All Chapters of 独占欲に捕らわれて2: Chapter 21 - Chapter 30

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紅玲の取材旅行9

「チサちゃん、ちょっと待って」紅玲は愛撫をやめると、腰を浮かせてズボンを下ろした。「私が乗った状態で、よく出来たわね」「チサちゃんは軽いからね」そう言って千聖を抱きしめ直すと、胸を揉みながらくるくると乳輪の縁をなぞる。「はぁ、んんっ……やだ、焦れったい……」「焦らした方が、後から気持ちよくなるでしょ?」「ふふっ、そうね」千聖は再び手を後ろに回すと、紅玲のペニスを掴み、撫であげるように刺激する。「……っ、はぁ……焦らすねぇ」「そんなの、お互い様でしょ?」千聖が吐息混じりに言うと、紅玲は苦笑する。「ねぇ、交換条件なんてどう? ちゃんと触ってあげるから、チサちゃんもオレのこと気持ちよくして?」「ん、ふぅ……嫌よ。服にかかったら、ぁ……、もったいない、じゃない」紅玲の提案を、鼻で笑った。「そっかぁ、それは残念」ちっとも残念そうに聞こえない声音で言うと、紅玲はスカートの中に手を入れた。下着越しに縦筋をなぞる。それも蜜壷付近はそれなりに力を入れて、クリトリスは触れるか触れないかの力加減だ。もう片手は、相変わらず乳輪の縁をくるくると回るばかり。「やあぁ、いやぁ! 紅玲のことも、あぁ……!気持ちよく、するから……焦らさないでぇ!」千聖はいやいやと首を横に振りながら、紅玲のペニスを震える手で握った。「あぁ、チサちゃんの手、気持ちい……。それじゃあオレも、チサちゃんのこと気持ちよくしてあげなきゃね」紅玲は乳輪をなぞっていた指で乳首をコリコリとつまみ上げ、下着の中に手を入れて、クリトリスを撫で回したり指先で軽く叩いたりした。「ああああぁっ!!! だめぇ、イッちゃう……! あ、あ、ああああああっ!!!」焦らされていたぶん快楽が押し寄せ、千聖はあっけなく絶頂を迎えてしまった。「はぁ……あぁ……」余韻に震える躯を紅玲に預け、なんとか息を整えようとする。「ねぇチサちゃん。オレはまだイッてないよ?」見上げれば、紅玲は意地の悪い笑みを浮かべている。「ま、待って……。気持ちよすぎちゃって……待って……」千聖は肩で息をしながら、なんとか紅玲の腕を掴んだ。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行10

「大丈夫、まだ待ってられるから」紅玲が耳元で囁くと、甘い響きに息を呑む。「はぁ……口でイかせてあげるわ」千聖は紅玲から降りると目の前に座り、彼のズボンを完全に脱がせた。「絶対満足させるんだから」千聖は豊満な胸で紅玲のペニスを挟むと、亀頭にキスをする。口を開けて胸に収まりきらない部分を咥え込む。胸を上下に揺らしながら、亀頭の先端や裏を舌先で刺激する。上目遣いで紅玲を見上げながら、わざと大きな音を立てて吸い上げると、紅玲は呻きながら腰を揺らす。「うっ……はぁ……っ! もう、イきそう……」「いいわよ、飲ませてちょうだい」千聖は挑発的な笑みを浮かべながら言うと、更に強く胸で挟み、亀頭にグリグリと舌を押し付ける。「くっ……出る……!」紅玲は大きく腰を揺らし、千聖の口内で果てた。「んっ……ふふふ、たくさん出たわね」千聖は喉を鳴らしながらザーメンを飲み込むと、先端を吸い上げた。紅玲の口から吐息が零れる。「よく飲めるよねぇ……。嬉しいけど」紅玲は顔をしかめながら言う。「紅玲は酒も煙草もやらないから、苦味がなくて飲みやすいの。むしろほのかな甘みがあって、癖になる味よ」「……精液の食レポされる日が来るとは思わなかったよ……」そう言って紅玲は苦笑する。「聞かれたから答えたまでよ」「そう……。ね、チサちゃん。オレのこと元気にしてくれる?」紅玲は自分の指先を揉みながら言う。「えぇ、もちろんいいわよ」千聖は艶のある笑みを浮かべると、紅玲の上に跨る。ヴァギナをペニスに擦り付けるように腰を揺らしながら、首筋を舐め上げる。「んんっ……チサちゃんの舌、すごく気持ちい……。痕をつけてくれてもいいんだよ?」「つけてください、の間違いじゃない?」千聖はサディスティックに微笑むと、紅玲の乳首をグリグリとひねりながら、首筋に痕を付けていく。「んぐっ、はぁ……っ、あぁっ!」千聖の背中に腕を回しながら、紅玲は躯を小刻みに震わせる。(ホント、凄まじい回復力よねぇ……)千聖は紅玲のペニスが反り勃って来たのをヴァギナで感じながら、内心で呟く。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行11

