夫・北原清(きたはら きよし)のスーツを洗おうとしたとき、ポケットから一枚の胎児のエコー写真と航空券が出てきた。二枚の紙に印字された日付は鮮明で、彼が海外出張だと言っていたあの月とぴったり重なっていた。私・小島優希(こじま ゆうき)はそのエコー写真を指で摘んだまま、指先の温度が一瞬にして奪われていくのを感じた。ふと、ここ半年、彼のスマホが常にマナーモードになっていたこと、入浴時さえも浴室に持ち込んでいたことを思い出す。ある深夜、彼のワイシャツの襟元から、嗅ぎ慣れないネロリの香りがしたことがあった。私が尋ねると、彼は笑いながら私の頭を撫でた。「優希が考えすぎだよ。接待の席だったから、匂いが移ることもあるさ」自分の敏感さを恥じ、彼に申し訳ないとさえ思った。だが今思えば、その香りは別の女の匂いだったのだ。私はすぐにその写真をアシスタントに送信した。「これと同じ目的地の航空券を手配して」すると、私は立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。心を込めて手入れされた庭が広がり、バラが今を盛りと咲き誇っている。去年の結婚記念日、清が自ら植えたものだ。「毎年咲く花を、二人で一緒に見よう」と言って。私は電話で問い詰めることはしなかった。長年、離婚弁護士として数々の案件を扱ってきた私は、感情に流されると何の得にもならないことを誰よりも知っている。証拠こそが、唯一の武器となるのだ。パソコンを開き、キーボードで「山内倫子(やまうち ともこ)」と打ち込み、検索を開始する。公開情報は少なく、大学の卒業写真が一枚あるだけだった。清楚な顔立ちで、はにかみ屋のような笑顔を浮かべている。だが、彼女のSNSの痕跡を辿っていくと、一つのプライベートブログに突き当たった。最新の更新は先週で、海辺の夕日の写真がアップされていた。そこにはこんな一文が添えられている。【ある街を好きになるのは、そこに好きな人がいるから】写真の背景には、男性の片腕が写り込んでいた。手首には時計が光っている。それは私が去年、清の誕生日に贈ったプレゼントだった。限定モデルで、彼は「もったいなくて着けられない、ここぞという時だけにする」と言っていたはずだ。胸の奥を鈍器で殴られたような、重苦しい痛みが走る。私は誰にも告げず、A市へ向かう航空便を予約した。現地に到着したのは
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