「うぅ、ママぁ……」「チッ、うるせぇ!」 茂樹はイライラしていた。自分が置かれた状況にも、小雪にも、明里にも。すべてにイライラしていた。(ガキのくせに、こんないい服着やがって。俺なんかそのへんで捨てられてた服だぞ) 彼の人生は凄惨なものだった。歳の離れた姉は優秀で、ことあるごとに比べられ、親に失望されてきた。両親は姉に金をかけ、愛情を注ぎ、茂樹には、あまり金もかけなければ、愛情も大して注がなかった。 例えば、姉がほしいといえば、1着3000円の服だって買ってもらえていた。だが、茂樹が半額の1500円の服をほしいと言っても、買ってもらえたことなど1回か2回で、いつもセール品ばかり。 姉は文房具屋に売ってるいい筆記用具やノートを買ってもらえるが、茂樹は安物ばかり。 絵の具セットだって、姉には使い切れないほど種類がある絵の具を買うが、茂樹には知り合いのお下がりと言った具合だ。 ハーモニカだって、誰が使っていたか分からない中古を我慢しながら使っていた。 両親がキツくあたる中、姉だけは優しくしてくれたが、その優しさが茂樹を更に惨めにした。まるで、「私は優秀だからこんな出来損ないにも優しくするのよ」と言われているようで、嫌だった。 そんな姉の子供である明里の面倒を見てやったのだ。少しくらい恩恵を受けてもいいだろう。 明里が医大に通って外科医になれたのも、成也のような金持ちと結婚できたのも、すべて自分のおかげ。明里はもっと感謝して、金を渡せばいい。そうでもなきゃ、割に合わない。 だというのに、明里は成也と離婚した上に行方をくらました。 明里がいなくなってから、茂樹の人生は再び惨めなものになっていった。せっかく成也の会社で役員として甘い汁を吸っていたのに、もう関係ないからと解雇され、たった50万しか退職金も支払われなかった。「明里が大人しくしてれば、あなたはもっと遊べたのにね」「あなたのおかげで明里は外科医になったんだから、もっと感謝して、大金を渡すべきよ」 ミアの言う通りだ。明里が大人しくしていれば、茂樹は今も立派な服を着て、役職に寄りかかって高い給料をもらえた。 成也の会社が潰れたのも、明里のせいに違いない。もし会社が潰れていなかったら、復帰するチャンスだってあったかもしれない。いや、あった。 ミアがそう言ったのだから。(明里も、そのガキ
Terakhir Diperbarui : 2026-01-17 Baca selengkapnya