Semua Bab 失恋カレシ: Bab 21 - Bab 30

36 Bab

第二十話

 波音と同棲が始まって一ヶ月が経ったある日の昼下がり。私は渋谷にあるイタリアンのお店にいた。 今日は沙羅とランチデートの約束をしているのだ。 久しぶりの外出。 沙羅とは舞台に行って以来だから、ぶっちゃけものすごくわくわくしている。(七木さんとはどうなったのかな……) 電話は何度かして、いい感じだと聞いているけれど。「あっ、桜~!!」 先に店に着いたので涼んでいると、変装した沙羅がやってきた。 今日のコーディネートは、黒のニットタンクトップに赤のマーメイドスカート。背が高くすらりとした沙羅には、ロングスカートがよく似合う。目元を隠すサングラスはかけているけれど、相変わらずオーラはばりばりだ。「遅くなってごめーん! 待った?」「全然。今日の仕事は?」「今日はもう終わりだよ!」「そっか。お疲れ様」 向かいのソファに腰を沈めながら、沙羅は優雅な所作でサングラスを取った。「いやぁ今日も暑いねぇ。お腹減ったよ~」 沙羅は手で顔をあおぎながら水を飲む。 からからと涼し気な音がして、沙羅の喉元が上下に動く。 沙羅の一挙手一投足には、自然と目がいく。さすがモデルだ。 私はメニューを取って、沙羅に差し出す。「ありがと。桜はもう頼んだ?」「まだ」「それじゃ頼も。今日は暑いから私飲みたいな~」「じゃあとりあえずビール?」「ビール~! 桜も飲むでしょ?」 一瞬悩んだけれど、波音の顔が過ぎって首を横に振る。「うーん、私はノンアルでいいかな」「えっ!?」 沙羅が信じられない、という顔をして身を乗り出す。「桜がビールを飲まないなんて……どうしたのよ。あ、あんたまさか、まだ真宙くんのこと……」 過去の話を蒸し返されそうになり、私は慌てて顔をぶんぶんと振る。「ち、違うよ。帰ってから波音の晩御飯作らないといけないから、酔っ払うわけにはいかないんだよ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-11
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第二十一話

 ふと、スマホが鳴った。「あ、ごめん」 画面を見ると、波音だった。沙羅を見る。出ていいかと尋ねる前に、沙羅に「どうぞ」と言われた。 通話ボタンをタップする。「もしもし」『あ、桜? ごめんね、今大丈夫?』「うん。どうしたの?」 どきどきしながらも、平静を装う。『今日は外食したいから、晩御飯は作らなくていいって伝えたくて』「え、そうなの?」(もしかして、だれかとどこかで食べるのかな……)「……そっか。わかった」 それじゃあ、と通話を切ろうとしたとき。『あ、桜も食べないでね』と慌てて付け足された。「えっ? 私も?」 どういうことだろう。『うん。今晩はふたりででかけたいんだ』「えっ……ふたりで?」(それって……)『ふたりでたまには外食もいいかなって』「……いいの?」 嬉しい。ものすごく。『もちろん。桜、いつも頑張ってくれてるからさ。あ、ごめん呼ばれちゃった! 行かなきゃ。そういうわけだから、夜八時には家にいてね。じゃっ』 電話の向こうから波音を呼ぶ声がしたかと思うと、波音は早口で要件だけを告げ、一方的に通話を切ってしまった。「あっ……波音!」「ディナーデートかぁ。いいねぇ、若いねぇ」 沙羅がむふふ、と笑いながらからかってくる。「そ、そんなんじゃないから! 断じて!」 波音に好きな人がいると聞いたばかりで、なにを喜んでいるのだと自分を諌める。波音はただ、私に気を遣って労ってくれてるだけだ。 勘違いするな。しっかりしろ。 自分に言い聞かせていると、沙羅が目を細めてじっと私を見つめていることに気付いた。 すごい目力だ。「……な、なに?」「ううん。ただ、桜が元気になってよかったなって
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-12
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第二十二話

