「結構です。急用がありますので、先に失礼します」静月は控えめに断った。「分かった。それでは、明日の大会でお会いしよう」正深は残念そうでありながらも礼儀正しく頭を下げ、そして去って行った。翌日、M国の国際青年デザイナー大会の決勝戦会場にて。明るい照明が輝き、観客席は埋まっている。世界中から集まった新進気鋭のデザイナーたちがここで栄冠を競い合う。会場は緊張と期待の空気に包まれていた。静月は裏の待機エリアに立っている。シンプルな黒のスーツスカートを着ている彼女は、長い髪を低めのお団子にまとめ、優雅な顎のラインを見せていた。彼女の顔には表情がなく、ただ静かに舞台で作品を展示している対戦相手を見つめていた。相手のリナは、「東洋の神秘的な要素」を取り入れたデザインを売りにしているハーフデザイナーだ。リナの作品がスクリーンに大きく映し出されると、待機エリアの事情を知っていた何人かのスタッフが、いくらか同情と心配の気持ちを含んだ視線を静月に向けた。その作品のコアとなるアイデアと構造は、静月が初戦で提出した手稿と7割りも似ている。静月の視線はスクリーンに注がれ、ほんの一瞬凝視した後、再び平静を取り戻した。彼女はもはや、理不尽なことにすぐに怒りを爆発させ、感情を怒りで表現する静月ではなかった。絶対的な実力の前では、どんな陰謀も所詮、愚かな手段でしかない。彼女は軽く息を吸い込み、雑念を払いのけた。その時、観客席の隅に、一人の疲れた姿がひっそりと座った。言朗は急いで会場に到着し、静月が登場する前にやっと席についた。しわくちゃのシャツを着ている彼は、あごに青ひげを生やし、目が血走っていた。周囲の雰囲気にまったく馴染んでいなかった。彼の目は待機エリアの入口にしっかりとロックした。心臓は、長い間待ちわびた人に会うために激しく鼓動している。そして、ついに静月の出番が来た。司会者が彼女の名前と参加作品のテーマ「涅槃」を発表した。照明が集中し、静月は落ち着いた足取りで舞台に登場した。彼女は誰も見ず、真っ直ぐに舞台中央に向かい、審査員と観客に軽くお辞儀をした。立ち上がると、彼女の視線は無意識に観客席の隅を掠め、そこにいる誰かの熱い視線と一瞬だけ交差した。言朗は息を呑み、立ち上がりそうになった。しかし、静月
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