夕方の病院待合室。ひとり取り残されたミアは、イライラしていた。自販機が並ぶ粗末なカフェスペースに行って炭酸ジュースを買うと、一気に飲み干す。げっぷが出てもお構いなしだ。ここには誰もいないのだから。「はぁ、ムカつくムカつく……!」 ぎりりと親指の爪を噛む。ミアの悪癖だ。「なんなの、あの男。ホモなんじゃないの」 先程の涼とのやり取りを思い返し、舌打ちする。ミアが色目を使えば、大抵の男が落ちていく。その時は断っても、下心が見え隠れし、2,3回声をかければ思い通りになる。だが涼はどうだ? 上目遣いをしても、胸を押し付けても、鼻の下を伸ばすどころか、冷たく突っ放した。今まで様々な男を落としてきたミアにとっては、考えられない出来事だった。「あの男もだけど、あの女、どうして神宮寺に……?」 1番気になるのは、やはり明里のことだった。成也と明里が結婚した後、ミアは粗探しのために明里の身辺調査をした。出てきたのは意地汚い養父だけで、それ以外やましいものや、特筆すべき過去は出ていない。「まったく、どんな取り入れ方したんだか。地味な女のくせに、金持ちに取り入る才能だけはあるみたいね」 明里のことを思い出すだけでイライラする。あんな地味な女には、成也も神宮寺涼も似合わない。せいぜい冴えない紐とくっついて、苦労すればいい。「どこまでも目障りな女……。今に見てなさい、私の気分を害した罪は重いんだから」 ぎり、ぎりり――。 1歩間違えれば深爪するところまで噛みちぎる。「どんな手を使ってでも、地べたに這いつくばらせてやる」 悪魔のような笑みを浮かべ、低い声でくつくつ笑う。 ミアは昔から、自分の思い通りにならないと気がすまなかった。学生時代、仲のいい子と別のクラスになれば暴れ、誕生日プレゼントで欲しくないものを贈られれば、押し返して返品させ、別のものを買わせた。 座りたい席に座れないだけでも癇癪を起こすものだから、誰もがミアを腫れ物扱いした。当の本人は、それを特別扱いと勘違いし続けているが。 ミアにとって、成也はお気に入りだった。顔も家柄も申し分ない。何より小さい頃から自分に懐いている。成也やいずれ、自分と結婚するものだと思っていた。それなのに、明里なんてぽっと出の地味女に取られてしまった。 戸籍ばかりは、ミアひとりでどうにもならない。だから成也の両親に明里の
Last Updated : 2025-12-28 Read more