 ふと、高校生のときの記憶が思い起こされた。 優等生で真面目な真宙くんと違って、波音はサボり魔だった。不良だったわけではないのだが、授業が面倒だったのか、よく旧校舎の空き教室に隠れて昼寝をしていた。 普段から波音と仲が良かった私が、先生に指名されてよく呼び戻しに行っていたのだ。だけどあの日――真宙くんに初めての告白をしてふられた日だけは、私も授業をサボったのだ。 教室で真宙くんと顔を合わせるのが怖くて、授業に出ずに朝から体育館裏に隠れていた。 ひとりで泣いていた私を見つけてくれたのが波音だった。 波音は私を見つけるなり、教室へ連れ戻すわけでもなくただ黙って隣に腰を下ろして、うたた寝していた。 そのままその日は波音も授業を一緒にサボってくれたのだ。 そういえば……あのとき私、不良じゃないくせになんでサボるのかって波音に聞いた気がする。(波音は、なんて答えたんだっけ……) ぼんやり高校時代のことを思い出していると、「――桜? ぼーっとしてどうしたの?」 沙羅の声でハッと我に返った。「あ、ううん。なんでもない」「ま、波音と出かけるなら周囲の目には気を付けるんだよ。週刊誌とか最近結構しつこいし、波音のファンとか、業界人でも波音を好きな女子はいっぱいいるから」「やっぱり波音ってモテるんだね……」「あのルックスだし、それがなくても波音って真面目で努力家だし、現場でも礼儀正しいからね。男女問わず好かれてるよ。みんな波音の事務所に入りたがってるくらい」「……そっか」(……モテるだろうなとは思ってたけれど) そこまでとは。(芸能人ってプライベートにまで気を遣わなくちゃいけないんだ……) 大変だ。 でも、それならなんで波音は私に失恋カレシの契約なんて持ちかけたのだろう。 一般人の私と同棲なんてバレたらかなりの記事になってしまうだろうし、そこまでしなくても練
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-13
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第二十三話

(暑い……) こめかみから流れた汗の雫が顎につたい、ぽっと落ちる。煩わしい汗を、俺は首にかけていたタオルでぞんざいに拭った。 空調の壊れた稽古部屋は、今の季節は地獄だ。冬は冬で寒くて凍えるのだが、それでも動けば多少は寒さも和らぐ。だが、夏はそうはいかない。 頭にタオルをかけ、座り込んで息を整える。 今回の舞台は殺陣があるわけでも、特別ダンスがあるわけでもない。立ち位置移動と歌を歌うだけでこの汗である。(……しんど) 引かない汗を拭っていると、ふと目の前にほっそりとした足が見えた。「絢瀬さん、お疲れ様です」 顔を上げると、綺麗な女性と目が合った。「……あ、緑谷さん、お疲れ様」 腰まで伸びた明るめの茶髪と、涼し気な切れ長の瞳。 彼女の名前は|緑谷《みどりや》|千香子《ちかこ》。彼女は、今絶賛稽古中の舞台『失恋カレシ』のヒロイン役の女優である。 緑谷さんは俺の隣に座ると、さらりとした声で言った。川のせせらぎのようだ、と俺は彼女の声を聴くたびにいつも思う。「この前、マカロンご馳走様でした。すみません、私までいただいちゃって」 言いながら、彼女は隣で水分補給をしている。 以前桜にあげたマカロンの情報は、実は彼女から仕入れた。顔に似合わずケータリングや差し入れで誰より先に甘いものを食べる彼女なら、きっといい店を教えてくれると思ったのだ。結果、俺の判断は間違っていなかった。 そのお礼として、彼女にも同じものを贈ったのだった。「あぁ……いや」 彼女の白い喉元が上下する様子をぼんやりと眺める。「?」 ふと、目が合った。緑谷さんが首を傾げる。立ち振る舞いや仕草まで涼し気な人だ、と思う。 「どうでした? 反応は」  「緑谷さんの言う通り、すごく喜んでもらえた」(あーんを恥ずかしがってた桜だけど、最終的には許可してくれたし……) 桜とマカロンを食べたと
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-14
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第二十四話

