日付も、場所も、順番も――前世で見た画面と同じだった。 帝国から届いた封書は、薄いのに重い。封蝋の黒薔薇が、指先に刺さるみたいに冷たい。 表題は「黒薔薇聖核浄化儀礼 式次第」。 わたくしの喉が、勝手に鳴った。 序、参列, 祝詞、献納、聖核奉安、誓約文朗読、閉式。 欄外に、王国特使の名で空欄が用意されている。 次の頁。添えられた挿絵のせいで、視界が揺れた。 硝子の棺に眠る黒い核。薔薇の棘みたいな曲線。見ただけで、こめかみが脈を打つ。 ……嫌だ。 あれに触れた瞬間から、戦争が始まる。 背後で扉が開く音がした。 わたくしは反射で紙を伏せる。遅かった。「レティシア」 クロード様の声は低い。怒っていないのに、逃げ道が消える声だ。 机の上から封書を拾い上げられた。紙が擦れる音が、やけに大きい。 わたくしは笑おうとして、失敗した。「顔色が悪い」「……帝国の朝は、空気が硬いだけですわ」「言い訳の精度が落ちている」 指先が、わたくしの額に触れた。冷えている。 その接触だけで、張り詰めていた何かがほどけかけるのが悔しい。「これは何だ」 クロード様が式次第を開き、視線を走らせる。 挿絵の頁で、眉が僅かに寄った。「……気分が悪いのか」「気分だけなら、可愛いのですが」「可愛いで済まないから聞いている」 逃げても、椅子は奪われる。 わたくしは息を吸って、口の中の乾きを噛みしめた。「この順番が……覚えのある筋書きと重なりますの」「筋書き」「前世の記憶ですわ。戦争に繋がる方の」 クロード様の目が細くなる。理性の光。 それでも、式次第の最後の欄外で止まった。「誓約文朗読。王国特使が読むのか」「空欄が、わたくしの
آخر تحديث : 2026-02-27 اقرأ المزيد