ひとしきり泣くと、千聖はスマホを寝室で充電してから風呂に入る。湯船に浸かってぼんやりしていると、昨晩の悪夢が過ぎる。「違う、紅玲はそんなことしない……」声に出して否定をするも、不安は拭いきれない。「起きてても悪いことしか考えないわね……」はやく寝るのが得策だと考えた千聖は、風呂から出ると寝室に入る。スマホを見るが、相変わらず紅玲からの連絡はない。千聖は大きなため息をつくと、化粧台に座り、髪を乾かした。乾かし終えると、未練がましくLINEを開く。既読がついていて、思わずあ、と声を上げる。返信が来るのを待とうと画面を見ていると、紅玲から着信が入った。すぐに出て、耳にあてる。『もしもし、チサちゃん。なかなか連絡できなくてごめんね?』「まったくよ、寂しかったんだから……」久しぶりに聞く紅玲の声に安堵しながらも、本音を伝える。『昼過ぎから少し前まで、ずっと書き通しだったからLINE気づけなかったんだ。本当にごめん……』「ちゃんと反省してくれてるならいいのよ……。そんなに書いてるなら、そろそろ帰ってこれそう?」千聖の質問に、紅玲はうーんと唸る。『今回それなりに長いの書いてるから、まだかかりそうなんだ……。オレもはやく、チサちゃんに会いたい……』紅玲の気弱な声に、千聖は頬を緩める。(こうやって言葉にしてもらえるのって、やっぱり嬉しいものね)『ねぇ、チサちゃん。チサちゃんの可愛い声聴きたいなぁ』「今電話で聴いてる最中でしょ?」言葉の意味が分からず、首を傾げる。『違うよ。チサちゃんの可愛くてえっちな声、オレに聴かせて?』「なっ……!?」熱っぽい声で言われ、千聖は耳まで赤くなる。「……斗真は、寝てるの?」『さすがに別の部屋だって。じゃなきゃこんなこと言うわけないでしょ?』紅玲はおかしそうに言う。「斗真に睡眠薬盛ってでもしそうだけど……」千聖の言葉に、紅玲は声を上げて笑った。『あっはは、いくらなんでも親友にそんなことしないって』
Last Updated : 2025-12-17 Read more