私は杉野芽衣(すぎの めい)、音信不通だった彼氏の九条一航(くじょう いっこう)が、突然SNSにこんな投稿をした。【この投稿を100番までに『いいね』した人全員に、別れ祝い金をプレゼント】瞬く間に、「いいね」は99件まで増えていた。きっとまた、私が以前の十回のように、折れて謝り、投稿の削除を懇願するのを待っているんだろう。だが、今回は違った。私はその投稿をシェアし、一言コメントを添えた。【私もその一人に入れて】そして、彼のSNSも電話番号も、すべてブロックした。三日後、一航の幼馴染からメッセージが届く。【一航さんの卒業公演、あなたのチケットも取ってあるよ。来てくれたら、今回のことは水に流すってさ】私は机の上にある航空券に目を落とした。【用事があるから無理】用事があるのは本当だ。東山大学の大学院に合格し、今夜の飛行機で東山に向かうところだ。彼とは、もう二度と会うことはない――そう心に決めていた。……失恋した幼なじみの千葉佳乃(ちば よしの)を慰めるためだと、一航が彼女をホテルに連れ込んだ――その事実を知った時、思い切り彼の頰を張り飛ばした。ホテルの一室。シャツの襟元が乱れ、だらりと開いた一航の首筋に、うっすらと赤い痕が浮かんでいる。私は彼の真っ直前まで進み出ると、詰まりかける声をかすれさせて問い詰めた。「私に恥ずかしくない?」彼は舌打ちして、髪をかき上げると、まるでとんでもない戯言を聞いたような顔をした。「付き合ってるだけだろ?結婚してるわけじゃない。誰と寝ようが自由だろう?」そう言い捨てて、彼は振り返り、佳乃の方へ視線を走らせた。佳乃は涙声を押し殺すように、かすれさせた声で言い足した。「ごめん、芽衣さん。私が悪いんだ。一航さんを責めないで……」「もういい」一航が彼女の言葉を遮った。冷たい視線は私に向けられたままだった。「俺がしたいからしたんだ。大したことじゃない。いつもみたいに、大袈裟に騒ぎ立てて……またそんなこと言うなら、こっちから別れてやるよ」また別れ。これで十一回目だ。いずれも佳乃がきっかけで、彼から切り出された別れ話。大学一年から三年間、彼と付き合ってきた。喧嘩の数だけ、彼のために涙を流した。それでも、最後に折れて歩み寄るのは、いつだって私の方だっ
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