着替え。あとパジャマね」「あぁ、ケースの大半を占領してるよ」「充電器、カメラ、海外用電源プラグ変換アダプター。筆記用具と使い捨てスリッパ」「うん、あるよ」「トラベル枕と紙製便座シート、ペットボトルのお水。これで確認はおしまいよ。全部あった?」千聖は顔を上げて紅玲に聞く。「うん、あった」「それならよかったわ」「ドレスやタキシードは向こうに送ってあるしね」紅玲の言葉に、胸が高鳴る。「いよいよね……」「そうだね。もう少ししたらタクシー来ちゃうから、はやくまとめなきゃ」ふたりは荷物をまとめ直すと、家から出た。タイミングよくタクシーがふたりの前に停まった。千聖は海の向こうで行われるふたりきりの結婚式に期待で胸を膨らませながら、タクシーに乗り込んだ。
椅子の座り心地のよさと薄暗さで眠くなって来た頃、ブザーが鳴り、満天の星空が広がる。柔らかな女性ナレーターの声が語るのは、オリオン座とさそり座の物語。ポセイドンの息子であるオリオンは優れた狩人としてその名を馳せ、月の女神アルテミスと恋に落ちる。オリオンは自分の腕前に慢心し、横暴を極めた。そんな彼に立腹した女神ヘラは、1匹の大サソリを地上に遣わす。さすがのオリオンもサソリの猛毒にはかなわず、息絶えてしまう。大サソリはその功績を讃えられ、星座にされた。オリオンの死を悼んだアルテミスが彼を天に昇らせて星座にしたが、星座になっても大サソリが怖く、さそり座が出ている時期は地平線の下に逃げ隠れているという話だ。上映が終わると、ふたりは起き上がって伸びをする。「大丈夫? 怖くなかった?」紅玲は気遣わしげに千聖の顔をのぞき込む。「あなたが手を握ってくれてたから平気よ。むしろ面白いくらいだわ」千聖は無邪気に笑った。「それならよかった。じゃあまた来ようか」「えぇ、そうね。また来たいわ」満足したふたりは、肩を並べてプラネタリウムを後にした。ふたりは帰宅すると、キャリーケースを引っ張り出して荷物を詰め始める。「本当はもっと前もってやるべきだったんだろうね」「まぁいいんじゃない? 出発は明日の午後だし、午前中に最終確認できるんだから」苦笑する紅玲に、千聖はのんびりした口調で答えた。「なんかチサちゃん変わったよね。付き合う前よりおおらかになった気がする」「そうかしら?」「そうだよ。前だったら1週間前にはリスト作って、2、3日前から荷造り始めてもおかしくなかったよ」紅玲に言われてなんとなく納得する。「確かにそうかもしれないわね。会社も辞めたし、紅玲と一緒にいられて充実してるから、心の余裕が出来たもの。それに、完璧主義者でなくなってきてる気がするわ」「それはいいことだね」「あなたのおかげよ」千聖が笑顔を向けると、紅玲は口元に弧を描く。
「もう大人になったし、紅玲と一緒なら楽しめると思ったの」「それは嬉しいね。あ、ついたみたいだよ。あの建物だね」紅玲は屋根がドーム状になっている建物を指さす。「どんな内容なのかしら?」「それは入ってからのお楽しみじゃない?」ふたりは建物の中に入った。受付でチケットを買うと、すぐに館内へ案内された案内された。広々とした館内は客が少なく、席のほとんどが空いている。「幸い指定席じゃないからね。観やすいところ行こっか」「プラネタリウムの観やすいところって?」「後ろ中央の、なおかつ機体から離れた場所らしいよ」「詳しいのね」紅玲の博識ぶりに、千聖は感心する。「プラネタリウムの場所調べるついでに調べただけだよ。えっと……、ここらへんかな?」紅玲は千聖の手を引いて、後ろから2番目にある中央の席に座った。ふたりの周りに座っている人はおらず、千聖はふたりきりで楽しめると密かに喜んだ。なんとなく天井を見ると、館内での注意事項が浮かび上がっている。その中にスマホの電源を切るように書いてあったので、千聖はすぐにスマホの電源を切る。紅玲もそれに気づき、電源を切った。「こうやってスマホ切ってる時間って、落ち着く。何にも縛られずにじっくり集中できる時間って、結構貴重だと思うんだ」「よく言うわよ。執筆し始めたらスマホが鳴っても気づかないくせに」ふたりが同棲する少し前、千聖がいくら電話をかけても、紅玲が出ないことがあった。後に執筆に集中しすぎてスマホが鳴っていたことにすら気づいてなかったと聞かされたのだ。「あの時は……、筆が乗ってたんだよ……」紅玲がバツが悪そうに言うと、上映まで5分のアナウンスが流れた。「ほら、あと5分だって。楽しみだね」紅玲は千聖の手を握り、椅子を倒す。「ふふっ、えぇ、楽しみね」彼らしくない子供じみた逃げ方を愛おしく思いながら、千聖も椅子を倒して上映時間を待った。
