「そんなはずない。お前はまだ、俺を許してくれてないだけなんだ……」啓太は首を振り、菖蒲のきっぱりとした態度を信じようとしなかった。突然、スマホの着信音が鳴り響いた。画面を見ると、船長からの電話だった。啓太は立ち上がると、菖蒲に優しく言った。「迎えの船が着いたようだ。菖蒲、いい子だからここで待っててくれ。すぐに戻るから。そしたら、ここから永遠に離れよう」啓太は菖蒲をじっと見つめてから、踵を返して足早に倉庫を出ていった。倉庫の扉が閉まった瞬間、菖蒲は縄をほどこうと必死でもがいた。でも、啓太がきつく縛っていたから、びくともしない。その時だった。倉庫の側にある小さな扉が、音もなく静かに開けられた。そして、光を背にした人影が中に入ってきた。結衣だった。結衣は憎しみに満ちた顔で、毒を含んだ刃のような視線を、菖蒲に突き刺していた。「なんであなたがここにいるの?」菖蒲は、嫌な予感で胸がいっぱいになった。「私がどうしてここにいるのかって?」結衣は甲高い声で笑った。「菖蒲、私が手引しなければ、元夫さんと一緒に逃げるなんてこと、できたと思う?」菖蒲は眉間にしわを寄せた。「啓太と結託して、私を拉致したっていうこと?いったい何をするつもり?」菖蒲は、なんとか自分を落ち着かせようとした。「さあ、なんでしょう?」結衣は毒々しい目で言った。「あなたは私の婚約者とお父さんを奪い、本来なら私が継ぐはずだった近藤グループまで奪った!そんなあなたに、私が何をすると思う?」菖蒲は唇を引き結んだ。「今あなたがしていることが、犯罪だって分かってるの?」菖蒲は結衣を説得しようとした。「結衣さん、今すぐ私を解放してくれたら、お父さんの手前もあるし、今回のことは見逃してあげる。でも、そうじゃないなら……」結衣はヒステリックに笑った。「菖蒲、私があなたの言葉を信じると思う?」結衣の声はだだっ広い倉庫に響き渡り、不気味さを増していた。「私がどれだけあなたを嫌っているか、知ってる?毎晩、あなたをズタズタに引き裂く夢を見るのよ!」興奮のあまり、結衣は一歩ずつにじり寄った。「あなたさえ死ねば、お父さんはまた私だけを可愛がってくれる!私はまた、皆にちやほやされる近藤家のお嬢様に戻れる。近藤グループのたった一人の後継者よ!啓太さんも、克
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