六年ぶりに再会した高校時代の同級生は、俳優になっていた。「桜、ずっと会いたかった」 そう言って、彼は優しく私を抱き寄せた。 ずっと、ただの友達だと思っていた彼。 生涯、あの人しか愛せないと思っていたのに、なぜか彼を見ると落ち着かない。 どうして?「契約しよう。俺が桜の失恋を慰めるカレシになるよ」 彼が提案してきたのは、甘くて残酷な契約。 偽物の恋人。 好きになってはいけない。 だけど……。「好きだよ、桜」「そんなにあいつがいいの?」「俺を好きになってよ」 毎日囁かれる甘い言葉は、次第に私の心を蝕んでいく……。 *** 男女の最後というものは、こんなにも呆気ないものなのだろうか。『別れよう』 視界に映るのは、SNSのメッセージ。たったの四文字で、私たちの関係は終わった。 真っ暗な画面を見つめて、ため息をつく。 あれから一週間。追加の連絡は一切ない。 分かっている。彼はそういう人だ。分かっているのに、未だに通知がきていないか画面を見てしまう。 いくら願っても、彼からのメッセージがくることなんて有り得ないのに。「はぁ……」 想い続けて六年間。 焦がれてこがれて、ようやく手に入れた恋だった。 それなのに……。「なにがダメだったのかなぁ……」(自分なりに尽くしたつもりだったんだけど……) 彼――冬野真宙くんと私は、高校と大学の同級生で、現在同じ職場に通っている。 高校生のときから真宙くんに片想いしていた私は、教師を目指していた彼を追いかけて同じ大学に進んだ。 真宙くんはすらりとした長身で、頭が良くて、爽やかで……女の子にものすごい人気で、彼女が絶えたことなんてほとんどない。 そんな彼に三度目の告白でいい返事をもらえたときは、本当に嬉しかった。 付き合って半年。たった半年……。 飽きっぽい彼に飽きられないように、自分なりに頑張ってきたつもりだったのに。 押し過ぎたのがいけなかったのか、尽くし過ぎたのがいけなかったのか。 真宙くん以外に経験がない私には、いくら考えても分からない。「どうしたらよかったんだろう……」 ぽつりと呟いても、この部屋に答えてくれる人はいない。 真宙くんはもう、私のことなんてすっかり切り捨てて、同期の女の子と付き合い出している。(未練なんて
Last Updated : 2025-12-19 Read more