「それで、チサちゃんの行きたいところ決まった?」「決まったには決まったけど、やってるかしら?」千聖は困り顔で紅玲を見上げる。「どこに行きたいの?」「プラネタリウムよ」「ちょっと待ってて」紅玲はスマホを出して調べ物をする。「今から駅に行って、10分歩いたところにあるみたいだよ。次の上映時間は、オレ達がついて10分くらいしてからだから、少し余裕があるね。さっそく行こうか」「そこまで調べられるなんて……」「今の地図アプリは便利だからねぇ」紅玲は千聖の手を握ると、駅に向かって歩き出した。千聖は紅玲の手を握り返し、彼に寄り添いながら歩く。駅に着くと、紅玲は戸惑うことなく改札を通ってホームへ行く。「電車は2、3分で来るはずだよ」「電子版も見てないのに、よく分かるわね」千聖はちらりと電子版を見ながら言う。紅玲の言う通り、あと3分で電車が来ることになっている。「チサちゃんと同棲する前は、色んなところに食べに行ってたからねぇ。大まかに覚えちゃった」「本当に頭がいいのね……」本人も以前地頭がいいと言っていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。時間になると電車が来て、ふたりは乗車する。利用客は少なく、席がたくさん空いている。ふたりが座ると、電車は動き出した。「1駅で降りるからね」「結構近いのね」てっきりもう少しかかると思っていた千聖は、少し拍子抜けした。電車が駅に停車すると、少し寂れたホームに降り立つ。紅玲は地図アプリを起動させ、駅から出る。「ところで、どうしてプラネタリウムに行きたいって思ったの?」「最後にプラネタリウムを観たのって、小学5年生の時なんだけど、海洋生物の星座神話についてやってたのよ。内容はあまり覚えてなかったけど怖くて、それ以来観に行こうと思わなかったわ。怖かったけど、星がとても綺麗だったことも覚えてたのよ」「あぁ、星座神話のイルカとか全然可愛くなかったからねぇ……。それに残酷な話も結構あるし、そのへんは小学生からしたら怖いかもね」紅玲は納得したように頷いた。
翌朝、千聖は目覚ましが鳴る10分前に目を覚ます。ベッドから降りて躯を伸ばすと、昨日より躯が軽くなっていることに気づいた。「結局薬を飲むこともなかったし、紅玲のおかげね」千聖は昨晩のことを思い出し、頬を緩ませる。「はやく夜にならないかしら?」上機嫌に言いながら台所へ行くと、朝食と弁当を作る。(今日はどこかで呑んでから帰ろうかしら? そうだ、優奈を誘おう。まだ傷心中だろうし)仕事終わりに呑むことを考えると、とたんに楽しくなる。千聖は今までのような寂しさを感じることなく、ひとりの朝食を終わらせて出勤した。「おはようございます、綾瀬先輩。今日は顔色いいですね」通勤途中、瑞希が千聖に声
『その様子だと、見つけられたみたいだねぇ。チサちゃんのGスポット。ソコを強く擦って? 力を入れすぎて、傷つけないようにね』千聖の反応を楽しみ、声を弾ませる。「あああぁっ!! はぁ、あぁ……! 気持ちい……あんっ、ふ、ああ……っ!」千聖は紅玲の枕に顔を埋めながら、Gスポットを激しく擦りあげる。『あぁ、すごくそそる、可愛いよ……。指をもう1本増やしてみて』紅玲の息遣いで彼に余裕がなくなってきていることを察し、千聖はますます興奮を覚える。「んああぁっ! やぁ、もうダメ……! イク、イッちゃう! ひあああぁっ!!」『いいよ、イッてみせて……。それでオレもイクから……』熱のこもった紅玲
「あああああっ!!!」今度は見るも無残なジャムパンを見て、大声を出す。「本当に忙しいわね、あんたは……」表情をころころ変える優奈を見て、千聖は失笑する。「うぅ……私のジャムパンが……」そう言いながらも、ジャムパンにかじりつく。「えっと、紅玲くん、ひとりで大丈夫なの?」「ふふっ……、一応斗真が一緒らしいんだけど、それでも心配なものは心配だし、何よりも寂しいのよね……」信頼のおける旧友に、千聖はすらすらと本音を語る。「それだけ千聖の中で、紅玲くんの存在が大きくなったんだね。よかったよかった。結婚式楽しみにしてるね」「気が早いわよ。でも、紅玲も結婚のことはちゃんと考えてくれてる
ふたりは近くのドラッグストアに行くと、酒やつまみを買い漁った。優奈は缶チューハイを、何本も買い物かごに入れていく。「市販のチューハイは酔いやすいから、2本だけよ?」「でもぉ……」「でもじゃない。前に缶チューハイ3本呑んで吐いたでしょ」千聖がキッパリ言うと、優奈はむくれる。「そんなの昔の話でしょ? 前より呑めるようになったんだから」優奈の言う通り、彼女が缶チューハイでダウンしたのはかなり昔の話だ。まだ高校生だった頃、祭りの無礼講で缶チューハイをふたりで呑んだ。千聖は平気で5本くらい呑んだが、優奈は途中で体調を崩し、千聖に送ってもらって帰ったのだ。だが千聖は、いくら呑もうが酒に強く