翌日。以前住んでいた街にある喫茶店に入ると、スーツ姿の真宙くんが角の席に座っていた。 格好を見るに、仕事を抜け出してきたのだろうか。今は夏休みだから、教員は比較的休みを取りやすい時期ではある。「ごめん。おまたせ」「いや。急に呼び出して悪かった」「ううん。全然」 言いながら向かいに座る。真宙くんは店員にアイスコーヒーをふたつ注文した。「……桜、少し痩せた?」「えっ」 目が合うなり、真宙くんは私の頬に触れた。びくりと肩が揺れる。「……そ、そう、かな。そんなことないよ」(前の体重に戻ってきたと思ったのに)「俺のせい……だよな」 申し訳なさそうな顔をする真宙くんに、私は内心困惑しながらも首を横に振る。「違うよ! 全然、真宙くんはなにも悪くないから」「……今、どこでなにしてるんだ?」「……えっと……」 まさかそんなことを聞かれるとは思わず、言葉につまる。 沈黙が落ちたテーブルに、からりと涼やかな音が落ちた。 店員がアイスコーヒーを持ってきた。 真宙くんが続ける。「なぁ桜、戻ってこないか?」「え……」 戻る。どこに?「一方的だっていうのは分かってる。身勝手にふっておいて、仕事まで奪っておいて、虫のいい話だってことも分かってる。でも……もし桜が許してくれるなら、今まで桜には尽くしてもらうばかりでなにも返せていなかったから、できることならやり直したいんだ」「だって……真宙くんには山崎さんが」 私と別れてすぐ、真宙くんは私たちの同期と付き合っていたはずだ。「別れたよ。桜が仕事辞めてすぐ」「え……どうして?」 真宙くんは一度私から目を逸らし、口を引き結んだ。
Terakhir Diperbarui : 2026-01-21 Baca selengkapnya