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100いいね達成したら別れよう
100いいね達成したら別れよう
Penulis: 五月雨

第1話

Penulis: 五月雨
私は杉野芽衣(すぎの めい)、音信不通だった彼氏の九条一航(くじょう いっこう)が、突然SNSにこんな投稿をした。

【この投稿を100番までに『いいね』した人全員に、別れ祝い金をプレゼント】

瞬く間に、「いいね」は99件まで増えていた。

きっとまた、私が以前の十回のように、折れて謝り、投稿の削除を懇願するのを待っているんだろう。

だが、今回は違った。

私はその投稿をシェアし、一言コメントを添えた。

【私もその一人に入れて】

そして、彼のSNSも電話番号も、すべてブロックした。

三日後、一航の幼馴染からメッセージが届く。

【一航さんの卒業公演、あなたのチケットも取ってあるよ。来てくれたら、今回のことは水に流すってさ】

私は机の上にある航空券に目を落とした。

【用事があるから無理】

用事があるのは本当だ。東山大学の大学院に合格し、今夜の飛行機で東山に向かうところだ。

彼とは、もう二度と会うことはない――そう心に決めていた。

……

失恋した幼なじみの千葉佳乃(ちば よしの)を慰めるためだと、一航が彼女をホテルに連れ込んだ――その事実を知った時、思い切り彼の頰を張り飛ばした。

ホテルの一室。シャツの襟元が乱れ、だらりと開いた一航の首筋に、うっすらと赤い痕が浮かんでいる。

私は彼の真っ直前まで進み出ると、詰まりかける声をかすれさせて問い詰めた。

「私に恥ずかしくない?」

彼は舌打ちして、髪をかき上げると、まるでとんでもない戯言を聞いたような顔をした。

「付き合ってるだけだろ?結婚してるわけじゃない。誰と寝ようが自由だろう?」

そう言い捨てて、彼は振り返り、佳乃の方へ視線を走らせた。

佳乃は涙声を押し殺すように、かすれさせた声で言い足した。

「ごめん、芽衣さん。私が悪いんだ。一航さんを責めないで……」

「もういい」

一航が彼女の言葉を遮った。冷たい視線は私に向けられたままだった。

「俺がしたいからしたんだ。大したことじゃない。いつもみたいに、大袈裟に騒ぎ立てて……またそんなこと言うなら、こっちから別れてやるよ」

また別れ。これで十一回目だ。いずれも佳乃がきっかけで、彼から切り出された別れ話。

大学一年から三年間、彼と付き合ってきた。喧嘩の数だけ、彼のために涙を流した。それでも、最後に折れて歩み寄るのは、いつだって私の方だった。

彼には、もう私がどう転んでも自分からは離れないと、踏まれていたのだろう。

でも、今回は違った。

もはや喧嘩する気力さえ、私には残っていなかった。

私はただ、静かにうなずいた。そして、エレベーターへと歩き出した。

すると佳乃が小走りに近寄り、私の手を握った。その指先は冷たく、声は綿のように柔らかかった。

「芽衣さん、お願いだから怒らないで。一航さんは本当にあなたを愛してるよ。さっきだって、ベッドでずっとあなたの名前を呼んでて……」

私は彼女の手を激しく振り払った。

むかつく。

胸の奥から、言いようのない嫌悪感が逆流してくるようだった。吐き気さえ覚える。

一航が大股で間に立ち、佳乃をまるで庇うかのように自らの背後へと押しやった。そして、私を鋭く睨みつけ、歯軋りするように言い放った。

「気に入らないなら、とっとと消えろ。その顔、見るのも癪だ」

彼が彼女を守るその姿を見て、私は不意に、嗤うような笑いが零れてしまった。

「そうね」

私はそう答えると、ホテルの部屋のドアを静かに閉めた。

エレベーターが降りていく。私は泣かなかった。

ロビーを通り過ぎる際、フロントの女性が一瞬、哀れむような目を私に向けたが、すぐに目を逸らすように下を向き、キーボードの音を響かせた。

街には強い風が吹きすさんでいた。二ブロックほど歩き、やっと空車のタクシーをつかまえた。

運転手に行き先を聞かれ、私は答えた。

「どこでもいいです」

スマホが絶え間なく震えていた。一航からのメッセージだ。

【いい加減にしろ】

【戻ってこい】

【芽衣、調子に乗るな】

最後はこうだ。

【マジで別れるつもりか?覚悟しろ】

返信しなかった。

車窓の外の景色が流れていく。彼とのごちゃごちゃとした記憶のようだ。

高校から三年間も片思いして、やっとの思いで彼に告白した。

付き合って初めて手を繋いだ時、胸の鼓動が止まりそうになった。

限定のぬいぐるみをくれたことも、真夜中に救急に付き添ってくれたことも、誕生日には特注の花火を見せてくれたことも、全部本当だった。

でも、その同じ彼で、何度も何度も佳乃のためなら私を置いて行った。

スマホの12人グループチャットが突然、通知で震えた。

誰かが一航をタグ付けしていた。

【一航、マジで佳乃とホテルで芽衣にバレたの?またギャーギャー泣かれてんの?】

このグループには3年前から私も潜んでいたが、一度も発言せず、皆から完全に忘れられていた。

一航が即座に返信した。

【うるせぇな。今、無視されてんだけど。まさか本当に別れられそうでワロタ】

【おっ、ついに反抗期?一人にさせた方がいいんじゃね?いつもベタベタうぜぇってお前言ってたし】

【www明日にはまたメッセージしてくると賭けるわ】

一航が返信した。

【そりゃそうだ】

そう書き込むと、彼はすぐにSNSの画面を開いた。

【この投稿を100番までに『いいね』したやつ全員に、別れ祝い金プレゼント!】

事情を知らない友人たちが、続々と「いいね」を押し、シェアしていく。

私は静かにその投稿をシェアし、一行だけコメントを添えた。

【私も入れて】
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