「これだけ大きくなれば、もう大丈夫ね」千聖は愛撫をやめると、紅玲のペニスを指先で弾いた。「……っ! もっと攻めてくれてもよかったんだけど、それはまたの機会にしようか」「あら、それならまだ、私が主導権を握ろうかしら?」紅玲の言葉に、千聖は目を輝かせる。「また今度ね。ねぇ、自分から腰を落としてみせて?」「私から求めさせるの、本当に好きね」千聖は苦笑しながらも、ヴァギナにペニスをあてがうと、ゆっくり腰を下ろした。「ふあぁ……! 太い、あ、ああぁっ……!」紅玲のペニスをすべて飲み込むと、千聖は彼の首に腕を回しながら、潤んだ瞳で見上げる。「全部入れられたね、いい子いい子」紅玲は満足気に微笑んで、千聖の髪を撫でる。「ご褒美に、たくさん突き上げて?」「おねだり上手になったね」千聖の額にキスを落とすと、彼女の腰をつかんで突き上げる。「あぁんっ、奥当たって、んうぅ……っ、気持ちいのぉ」蕩けきった顔で紅玲を見つめ、はしたなく嬌声を上げる。「オレに犯されて感じるチサちゃんは、とっても素敵だよ……」紅玲は腰をつかんでいた手を離し、千聖を抱きしめながら囁く。千聖は手を離されても律動を止めることなく、貪欲に紅玲を求める。「嬉しい……あっ、アッ、もっとぉ! たくさん可愛がって!」「いくらでも可愛がったげる」紅玲は挿入したまま千聖を抱き上げると、テーブルの上に寝かせる。太ももをつかんで大きく足を開かせると、腰を打ち付けた。「ひあぁっ! いいのぉ! んあっ、あああっ!」千聖は喘ぎながらも、両手を伸ばした。「お願いよ、ん、はぁ……ぎゅって、ぎゅってしてぇ」「そうやって求められると、ますます好きになっちゃうなぁ」紅玲は要望通り、千聖を抱きしめる。それによって紅玲のペニスは、千聖の更に奥に侵入した。「はうぅ! あ、あんっ! さっきより奥に……んああぁっ!」千聖はたまらないと言わんばかりに声を上げ、紅玲の背中に腕を回した。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行12

「そんなに締めたら、イッちゃいそう……!」「イッてぇ! もっと私で気持ちよくなって!」千聖に煽られ、紅玲はラストスパートをかける。「あっ、あ、あ、イく、イッちゃう! ああああぁっ!!!」「はっ……、きっつ……」ふたりはほぼ同時に果て、紅玲は千聖の上に倒れる。荒い息遣いが、暗くなった部屋に響き渡る。「あー……なんか夕飯作るの面倒になっちゃった」息を整えた紅玲は起き上がると、困ったように笑う。「私もそんな気力ないわ……。たまには外食もいいんじゃない?」「そうだね、どこにしよっか? チサちゃんは何が食べたい?」千聖に聞きながら、紅玲はスマホを手繰り寄せた。「そうね、日本酒を呑みながら焼き鳥が食べたい」「あっはは、それならチサちゃんの行きつけに行った方がいいね」紅玲は立ち上がると、スマホをポケットに押し込んだ。「とっておきの居酒屋があるの。準備してくるわね」千聖は服を着直すと、自室へ行った。千聖の案内で、ホテル街近くにある居酒屋に行く。千聖が先に入ると、店員が4人掛けのテーブルに案内してくれる。「ここはタッチパネルで頼むのよね……」千聖は物憂げな表情で、タブレットを手に取る。「タブレット注文苦手?」「ううん、苦手っていうわけじゃないけど、店員さんを呼び止める居酒屋に慣れちゃってるから、ちょっと違和感あるのよ」そう言いながら、タブレットで日本酒と焼き鳥の盛り合わせの塩とタレを注文し、紅玲に渡した。「一応、焼き鳥の盛り合わせを2つ頼んだわ」「焼き鳥頼んでくれたんなら、オレは冷奴にしようかな」紅玲がタブレットを操作しながら言うと、千聖は吹き出した。「チサちゃん?」突然笑い出す恋人を、紅玲は怪訝そうにのぞき込む。「ごめんなさいね、類は友を呼ぶって言葉を思い出しちゃって」「あー……、もしかしてトーマ?」紅玲はバツが悪そうに、親友の名前を出す。「ふふっ、そうよ。まだ私が紅玲のことを毛嫌いしてた時にホテル街で偶然会って、ご馳走してもらったのよ」千聖は懐かしんで目を細める。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行13

