真帆は病室を見回し、それから点滴のチューブへ視線を落とした。「私……」「交通事故に遭われました。でも運がよかったですね。かすり傷程度で済みました。ただ……」「ただ?」看護師が答えようとしたその時、病室のドアが開いた。慌てて入ってきた和幸は、真帆が目を覚ましているのを見ると、ようやく安堵の息をついた。「よかった……三日くらい目を覚まさないんじゃないかと思ったぞ」「無事だったの?」真帆は状況がまったく分からなかった。記憶はまだ別荘で止まっている。「知恵は?」「知恵さんも無事だ。もう家まで送ってきた」和幸は隣の椅子へ腰を下ろした。「どこか痛むところはないか?頭はくらくらしないか?先生が、特に異常がなければ目が覚めてから三十分ほど様子を見て退院していいって言ってた」「いったい何があったの?どうやって脱出したの?浩一郎さんと風香さんは?」真帆は矢継ぎ早に質問した。和幸はしばらく黙ってから、ゆっくり口を開いた。「あの女は重傷で助からなかった。事故現場で亡くなった。あのじいさんは……」そう口にすると、和幸は鼻を鳴らした。「あのじいさんは年寄りだからな。今は集中治療室にいる」「つまり……無事だったのは私だけなの?」真帆は違和感を覚えた。「一雄は?」和幸の視線が一瞬泳いだ。真帆はすべてを悟った。「……一雄が、やったの?」「とにかく、あいつは……お前が目を覚ましたら、まず海外へ連れて行けって言ってた」珍しく和幸は否定しなかった。ただ、その声にはためらいがあった。「西園寺家のことを片づけたら、迎えに行くってさ」「やっぱり……一雄だったんだ」和幸の言葉を聞いても、真帆は驚かなかった。それどころか、どこか安心した気持ちさえあった。それはつまり、一雄が浩一郎たちに追い詰められていなかったということだ……だが、和幸は不思議そうな顔をした。「お前……怒らないのか?」真帆は顔を上げた。「何を?」「いや、その……」今度は和幸のほうが言葉に詰まった。和幸は、真帆が一雄のやり方を冷酷だと責めるものだと思っていた。風香はその場で死亡し、浩一郎も生死の境をさまよっている。それに真帆も馬鹿ではない。こんな都合よく、狙った相手だけが被害を受ける交通事故などあるだろうか。見た目は大事故だが、実際に大き
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