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第二十九話

Autor: 朱宮あめ
last update Última atualização: 2026-01-20 11:01:00

 あれから、一週間が経過した。

 波音とは、タワーマンションを出てからは一度も連絡を取っていない。

 私はこれ以上波音への気持ちが大きくならないよう、できるだけ波音のことを考えないようにして日々を過ごしていた。

 私は今、地方の実家に帰っている。

 わけを話したら家族はあたたかく私を受け入れてくれて、今は休んでいていいと言ってくれた。

 そのため今は、これまでの貯金を崩しながら次の教員試験に向けて勉強をしている。

「……ふぅ」

 参考書を閉じ、目頭を押さえる。

 窓に目を向けると、夏風にカーテンが揺れている。

 静かな部屋に、小鳥のさえずりと愛犬の鳴き声がする。

「……あ、散歩に行きたいのか」

 今日はそこまで暑くもないし、曇っているし……。

 一階に降り、居間にいたお母さんに声をかけてから、外に出る。

「コロ~お散歩行こう~」

 名前を呼ぶと、小屋の中から
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     そして、真宙くんと約束した日。待ち合わせは、付き合っているときによく二人で行ったカフェにした。テラス席に座り、私はアイスティーを真宙くんはアイスコーヒーを注文する。 顔を見てちゃんと話がしたい、なんていいながら、いざとなるとものすごく緊張する。「……あの、えっと」 しどろもどろになる私を見て、真宙くんが苦笑する。「……ふられるんだな、俺は」 私の言葉を遮って、真宙くんが言った。「……ごめんなさい」 謝ると、真宙くんは小さく笑って首を横に振るり「桜が謝ることなんてひとつもない。ぜんぶ、俺が悪い。俺こそごめん。今まで桜をたくさん傷付けた。仕事を辞めることになったときも、庇ってやれなかった」「ううん。謝らないで。私、真宙くんと付き合ってるとき本当に楽しくて、幸せだったよ。ずっと夢の中にいるみたいだったっていうか」「現実的じゃなかったってことだな」 ハッとして、俯く。「ごめん……」 顔を上げると、真宙くんはどこか遠くを見ていた。「……もっと、いろんなところ行っておけばよかったな」 ちらりと視線を流した真宙くんと目が合う。「桜ともっと、いろんなところに行っておけばよかった。今さらになって、桜を知りたいなんて思うんだ。高校時代、桜は俺に好き好き言いながらもほかの女子に比べたらちょっと遠慮がちで、俺がなにか頼みごとしたら二つ返事でうんって言って……」(忠犬か、私……)「む、昔の話はやめて恥ずかしい……」「追いかけられることが当たり前になってたんだな」 真宙くんはまっすぐに私を見つめて、「桜。俺は桜が好きだよ。もう一回、やり直したい」 唇を引き結ぶ。胸の中を、ざわざわと風が吹いた。膝の上に置いていた手をぎゅっと握る。(はっきり、言わないと……)

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