「本当に、申し訳ない……」 うなだれ、涙を流す成也を見て、明里はぎょっとする。学生時代から彼を知っているが、涙を見たことなど、1度もなかった。「成也さんが悪いわけじゃないでしょ。悪いのはミアなんだから、謝らないで」 成也は重苦しく首を横に振った。「いいや、全部折れが悪い。あの時も、今回も……」「成也さん……?」「前にも言ったが、ミアは幼馴染だ。俺達より3つ上でさ。今は3歳差なんて気にしないけど、子供の頃は、大きく感じた。ミアは、昔から口が上手いんだ。俺が父さんの骨董品を間違えて割った時、ミアが上手い具合に言いくるめて、怒られないようにしてくれたんだ。そんなことが何回かあって、頼れるお姉さんって思ってたけど、実際は狡猾なだけだったな」 力なく自虐的に笑う成也を見て、胸が痛む。(どうして私がこんな気持ちになるの?) 今は小雪を助けるために、色々動くべきだ。何をしたらいいのか分からないが、小雪のことで、頭がいっぱいになっているはずなのだ。それなのに、成也のことも気になって仕方ない。「明里と結婚した後、ミアは俺や両親に色々言ってたんだ。明里が他の男といたとか、繁華街に入っていくのを見かけたとか。最初は何言ってるんだって思ってたよ。明里が真面目で、そういう面では潔癖だって知ってたから。 そしたら今度は、外科医なんて、家族を優先できない仕事を続けるなんておかしいって言い始めてさ。正直、ちょっと不満だった」「女が外科医だと生意気だって思ってたから?」「違う! 断じて! 生意気だなんて思ったことない。むしろ、尊敬してた」 明里の問いに、成也は顔を上げ、両手を振って必死に否定した。明里は不思議な気持ちでそれを見る。ここまで感情をむき出しにした成也を向き合うのは、新婚時代以来だ。「ほら、患者がいつ急変するか分からないから、新婚旅行も日帰りな上に、都内だったろ? それに、いつも職場の携帯持ってて、着信音と似た音が聞こえたら、素早く携帯確認してたし……。こんなこと思うのは子供っぽいって分かってたけど、寂しかったんだよ」 古い棘が、再び明里の胸を刺した。 小雪がまだ幼稚園生の頃、お遊戯会の途中で患者の容態が急変し、緊急手術をするために幼稚園から抜け出したことがある。8時間にも及ぶ大手術と患者のケアで、帰宅出来たのは3日後。 謝罪も兼ねてお菓子とぬいぐるみを
Terakhir Diperbarui : 2026-01-06 Baca selengkapnya