中学時代、艶な噂を流されて辱められていた私・神谷夕(かみや ゆう)を、黒沢司(くろざわ つかさ)だけが庇ってくれた。それから、私は彼を信仰する神様のように扱い慕った。あの日、彼と友人の会話を聞くまでは。「お前あの時なんで神谷を庇ったんだ?高槻若葉(たかつき わかば)に似てたから?」司は鼻で笑った。「夕が若葉と比較されるなんて、身の程知らずもいいところだ。単にお前らがうるさかったからだ。あいつが売春してようが、俺には関係ない」信仰は一瞬で崩れ、朽ちた。だから若葉が密かに小切手を私の前に差し出した時、私は笑った。「この取引、受けますわ」若葉が海外に行く間、私は甘んじて彼女の身代わりとなり、司を繋ぎ止めた。私は承知の上で、司が私を通して彼女の面影を追っているのを、冷めた目で見ていた。だから若葉が帰国した後、司が手切れ金を投げつけてきた時、私は少しも驚かなかった。「金を持って行け、これからは姿を見せるな」私は軽く笑い、金を受け取った。「司、これで、私たち清算完了ね」ただその後、街中が大騒ぎになった。彼が狂ったように私を探していると。でも司、私の愛はもう賞味期限が切れたわ。……暗闇の中でスマホの画面が光り、二つのメッセージが次々と飛び込んできた。一つ目は若葉から。【すぐに帰国します。お金も清算しました。残りの最後の三日間で別れてください。これからは二度と司の前に現れないでくださいね】続いて、銀行からの入金通知。【お客様の〇〇口座に、他行から20,000,000円が入金されました】私は微笑み、慣れた手つきで返信欄にメッセージを打ち込んだ。【受け取りました。お二人の末永い幸せをお祈りします】だがメッセージを送った後、私の笑顔は口元で固まった。三年間の承知の上での身代わり生活が、二千万円の金で終止符を打った。これは金運を司る神様が見ても割に合う商売だ。喜ぶべきなのだ、そうだろう?私はずっとこの日を待ち望んでいた。この金で私の過去を買い取れる――貧しさゆえに踏みにじられ続けていた神谷夕を買い取れる。もうすぐ司のもとを去れる。何年も好きだった司から。この考えが浮かんだが、大きな喜びも悲しみもなかった。ただ、苦さと失望、そして虚ろな気持ちだけが胸を満たした。
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