「それでトーマは、オレの話をしながら冷奴を食べていたんだ?」「そうよ」千聖が笑うとちょうど冷奴が運ばれてきて、千聖はうつむいて肩を震わせる。「チサちゃんって変なところで笑うよねぇ」冷奴をつつきながら、紅玲は苦笑する。「そうかしら?」「冷奴でこんなに笑う人、そうはいないよ」「今時の若者が冷奴って、なんだかミスマッチなんだもの」紅玲は小さく唸って考え込むと、納得したように頷いた。「まぁ確かに、あんまり若い人のイメージはないかも」紅玲が言い終わるとちょうど店員が来て、日本酒とウーロン茶、ごはんを持ってきた。「そういえば夕飯食べに来たんだっけ」千聖は思い出したように言う。「一応そういうことになるけど、好きなように飲み食いしたらいいんじゃない?」「そうね、そうさせてもらうわ」とっくりを持つと、紅玲に取り上げられてしまった。「手酌なんて味気ないことさせないよ」「あら、ありがとう」千聖がお猪口を差し出すと、紅玲がギリギリまで注いでくれる。千聖はそれを一気に飲み干した。「日本酒ってチビチビ呑むものだって聞いたんだけど」「1杯目は景気よく行きたいじゃない?」にっこり笑いながらお猪口を差し出し、おかわりを催促する。「呑みすぎないようにね」紅玲は釘を刺しながら、日本酒を注いだ。「お酒には強いから大丈夫よ」千聖がひと口飲んだところで、焼き鳥の盛り合わせが運ばれてくる。千聖は塩味のももを食べて、頬を緩ませる。「うんうん、お酒にはやっぱり塩気のきいたおつまみよねぇ」「ちょっとしょっぱいから、ごはんにもよく合うよ」紅玲は箸で器用に串から焼き鳥を外すと、ごはんと一緒に食べる。ふたりは互いの仕事の話や、他愛のない話をしながら食事や酒を楽しむ。「いきなりだけどさ、オレ明日から取材旅行に行こうと思ってるんだ」紅玲が突拍子のないことを言い出したのは、焼き鳥の盛り合わせが半分以上減った頃。千聖はまじまじと紅玲を見つめる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行14

「ごめん、今なんて?」「明日から取材旅行に行こうと思ってる」先程の言葉を、紅玲はもう1度繰り返す。「随分急ね……」「実は時代物の作品を書くことになってね、納期も今回短くて。資料を探すよりも、縁のある土地に行った方がはやく書ける気がするんだ。それに、物書きとしてもいろんな場所に行くのって大事だしね」生き生きと語る紅玲を、千聖は寂しそうに見つめる。「前もって言ってくれたら、有給とったのに……」「オレもチサちゃんと行きたかったけど、今回急に入った話だからねぇ……」紅玲は残念そうに言うと、残り半分のウーロン茶を一気に飲み干す。「どこ行く予定なの? 本当にひとりで平気? 私の故郷が初めての遠出だったんでしょ?」心配そうに次から次へと質問を投げかけてくる千聖に、紅玲は苦笑する。「京都と奈良に行く予定だよ。トーマが一緒に行ってくれるから、大丈夫」「そう、ならいいけど……」千聖の表情は言葉とは裏腹に、納得出来ないといいたげだ。「お土産ちゃんと買ってくるし、毎日電話するよ」「えぇ……」紅玲は安心させようと笑顔を作るが、千聖の表情は暗いままだ。(取材旅行に行くって言っただけで、こんなに寂しそうにしてくれるなんて、嬉しいなぁ。でも、これだけじゃ足りないんだよねぇ)紅玲は内心黒い笑みを浮かべながら、千聖に旅先での計画を聞かせた。ふたりは家に帰って風呂を済ませると、寝室に入る。いつもは寝る前に愛し合うが、明日から不慣れな旅行で疲れるだろうからと、紅玲の方から断った。「たまにはこうしてのんびりするのもいいものだねぇ」ベッドの中で千聖を抱きしめながら、紅玲はゆったりした声音で言う。「ねぇ、本当に大丈夫? なんなら今からでも上司に連絡して、休みを取るけど……。というか、何日の予定?」「過保護だねぇ、チサちゃんは。1週間くらいの予定だよ。明日の昼過ぎに家を出て、最初の3日は京都に、残りは奈良に滞在する予定なんだ」紅玲は千聖の寂しさに気づかないふりをしながら、淡々と予定を伝えていく。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行15