 ムスッとしたまま、食事はどうするか考える。と、七木と反対側に座っていた緑谷さんが「あ」と声を出した。「あそこなんてどうでしょう。この前、七木さんが連れて行ってくれた港区のフレンチ。美味しかったですよ」 七木がげんなりとした顔で息を吐く。「……うわぁ。お前ここでそういうこと言う?」「え、だって美味しかったからオススメしてるんだし、いいじゃないですか。あのときはご馳走様でした」 笑顔の緑谷さんと、不機嫌そうな七木。 ……なるほど。 どうやら七木は緑谷さんを口説いて失敗したことがあるらしい。そして俺は、そのときに利用した店を勧められていると。 ……にしても、七木もよく緑谷さんを口説こうと思ったものだ。彼女はたしかに綺麗だけれど、その場の雰囲気に流されるような人ではない。 火遊びには向かない人だろうに。「あれは過去の話だし。今は本命いるし」「えっ! 誰だよ!?」「内緒。あ、でも絢瀬。あそこにいくならドレスコードが必要だぞ」 思い出したように七木が俺を見る。「ドレスコードか……」 桜にドレス。いい。まだ見たことない。「よし。そこにする。名前なんてとこ?」「あとでメッセージで送っとく」「ありがと」 七木とのやり取りを聞いていた緑谷さんは、しみじみと俺たちを見て言った。「……本当に溺愛してるんですねぇ」「え? うん、まぁ」 ……若干引かれている気がする。「まぁ、こいつが俳優になったのも、そのコに応援されたからだしな」「えっ、そうなんですか?」「……いや、元々俳優にはなりたかったんだけどね。でも、学校のヤツらに俳優になりたいだなんて言ったらバカにされるだろ。だからずっと誰にも言ったことなかったんだけど……唯一、彼女だけがすごい、頑張れって言ってくれたんだよ。そ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-15
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第二十五話

 数度のコール音のあと、桜の少し慌てたような声が聞こえた。『もしもし?』 桜の声は、陽だまりのようなあたたかみがある。『どうしたの?』 ぎゅっと抱き締めたくなる不思議な声だった。なにもかもがさらさらとした緑谷さんとは対照的な声だ。(……あぁ、癒されるなぁ。会いたい……) 晩御飯は作らなくていい、と伝えると、スマホの向こうの桜は少ししょんぼりしていた。「…………」(……もしかして、俺が誰かと食べに行くと思ってる?) そういえば、そもそもディナーに行こうと誘っていなかったことを思い出す。「今晩はふたりで出かけたいんだ」 そう付け足すと、桜の声は少し戸惑うような、けれどちょっと安心したような、なんとも言えない色が滲んで。(もしかして、もしかして桜も少しは俺のこと……) 意識し始めてくれたのだろうか。もしそうなら、嬉し過ぎる。 ふと、ソファで項垂れていた桜の横顔がフラッシュした。 この前は真宙からの通知を待っているようだったから、まだ真宙のことを引きずっているのだなと思っていたけれど……。 胸がそわそわする。 桜に勘繰られたくなくて、慌てて嘘をついて通話を切った。切ってから、ふぅっと息をつく。(顔が熱い……)「桜ちゃんとの電話終わった?」「うわっ!?」 ぬっとすぐ耳元に気配を感じて飛び上がる。ぎょっとして振り向くと、口角を上げた七木がいた。「びっくりした……」「なんかにやけてたけど、とうとう告白でもされた?」「は? んなわけないだろ。ただ少し桜も俺のこと意識し始めてくれたかなって気がしただけ」「おっ、よかったじゃん。それじゃあそろそろ告白したら?」「えっ!? いや、でもまだ俺のこと好きかどうかは」「バカ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-16
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第二十六話

