All Chapters of 元夫の命令?即再婚: Chapter 11 - Chapter 12

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第11話

晃のプロポーズを、私は受け入れた。黒沢家と若葉家の年長者が見守る中、晃と陽菜の婚約は正式に解消された。黒沢家が、こんなにもあっさり私を迎え入れてくれるなんて――夢にも思っていなかった。晃の父は笑いながら言った。「黒沢家はな、息子の見る目を信じてる。相手の家柄だの、財産だのは気にしない。どうせ、うちより金のある家なんてないからな」黒沢家はわざわざ国際的に名の知れた整形外科医を招き、私の脚を診せてくれた。医師は何度も「後遺症は残りません」と断言したのに、晃の母はそれでも心配そうに、「もう命懸けのレースに、自分で出たりしちゃだめよ」と私の手を握った。誰もが私を、最初から家族の一員みたいに大切にしてくれた。式の前夜、晃は私を母校へ連れて行った。晃は遠くを指さして言った。「あそこだ。君がガウン姿で、片手で自転車を漕ぎながら、もう片方の手に大きなひまわりを抱えて、振り返って笑った場所。キャンパス中が同じ服の連中で溢れてたのに、俺は一瞬で君だって分かった」過去を思い出したのか、晃は校門の向かいにある花屋を指した。「待ってろ。ひまわり、もう一本買ってくる」私はその背中を見送り、きらめくキャンパスの灯りを振り返った。行き交う後輩たちの笑い声を眺めていると、ふいに、あの頃の若さが眩しく思えた。「柚葉!柚葉!」背後から、少し聞き慣れない声がした。振り返って、すぐには分からなかった。――宗一郎だと気づくまで、少し時間がかかった。数か月ぶりに見る宗一郎は、念入りに身なりを整えているのに、全身から滲み出る疲れだけは隠しきれていなかった。私を見るなり、彼は感極まったように目を潤ませる。「柚葉……やっと会えた!連絡が取れなくてさ。でもここは、俺たちが始まった場所だろ?絶対、戻ってくるって思ってた!」そのときになって、思い出した。あの店で届いた数通のメッセージを最後に、私は宗一郎をブロックしていたのだ。宗一郎は掌を開き、宝物でも差し出すように指輪を取り出した。三年間、私が左手にはめていた結婚指輪。次の瞬間、宗一郎は突然ひざまずいた。声を震わせ、涙をこぼしながら。「ごめん。俺が悪かった。本当に、取り返しのつかないことをした。お前が一番だったのに、あんなにも俺を愛してくれてたのに、俺は最低なことをした。柚葉、やり直そう。
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第12話

私が妊娠六か月に入った頃、晃は付き添って妊婦健診に連れて行ってくれた。病院の正面玄関に差しかかったところで、私たちの車は突然、前を塞がれた。男が顔を上げた瞬間、私は思わず息を呑んだ。ぼさぼさの髪に、皺だらけのシャツ――宗一郎だった。私が窓を下ろすと、宗一郎は必死な形相で飛びつこうとしたが、屈強なボディガード二人にすぐさま押さえ込まれた。さらにもう一人が容赦なく蹴りを入れ、宗一郎は顔から地面に突っ伏した。宗一郎は這いつくばったまま、声を振り絞った。「柚葉……一度でいいから、助けてくれ。黒沢さんに言ってくれ。俺を、見逃してくれって……もう……もう限界なんだ。このままじゃ、破産する!」私は思わず、晃の顔を見た。この数か月、私は黒沢家の人たちに大切にされ、晃とも変わらず寄り添って過ごしていた。家の中は穏やかで、空気まで柔らかい。宗一郎の周りで何が起きているのか、気に留める余裕すらなかった。晃は小さく首を振った。そして宗一郎の前に立ち、見下ろすその視線は、ひどく冷たかった。そこに映っていたのは、もはや人として数える価値もないものだった。「勘違いするな。お前に構うほど、俺は自分の手を汚したくない」宗一郎は愕然とした。「自分が何をしたか、クラブがどうしてここまで落ちたのか……本当に心当たりがないのか?」晃はそれだけ言うと、ボディガードに目配せした。次の瞬間、宗一郎は再び蹴り飛ばされ、数メートル先まで転がった。「黒沢様の車を止めるとは、いい度胸だ。さっさと消えろ」黒いベントレーはそのまま走り出し、宗一郎をあっという間に視界の外へと置き去りにした。あとから知ったことだが、あのレース騒動で主催者が公式に謝罪して以降、宗一郎が私を美緒の代役として走らせ、無理にトロフィーを取らせた件は、関係者の間で噂になるだけでなく、いつの間にか広く知られるようになっていたという。彼のやり方と人間性に、多くの人が眉をひそめていた。私がクラブを去ったあと、古参の会員は次々と退会し、スポンサーも相次いで撤退した。経営は急速に傾き、クラブは破綻寸前まで追い込まれていたらしい。その後、梓がお見舞いに来てくれたときに、ぽろりと聞かされた話がある。宗一郎の母がとにかく厄介で、家政婦の仕事ぶりが気に入らないと言っては次々に解雇し、結局すべて
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