「ねぇ、チサちゃんは明日も仕事なんだし、そろそろ寝よう?」「えぇ……そうね……」千聖は寂しさを押し殺して、紅玲の胸に顔を埋めた。紅玲は相変わらずなにも知らないふりをして、電気を消す。(紅玲は、私と離れて平気なの……?)不安を抱えたまま、千聖はそっと瞼を下ろした。翌朝、先に起きた紅玲は朝食と千聖の弁当を作る。彼が動く度、首に下げた鍵束がシャラシャラと音を立てる。「おはよう、紅玲」浮かない顔をした千聖が、台所に顔を出す。「おはよう、チサちゃん。もう少しでできるから待っててね」紅玲はあえて明るく振る舞い、それが千聖をさらに寂しくさせる。「楽しみだなぁ、初めての取材旅行。ねぇ、チサちゃんは京都か奈良に行ったことある?」「中学生の修学旅行で両方行ったけど、あんまり覚えてないわね……。写真、楽しみにしてるわ」千聖は紅玲の背中を見つめながら、強がりを言う。「うん、是非とも楽しみにしてて。……さて、完成。おまたせ、チサちゃん」紅玲は食卓にトーストとベーコンエッグ、サラダ、ヨーグルトを並べていく。最後に紅茶を注いで、紅玲も定位置に座った。「いただきます」ふたりは声を揃えて言うと、朝食を食べ始める。(しばらくは、こうしてふたりで食べられないのよね……。ん? なにかしら、あれ……)美味しそうにトーストをかじる紅玲を眺め、彼の首に鍵束がかかっていることに気づいた。「ねぇ、紅玲。首にかかってるその鍵束はなにかしら?」「ん? あぁ、これチサちゃんに預けておこうと思って」紅玲は思い出したように言うと、鍵束を千聖に手渡す。1つだけ赤いリボンがついてる鍵がある。「これは、なんの鍵?」「全部この家の鍵だよ。ふだん使う部屋は開け放しているけど、この家の部屋のほとんどには、鍵がついているんだ。オレがいない間、好きに家の中を見てていいよ。ただし、その赤いリボンがついた鍵は使っちゃダメ」紅玲の話を聞きながら、千聖はリボンがついた鍵をつまみ上げる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行16

「そもそもこれは、なんの鍵なの?」「オレの書斎の鍵だよ。ここには大事なものがたくさんあるし、書斎をいじられるのは好きじゃないから、チサちゃんにも入って欲しくないんだ」紅玲はどこか申し訳なさそうな顔をしながら言う。「そう……。分かったわ、この部屋には入らない」「ありがとう、チサちゃん。チサちゃんなら約束してくれると思った」紅玲は嬉しそうに言うと、再び食事を始めた。朝食も終わり、千聖の出勤時間になる。「私はそろそろ行くわね。気をつけて」「うん、チサちゃんも気をつけてね。いってらっしゃい」紅玲は千聖を抱きしめて、触れるだけのキスをする。千聖は後ろ髪を引かれる思いで、出勤した。会社に来ると、千聖の気持ちは自然と引き締まる。少し前までは仕事に集中出来るか心配だったが、仕事に打ち込むことができた。10時になると、千聖はすぐに紅玲に電話をかける。紅玲はワンコールで出てくれた。『もしもし、チサちゃん。お疲れ』のんびりした紅玲の声を聞いて、ホッとする。「お疲れ様、紅玲。今は荷物をまとめてる最中かしら?」『そうだよ。もう少しで詰め終わるかなぁ』「そう、新幹線乗り間違えないでね」“寂しい”という言葉を飲み込み、茶化してみせる。『あっはは、トーマが一緒だから、大丈夫だよ。トーマが予定より早く来るみたいだから、急いで詰めないと。またね』「え? えぇ、気をつけて」千聖が言い終わるか否かのタイミングで、電話は切られてしまった。「もう、何よ……。人が心配してるのに……」「彼氏さんと喧嘩ですか?」「きゃあっ!?」瑞希にいきなり声をかけられ、千聖は思わず大声を出してしまった。「驚きすぎですよ」瑞希は悪びれる様子もなく、ヘラヘラ笑う。「いきなりだからびっくりしたのよ……」千聖はバツが悪そうに、目をそらす。「それはすいません。それで、喧嘩の原因はなんですか? 洗濯物のたたみ方? それとも調理器具を洗うタイミングですか?」瑞希が考えつく喧嘩の原因が面白くて、千聖は吹き出す。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行17