 沙羅と七木さんの恋バナでひとしきり盛り上がったあと、軽い食事を済ませて波音と住む港区のタワーマンションに帰ってきた。 家に帰ってからも、なんだか落ち着かない。 私はひとりコーヒーを淹れてみたり、リビングの掃除をしたりとそわそわしていた。 沙羅にいろいろな話を聞いてしまったから、なんとなく落ち着かないのだ。波音と顔を合わせるのが気まずいとさえ思ってしまう。『波音に好きな人がいる』 このワードが、頭から離れない。(高校時代、波音が仲良くしてた子っていたっけ……?) 気が付くとそんなことばかり考えてしまって、ハッと我に返る。そんなことを早数時間繰り返している。 もやもやと頭を悩ませていると、扉が開く音がした。「ただいまー」(かかか、帰ってきた! どうしよう、出迎えのときってなんて言うんだっけ) パニックになる。「あ、波音。お、オカエリ」 咄嗟にカタコトになってしまった。波音が立ち止まって私を見る。「どうした、カタコト」 波音が戸惑った顔をする。「うっ……ううん、ベツニ」平静を装おうとすればするほど、おかしくなる。「……沙羅と会ってきたんだよね? どうだった?」「うん。タノシカッタ」「だからなんでカタコト……?」 とうとう波音に怪訝な顔をされてしまった。「なんでもないよ! そ、それより、晩御飯本当に用意してないんだけど大丈夫だった?」「あ、うん。大丈夫だよ。それで桜、これ着てくれない?」 波音が高級そうな紙袋を差し出してくる。「え、これって……」 ロゴを見て、目を見張る。(これ、知ってる……めちゃくちゃ高級なドレスブランドだ)「開けてみて」 中にはやはり、豪華なドレスとヒールパンプスが入っていた。 白を基調とした生地に、水彩の桜が咲いて
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-17
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第二十七話

 波音が連れていってくれたディナーは、東京湾が見渡せるビルの最上階のフレンチだった。 正装した波音はいつもより格好良くて、出てくる料理もどれもすごく美味しかった。 だけど、私の心の中は荒波がざばざばとうるさく音を立てていて。 このドレスはどうしたのだろうとか、もしかして、好きな子にあげるために買ったものなんじゃないかとか、そんなつまらないことばかりが頭をよぎって、食事どころではなかった。 料理のあと、波音は寄りたい場所があるといって、私を海へ連れてきてくれた。「……桜、寒くない?」「大丈夫だよ」 今は七月。すっかり日は落ちているけれど、地面に籠ったままの熱のせいで汗ばむくらいに暑い。 ザザン、と波の音が涼しさを演出してくれる。「……ねぇ桜。ご飯あまり好みじゃなかったかな?」「え?」 隣を見上げると、しゅんとした顔の波音がいる。「えっ? すっごくおいしかったよ?」「……でも桜、食べてる間ずっと眉間に皺寄ってたから。フレンチ、あんまり美味しくなかったのかなって……」「ぜ、全然っ! どの料理も美味しかった! 波音、連れてきてくれてありがとう」「じゃあ、なにか悩みでもある? なんでも話してよ。俺にできることなら力になるから」 どこか苦しそうなその表情に、否が応でも期待してしまう。 ぎゅっと奥歯を噛む。 留まれ、と自分自身に強く言い聞かせる。 それなのに私の口は、勝手に言葉を紡いだ。「……あの、波音。私、ずっと聞きたかったことがあるんだ」「うん、なに?」「波音って、好きな人いるの?」「――え」  波音の息が詰まるのが分かった。動揺を表した波音の顔を見つめ、あぁ、と思う。「……いるんだね」 沙羅の言葉を疑っていたわけじゃない。沙羅は嘘は言わないし。 ……でも
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-18
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第二十八話