「ふふっ、あなたって面白いこと言うわね。喧嘩をしたわけじゃないの。実は……」千聖の言葉を遮るように、休憩終了5分前のチャイムが鳴る。「あ、もう時間ですね……。この話はランチ食べながらみんなでしましょ。ほら、たくさん集まると文殊の知恵って言うじゃないですか」「それを言うなら三人寄れば文殊の知恵、ね。でもおかげで気が紛れたわ、ありがとう」「いえいえ、さ、行きましょう!」瑞希は元気よく言うと、千聖の手を引っ張ってオフィスに戻った。そして昼休み、千聖は3人の後輩と一緒に食堂へ行く。弁当持ちの千聖は席を取る。弁当を開けると、オムライスが入っている。「これを食べ終えたら、しばらく紅玲の手料理は食べられないのね……」言葉にすると、余計に気が沈んでしまった。「綾瀬先輩、彼氏さんと何かあったんですか?」さっそく瑞希から聞いたらしく、美幸が天ぷらそばを持ってきながら聞いてくる。「大したことではないのよ」「大したことないが、大したことになることだってあるんですよ」少し遅れて来た千春は、カルボナーラを持ってきた。「いやぁ、でも……」「いいですか? 大したことないからって何も言わずに我慢してたら、向こうは自分でも気づかずに調子に乗っていくんですから。ワガママ彼氏を作りたくなかったら、小さな不満でもはっきり言わなきゃ」いつもは大人しい千春が、珍しく熱く語る。(なんだか思いがけない流れになっちゃったわね……)千聖は内心苦笑しながら、自分のことを真剣に考えてくれる後輩達に感謝する。「おまたせ、もしかして話始まっちゃいました?」カツ丼を持ってきた瑞希は、様子を伺うように目配せをしながら聞く。「まだ始まってもいないわ」「それならよかったです」千聖が答えると、瑞希は安堵しながら座った。「それで、綾瀬先輩何があったんですか?」代表して瑞希が本題に入ってくれる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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紅玲の取材旅行18

「実は彼、シナリオライターをしているの。それで次に書く作品の取材旅行に今日から行ってるんだけど、取材旅行に行くことを伝えられたのって昨日の夜なのよ……」「えぇっ!?」3人は綺麗に声を揃える。「いくらなんでも前日なんて酷くないですか!?」「いやいや、アウトですよ」「シナリオライターだったんですね、彼氏さん……。バンドマンかと思ってました」3人は口々に思ったことを言う。「あぁ、美幸は見たことあるんだっけ……。私も見たい」「ねー先輩、この際だから写真見せてくださいよ」紅玲の容姿を知らないふたりは、千聖に詰め寄る。「……分かったわよ。そのかわり、あんまり人に広めないでよね」千聖は渋々スマホを操作して、壁紙にしている紅玲の写真を見せた。それは紅玲が珈琲を注いでいる時の写真で、絵になると思ってこっそり撮ったものだ。「わぁ、イケメン!」「確かにバンドマンっぽいかも。綾瀬先輩がこういう人と付き合ってるって、意外ですね」ふたりはまじまじと写真を見ながら、それぞれ感想を言う。「楽器にはまったく興味はないそうよ。彼、県外から出たのって1度だけだから、不安なのよね……。親友が一緒らしいんだけど……」「その1度きりって、どこに行ったんですか?」(さすがに私の兄の借金返済でなんて、言えないわよね……)千春の質問に、千聖は言葉を詰まらせる。「さぁ? 本人からはそれしか聞いてないから……。日帰りだったって言ってたから、そう遠いところじゃないんじゃない? 今回は京都と奈良に行くんですって」「わぁ、遠い……。確かに心配になりますね」美幸は大きく頷きながら同意する。「でも、心配してばっかじゃ綾瀬先輩が損ですよ。せっかくだから、楽しんでみたらどうですか?」瑞希はイタズラっぽく笑いながら言う。「楽しむって?」「そのままですよ。同棲してるんですよね? それなら普段はじっくり見られないであろう彼氏さんの部屋を見てみるとか、私達と呑みに行くとか」「それ瑞希が綾瀬先輩と呑みたいだけでしょ?」瑞希の言葉に、千春は苦笑する。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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