 海から帰ると、私はまっすぐ浴室へ逃げ込んだ。 湯船に浸かって、溢れ出る涙を誤魔化す。(泣くのは今だけ。ここから出たら笑って、今度はちゃんと波音の恋を応援する) そう、ちぎれそうな心に言い聞かせた。 お風呂から上がると、私は波音に浴室から出たことだけ告げて自室へ入った。 部屋でぼんやりとタオルドライをしていると、隣の部屋の扉が開く音がした。波音もシャワーを浴びにいくのだろう。 私は波音がいないことを確認して、喉をうるおしにキッチンへ向かう。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、リビングへ行く。 ソファに座って、スマホをいじる。画面を見つめ、小さくため息を漏らした。「……教員採用試験は今年はもうないしなぁ」 仕方なく臨時職員の募集要項を確認する。 臨時教員では、なれたとしても生活が苦しい。とはいえ私立校の教師というのもあまり気が進まない。でも、そんなことも言っていられない。 波音のためにも、今はとにかく就職を決めてここから出ないといけない。「ここらへんがいいかなぁ……」 いくつか候補を見つけて唸っていると、横からひょっこりと波音が顔を出した。「就活?」 お風呂に入っていたはずの波音は、いつの間にか隣にいた。「わっ! 波音、いつからいたの!?」 タオルを首にかけ、ラフな部屋着姿で波音が私のスマホを覗く。「いつからって、ため息ついてるあたりから。桜、声かけても無視なんだもん」「ご、ごめん。全然気付かなくて」 立ち上がろうとすると、肩に手を置かれて制された。「焦らなくてもいいじゃん。このままここにずーっと住んでていいんだよ? 桜がいてくれると、ものすごく助かるし」 波音はそう言ってくれるけれど。……というか。「それじゃただの同棲だよ!」「そうだね。でも、俺たちは恋人なんだから、普通でしょ?」 波音が頬にチュッとキスをする。「わっ…&h
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-19
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第二十九話

 あれから、一週間が経過した。 波音とは、タワーマンションを出てからは一度も連絡を取っていない。 私はこれ以上波音への気持ちが大きくならないよう、できるだけ波音のことを考えないようにして日々を過ごしていた。 私は今、地方の実家に帰っている。  わけを話したら家族はあたたかく私を受け入れてくれて、今は休んでいていいと言ってくれた。 そのため今は、これまでの貯金を崩しながら次の教員試験に向けて勉強をしている。「……ふぅ」 参考書を閉じ、目頭を押さえる。 窓に目を向けると、夏風にカーテンが揺れている。 静かな部屋に、小鳥のさえずりと愛犬の鳴き声がする。「……あ、散歩に行きたいのか」 今日はそこまで暑くもないし、曇っているし……。 一階に降り、居間にいたお母さんに声をかけてから、外に出る。「コロ~お散歩行こう~」 名前を呼ぶと、小屋の中から白黒の毛並みの犬が出てきた。「きゃんっ!」 鳴きながらダッシュで駆けてきたのは、実家で飼っている愛犬のコロだ。くりくりとした黒目がちの瞳が可愛らしいボーダーコリーである。「よしよし。お散歩行こうね」 夕方の田んぼ道を歩きながら、薄く伸びた影をぼんやりと見下ろす。(波音は今、なにしてるんだろう……) 気を抜くと、ついそんなことを思ってしまう。ぎゅっと目を瞑って、頭の中から余計な思考を排除する。 そのとき、ブブッとスマホが鳴った。 ポケットからスマホを取り出し、アプリを開く。メッセージが立て続けに二件、入っていた。 一件目は沙羅から。今から電話する、というメッセージだった。「……え、今から!?」 すぐに沙羅からかかってきた。 通話ボタンをタップした瞬間、スマホから沙羅の大きな声が響いた。『ちょっと桜!? 波音の家出たってなによ!?』「え、いやだって…&
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-20
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